噛む、吠える、暴れる…様々な「問題行動」で飼育が困難な野犬や捨て犬を、全国から受け入れているドッグトレーナーが大阪にいます。
「ポチパパ」こと北村紋義さん。
命と向き合う活動を追いました。
■モットーは「どんな問題犬も幸せに」
大阪府富田林市で「保護犬達の楽園」を運営している、「ポチパパ」こと北村紋義さん。
北村さんは、問題犬」を専門にトレーニングしています。
ここに来る犬は、保健所から来た野犬や、吠える、人を噛むなどの「問題行動」が原因で、飼い主から捨てられた犬です。
この施設で問題行動が改善され、一般家庭に引き取られた犬は100頭を超えます。
【北村紋義さん】
「この子は飼育放棄なんですよ。飼い主さんの腕の肉ちぎったのが1回。ほっぺたの肉ちぎったのが1回。それと指をちぎられた。飼うのが限界。それはそうやと思います」
ポチパパのモットーは、「どんな問題犬も幸せにする」。
そのためのトレーニング方法を紹介するYouTubeチャンネルは登録者数23万人。
犬の問題行動に悩む飼い主などを中心に人気を集めています。
■一番時間をかけるのは「信頼関係」づくり
一体、どんなトレーニング方なのか。
関西テレビのスタッフが飼う、柴犬を連れていきました。
この柴犬も、散歩終わりに足を拭くと本気で噛んでくるという問題行動が…
【北村紋義さん】
「今から急にやっちゃうと、お前の言うことなんか聞けるかと、一生言うことを聞いてくれないので、ちょっとコミュニケーションを取れるように、信頼関係を作っていきますね。これに一番時間かけないといけない」
ポチパパは決して、力づくや、エサなどで手なずけるのではなく、犬の口や、耳の動きを観察し、犬と対話をしながら進めていきます。
例えば、柴犬が「うなる」しぐさをすると…
【北村紋義さん】
「これね。『待つ』です」
「うなると止まってくれて、意思は通じてるんやけど、やめろという主張を通してもらえない。あきらめていって受け入れさせていく。リラックスさせていく」
ただ、犬に合わせるだけでなく、主従関係を理解させることが重要だと言います。
すると、スタッフの自宅では、あんなに嫌がっていた足ふきも…ポチパパは、見事、成功させました。
■目指すのは「殺処分ゼロ」
ポチパパが犬の様々な問題行動に向き合い、目指すのは「殺処分ゼロ」です。
去年、全国の保健所が保護した野犬や、捨てられた犬と猫は約8万6000頭。
このうち、約3万3000頭近くが殺処分されています。
ペットを捨てる理由のうち、NPO法人「人と動物の共生センター」の調査では「問題行動」が約2割と2番目に多く、保護された後も、譲渡先が見つからず殺処分されるケースが多くなっています。
■動物愛護団体に自治体も…ポチパパを頼る人たちは全国に
「殺処分ゼロ」を実現するため、ポチパパを頼りにしている人たちは全国各地にいます。
この日は、ポチパパと8年の付き合いがある三重県の動物愛護団体から1頭の犬がやってきました。
野犬として保健所に保護されたものの、臆病で人に懐かないため、譲渡先が見つかっていませんでした。
【四日市動物愛護団体「つむぎ」代表 服部千賀子さん】
「まず首輪付ける所から出来ない」
――Q:一度も出来てないってことですか?
「出来てないです。多分今も出来ない」
【北村紋義さん】
「どうしようかな。これで首いける?いけるな」
一度も犬用のケースから出られなったはずが、ポチパパにかかると、あっという間に外に出すことができました。
【四日市動物愛護団体「つむぎ」代表 服部千賀子さん】
――Q:頭撫でるのが、初めて?
「そうです。ポチパパマジック」
問題行動の改善に力を入れ、ポチパパ協力も得ながら「殺処分ゼロ」を実現しているのが、岡山市です。
【岡山市保健所衛生課 丸山稔さん】
「ここ(犬舎)にいる子が、すごく可愛い子犬なんですけども、市内で保護されたワンちゃんになります。すごく人に慣れてて、可愛いです」
ーーQ;ペットとして飼われていた?
「そうですね。首輪がついていました、保護された時」
かつては岡山市でも、年間数百頭もの犬が殺処分されていました。
しかし、近接する動物園が、園内の一角を提供し、ボランティアたちとトレーニングを行うことに。
ここでも手に負えない犬たちはポチパパの元でトレーニングを受け、今では全ての犬が一般家庭に譲渡されるようになりました。
【岡山市保健所衛生課 丸山稔さん】
「今の殺処分ゼロが実現出来ているのは、北村さんを初め、ボランティアの方々、多くの方々のおかげで実現出来ていると、いつも思っています」
「多くの方々が、北村さんに学んで、技術とかを習得してもらえたら、もっと野犬というのが殺処分されないで済むようになるんじゃないかなと思っています」
■「殺処分ゼロ」への思い…多くの人に届け
三重県で行われた、保護犬の譲渡会。
問題行動があった犬や、年老いた犬、病気の犬など、保健所の一般譲渡の対象外となった犬が集められています。
どんな犬でも平等に幸せになれる。
「殺処分ゼロ」への思いは、多くの人に届いています。
【譲渡会を訪れた人】
――Q:ペットショップで飼う方が良かったりしませんでしたか
「ペットショップで見る子は、皆可愛いんですけど、こういう子達の方が懐いてくれた時って嬉しいじゃないですか」
――Q守ってあげたいという気持ちですか
「嬉しいことではないじゃないですか、殺処分って。なので、こういう場所で引き取らして頂けたらいいなって思いました」
譲渡会には、ポチパパにトレーニングを受けた柴犬「ねね」の姿もありました。
後日、「ねね」も無事引き取られ、幸せに暮らしています。
【北村紋義さん】
「確かに動物やと思わなあかんのですけど、動物を通り越した『もの』になってるんですよ。僕たちと一緒で血は流れてるんだ、心臓もあるんだよと。『もの』ではなく、生きてる動物なんだよということを認識してほしいなと思いますね」
「扱いにくい犬を助けている団体があるよというのが、世に広がっていって、同じようなことをやってみようかって思ってくださる方が、1人でも出てきてくださるのが、一番の願いですね」