神戸市の公園にある巨大な石。
不思議な形に違和感を持った専門家が調べたところ、思わぬ価値が明らかになりました。
明石海峡大橋をのぞむ神戸市垂水区の県立・舞子公園。
その入り口にある、公園の名前が刻まれた園銘石(えんめいせき)と呼ばれる巨大な石には、ある違和感が…。
【近くに住む人】
「なんで穴があるのかな?っていうのはいつも思ってたんですけど」
「誰かが遊びでやったとか?」
「昔そういうファッション的なものがあったんかな?って思って」
この園銘石は、兵庫県が公園改修に合わせて2001年に設置したものです。
最近、専門家の手によって、思わぬ正体が明らかになりました。
【奈良文化財研究所 高田祐一 主任研究員】
「ネットサーフィンをしていて、(舞子公園の園銘石を)たまたま見たところ、矢穴っていう(石を)割るための跡があるんですけど、それがいっぱい並んでいて。実際に現地に行ったら、『これは大阪城の関連石材だ』っていうのが分かったという次第ですね」
大阪城などにある歴史的価値のある石を研究する高田さんによると、不思議な穴の正体は石を切り出しやすくするため楔(くさび)を打ち込んだときにできる「矢穴」と呼ばれるもので、園銘石は約400年前、江戸時代に行われた大阪城再建のための石垣の材料と分かりました。
さらに詳細な情報を得ようと、撮った写真に3Dデータ解析を行うと…
【奈良文化財研究所 高田祐一 主任研究員】
「松江藩堀尾家の刻印が一つあって、土佐藩山内家の刻印が二つある」
浮かび上がった、複数の大名の家紋や文字。
高田さんはこの意味について、大阪城の再建のために江戸幕府に動員されたたくさんの大名が神戸に来て石を切り出す作業の際、それぞれの持ち場の境界線を石に刻んでいたか、自分たちの持ち場を別の大名に引き渡すときに家紋を刻んだ可能性を指摘します。
大阪城に関連する石材で、一つの石に複数の大名の家紋や人名が刻まれたものが発見されたのは、これが初めてのこと。
当時の大名の間で交わされた“契約行為”を示す貴重な石。
まさかこのような価値のある石が、公園の入り口に堂々と置かれていたとは…。
【奈良文化財研究所 高田祐一 主任研究員】
「本当に驚きです。(見つけたときは)一人で夜に作業していたんですけど、しばらく絶叫していました。初体験でしたので」
今回の発見を受けて、地元の人たちは…
【近くに住む人】
「貴重な石なんだなと思って見ます」
「ありゃー!もっと拝んで通りますわ」
なぜこのような石が舞子公園に持ち込まれたのかは分からないということですが、歴史を語る新たな存在として、注目を集めそうです。
(関西テレビ「報道ランナー」2022年7月26日放送)