2003年の5月20日、大阪府熊取町で当時小学4年生だった女の子・吉川友梨さんが何者かに連れ去られました。事件はいまだ解決しないまま、まもなく20年を迎えます。
友梨さんを知る人々は今、何を思っているのか、取材しました。
■吉川友梨さん事件発生から“20年” 今もビラ配り「見つかるまでする」
5月16日、事件が起きた大阪府熊取町の現場近くでは、警察官たちが通りかかった人たちに情報提供を呼びかけていました。
当時小学4年生だった吉川友梨さん。2003年の5月20日、帰宅途中に何者かに連れ去られました。
【記者リポート】(2003年)
「友梨ちゃんは友達と4人でこの道を帰っていました。そして自宅から400メートル離れたこの交差点で友達3人は向かって左側の道に。そして友梨ちゃんは自宅のある右側の道へと二手に分かれたのです」
友梨さんは事件当日、同級生3人と一緒に学校を出発。通学路である交差点で3人と別れ、一人になったあとの午後3時頃、自宅までおよそ400メートルの場所で別の同級生とすれ違ったのを最後に行方が分からなくなりました。
事件の発生からまもなく20年。多くの人たちが友梨さんを見つけようと動いてきました。
【NPO法人「あいうえお」三本松義春代表理事】 (2006年11月20日当時)
「親御さんにとってはね、きのうもきょうも変わらないと思っていますから、しっかりとやっていきたいなと思っています」
事件後、定期的に続けられてきた情報提供を求めるビラ配り。保育園を運営するNPO団体の理事、三本松義春さんはボランティアとして長年協力してきました。
【NPO法人「あいうえお」三本松義春代表理事(76)】
「友梨さんについて応援できることがないかなと警察に電話して連携とってもらって、ビラ配りをしようというのが発端」
(20年が経過することについては?)
「まさかここまで来るとは思ってなかった、正直いって、1年か2年ですっと解決できると思っていた」
1枚でも多くのビラを配り、1件でも多くの情報が警察に届くよう、関西以外の地へ出向いたり、時には全国を回るサーカス団にお願いをして協力を続けてきました。
【NPO法人「あいうえお」三本松代表理事】
(事件から20年で気持ちに変化は?)
「やっぱり変わらへんな。何とか無事で生きていてもらいたいなというだけなんで。見つける手伝いをしようと言ったんだから、見つかるまでやりましょうか、となったんでね。いつのまにか76歳になりましたから、これからどこまでできるか分からんけど」
■毎朝、登校する子どもたち見守り続ける 20年の歳月に“複雑な思い”も
友梨さんが連れ去られた七山地区に住む佐々木茂之さん(80)。事件後地区の区長を務め、毎日、登校する子どもたちの様子を見守ってきました。
【見守り活動を続ける佐々木茂之さん(80)】
(毎日やっている?)
「毎日毎日、日課!小学生の親に『うちの子どもが卒業するまで、ここでおっちゃん頑張ってな』って言われた」
ずっと続けてきた見守り活動。佐々木さんは20年という歳月に複雑な思いをにじませます。
【見守り活動を続ける佐々木さん】
「昔は解決早くしてほしいなと色々やったけど、風化してもうたからね、寂しいのは寂しいよ。今はもう、ここに立っているのは見守るよりも子どもとのつながりのため」
■あの日一緒に下校した同級生が語る“友梨さんへの思い”
そんな中、事件から20年がたとうとしている今も、友梨さんのことを思い続けている人たちがいます。事件があったあの日、友梨さんと一緒に下校していた同級生たちです。
–Q:当時は何かしていた?
【友梨さんの同級生たち】
「(帰り道に)グリコしていた」
「たぶんね、記憶では」
「大きくなってしまったがゆえにこの歩幅きついな」
友梨さんと最後に別れた交差点を訪れました。あの日もいつものように同級生3人は友梨さんを見送りました。
【友梨さんの同級生たち】
(最後に友梨さんを見た場所はどの辺り?)
「オレンジの看板とか、あの辺りのような気がする」
「結構見えなくなるくらいまでよく見送っていたよな」
「カーブで見えなくなるまで」
「見えなくなって、よし帰ろう!みたいな感じ」
【友梨さんの同級生 みさとさん(29)】
「その日って遊ぶ約束していた?」
【友梨さんの同級生2人】
「していた、していた」
「たぶん遊べるって言っていて、友梨は無理って…?」
「(友梨さんは)『分からない』みたいな感じ」
「お母さん?とか家の人に聞かなあかんみたいな…。『行けたら行く』みたいな感じ」
仲良しだった4人、友梨さんと好きな子の話をしたことなどを語り合いました。懐かしい子どものころの記憶がよみがえります。
【友梨さんの同級生 みさとさん】
「寂しいですね、どんな感じになっていたんだろうってすごく思うし、何か想像できないっていうか、もう普通にこう(大人に)なっているはずやのに、いないっていうのは受け入れられない」
小学生3年生の時に4人で撮った写真。あの日以来、当たり前だった日常は戻っていません。
【友梨さんの同級生 みさとさん】
「思い出されること自体がめちゃくちゃ少なくなってきているので。世間的にもだんだん忘れられていっていることにやっぱり危機感を持ってはいて、忘れないでほしいなって。できることはやります」
【友梨さんの同級生】
「『もう見つかれへんよ』とひどいこと言う人もいるし、聞いてきたけれど、そんなこと全くないので、早く帰ってきてほしいし、会いたいなって」
また友梨さんに会いたい…そう強く思い続ける友人たち。薄れていく記憶にあらがいながら、今も友梨さんの帰りを待ち続けています。
■大阪府警「どんなささいなことでも」事件解決に向け情報提供を呼びかけ
大阪府警はこれまで捜査員のべ10万6000人を投入して捜査に当たってきました。そしてこの20年間で、警察に寄せられた情報は5312件です。現場付近で目撃された不審な車「白のトヨタ・クラウン」など有力な情報なども寄せられましたが、いまだ解決には至っていません。
5月2日には大阪府警のトップ・向山喜浩本部長が現場を訪れ、事件解決に向け、決意を語りました。
【大阪府警 向山喜浩本部長】
「『この20年間、吉川友梨さんは一体どうしているのだろう』、また『20年間犯人は何を考え、何をしているだろうか』こういったことに思いを巡らせる中で、何か心当たりのある点、何かお気づきの点、またおや?と思った点、あれ?と思った点、どんなささいなことでも結構でございます。また一見、事件とは関わりのないと思われることでも構いません。そのようなことがございましたら、泉佐野警察署の捜査本部、大阪府警察本部にご連絡をお願いします」
■「友梨がんばれ」メッセージにかけた思い 早く元気で帰って来て
友梨さんが通っていた小学校。当時、同級生たちが数万羽の折り鶴で描いたメッセージが今も大切に保管されています。
–Q:いま、願うことは?
【友梨さんの同級生たち】
「元気で早く会えること」
「どっかで生きていて欲しい」
「しゃべりたいな」
「うん、しゃべりたい」
【友梨さんの同級生 みさとさん】
「どうやったらもう一回一緒に生きられるかを相談させてもらいたい」
吉川友梨さんは来年で30歳になります。どんなことでも構いません。あなたが寄せた情報が事件を大きく進展させるかもしれません。
事件の発生からまもなく20年。今も多くの人たちが友梨さんの帰りを待っています。
(関西テレビ「newsランナー」2023年5月17日放送)