おもちゃの最新トレンドは「ボーダーレス」 性別・人種・年齢…さまざまなハードルを超えた現代のおもちゃたち 義足のバービー人形から、授業で使える「桃鉄」まで 2022年12月15日
クリスマスを前に、おもちゃ商戦が大盛り上がりです。
おもちゃの世界では今、「ボーダーレス」という考え方が広がっているんだそう。どういうことなのか、調査しました。
■多様性を意識した「ダイバーシティトイ」
吉原功兼アナウンサーが向かったのは、クリスマスムード漂うおもちゃ店「トイザらス 伊丹店」。この店舗、これまでとは違う特徴があるということで、店内をぐるっと回ってみました。
【吉原功兼アナウンサー】
「…もしかして、男の子と女の子に分けられてないよね?」
2021年から売り場の見直しを進めているトイザらス。伊丹店は、性別ではなくおもちゃの“遊び方”に応じたレイアウトに変更しています。
日本玩具協会は、毎年発表している「日本おもちゃ大賞」で去年から男女の部門分けを廃止。お世話人形の「メルちゃん」にも“男の子”が仲間入りするなど、おもちゃの世界では今、「ジェンダーレス」が常識になりつつあるのです。
おもちゃの“ボーダーレス化”は、他にも。
白い肌に長い金髪がトレードマークだったバービー人形は、肌や髪、体型が異なるさまざまなドールをラインナップ。
義足を装着したり車いすに乗っていたりと、人と人とに境界をつくらない、多様性を意識した「ダイバーシティトイ」が広がりを見せています。
【バービー ブランド担当 小林美穂さん】
「多様性のあるドールに接してもらうことによって、お子様たちの多様性に対する柔軟性を、私たちもサポートできるようになればなと思っています」
■トレンドは「子供も大人もボーダーレス」
最新おもちゃのトレンドを知るべく、2022年の「日本おもちゃ大賞」受賞商品をチェックしました。
「ヒット・セールス賞」を受賞したのは、「すみっコぐらしパソコン プレミアムプラス(税込20900円/セガトイズ)」。
プログラミングの学習など、遊びながら学べるメニュー183種類をラインナップ。インカメラを搭載しているため、リモートワーク気分を体験することもできます。
「イノベイティブ優秀賞」を受賞したのは、「トリミング ペットサロン(税込5940円/タカラトミー)」。
一見すると普通の犬のぬいぐるみですが、毛並みをブラシでといて実際にハサミでカットする、トリマーの体験ができるおもちゃ。失敗すると元には戻せないところがリアルです。
トレンドのおもちゃの共通点について、「月刊トイジャーナル」の藤井大祐編集長は、「子供たちだけのものではなく大人、おじいちゃん・おばあちゃんと、全世代型になりつつあるというのが大きな特徴」と分析します。
【吉原功兼アナウンサー】
「大人も満足するような、ハイクオリティーなものが求められているんでしょうか?」
【藤井大祐編集長】
「まさにそうで、もう子供だましじゃきかないでしょう。特に今の子供たちは本物を知っていますので」
子供も大人も「ボーダレス」に楽しめるクオリティーがヒットの条件だということで、吉原アナも、小学2年生の娘と一緒に最新のおもちゃを体験してみました。
【吉原功兼アナウンサー】
「あ、かわいい~!こんなちっちゃいミシン…これで作れるの?ほんとに?」
用意したのは、「リアルミシン ファッションスタジオ(税込み8778円/タカラトミー)」。実際の針と糸を使用し市販の布を縫うことができる、おもちゃのミシンです。
本物顔負けのクオリティーですが、けがをしにくいよう構造が工夫されていて、安心の使い心地。ときには失敗もしつつ…1時間後、ティッシュケースが完成しました。
「会話しながらの作業で親子の絆が深まった気がします」と満足げに語る吉原アナ。ボーダーレスなおもちゃは、子供と大人が一緒に楽しむ時間も提供してくれるようです。
■桃太郎電鉄が学校教育に?
さらに、おもちゃと勉強のボーダーレス化の動きも。
全国を電車で回りながら、ゴールを目指す道中でさまざまな物件を購入して資産を増やすすごろくゲーム「桃太郎電鉄」。最新のSwitch版だけでも、350万本以上販売されている人気作です。
実在する地名や駅名、地域ごとの特産品などが多く登場するため「地理の勉強になる」という声も多い桃鉄が、“教育版”としてパワーアップし、学校で楽しめるようになるというのです。
吉原アナは、教育版「桃太郎電鉄」を監修した現役の小学校教諭・正頭英和先生の指導の下、小学4年生の児童たちと一緒に体験することに。
教育版の桃鉄は、ゲーム機ではなくパソコンやタブレットを使ってプレイします。
【正頭英和先生】
「今日は地域を限定してやります。今回は近畿を選んでみましょう」
通常版の桃鉄は全国が舞台ですが、教育版ではそれぞれの地理を詳しく学べるよう、地域を限定して遊ぶことができます。
【吉原功兼アナウンサー】
「大阪の『駅周辺トピック』が出てきました」
【正頭英和先生】
「そうなんです。みんなで読んでみようか、せーの」
【吉原功兼アナウンサーと児童たち】
「『大阪市は人口約275万人の大都市で府庁所在地』」
それぞれの説明は通常版の桃鉄よりもかなり詳しく、ゲームの中で楽しみながら地理を学ぶことができます。さらに…
【正頭英和先生】
「500万で200パーセントってことは、1年後にいくらもらえる?」
【児童】
「1000万!」
【正頭英和先生】
「そう、1000万もらえます」
購入した資産の「収益率」を計算する必要があるので、「割合」の感覚も自然と身につくんです。
通常版の桃鉄でおなじみの貧乏神・通称「ボンビー」は、トラブルを避けるため登場しないそう。授業でも安心してプレイできます。
無事にゴールを果たし、ゲームは終了。ここで授業も終わりかと思いきや…
【正頭英和先生】
「じゃあ『住吉東』って駅をつくるとしたら、どんなお店だったらみんな喜んでくれそうだと思う?何が有名?ちょっと4人でしゃべってみて」
【吉原功兼アナウンサー】
「住吉で有名なところっていったら?」
【児童】
「太鼓橋」
【吉原功兼アナウンサー】
「太鼓橋、住吉大社の?」
【正頭英和先生】
「自分たちの地元の駅が、もしも桃鉄の駅になるならって目線で見てみると、また違う景色で自分たちの街が見えてくると思うので。ぜひそうやって楽しんでみてください」
自分たちが住む地域について考える「総合学習」にもつなげることができるんです。
【吉原功兼アナウンサー】
「どうだった?」
【児童たち】
「楽しかった!」
「駅の名前も覚えられるし、お金の大事さも分かるから良かったと思う。ゲームしながらやるから覚えやすいと思った」
「情報が次々に流れ込んでくる今の子供の傾向として『モチベーションの足が早い』。興味を維持するために、ゲームも使い方次第では有効な方法」と話す正頭先生。
教育版の桃鉄は、2023年から学校に無償提供されることが決まっています。
(関西テレビ「報道ランナー」2022年12月16日放送)