兵庫県高砂市議会の島津明香(しまづはるか)議員(33)。
【島津議員】
「朝と夜はバタバタです。まだ私自身が慣れてないっていうのが一番あるんですけど」
島津議員の朝は生後2か月の長女の世話からはじまります。
この日は、3月議会の初日。
3か月間の産休を終え、子育てと議員活動の両立が、本格的に始まる日です。
議会に向かうまえに、近所に住む母親に子どもを預けます。
【島津議員】
「これから本会議ってなってくるとスケジュールも分からなくなってくるので、どうなるのかなって感じです。今からだね!」
昼休みは授乳のため一旦実家に戻ることにしています。
■議会60年の歴史で女性議員は“たった5人” 「議員活動と家庭の両立の難しさ」
島津議員は、東京で会社員として働いていましたが、「大好きなふるさとを守ることは人任せにはできない」と出馬を決意。
26歳で高砂市議会に史上最年少で初当選しました。
その後、結婚し去年12月に長女を出産しました。
現在、高砂市議会の女性議員は、島津議員を含めて3人。
60年の歴史の中でも、合わせてたった5人しか女性はいません。
【高砂市議会現職女性議員・坂本まり議員】
「なかなか選挙に女性が出るとなると、男性が出て奥さんが助けるのは内助の功ですばらしいように言われるけど、主人が手伝うことに関して、やはりまだ『主人にあんなことさせて』という目がまだまだあります」
市議会議員に占める女性の割合は全国的にみても少なく、わずか15.2%です。
女性の政界進出が進まない理由について、女性1万人に聞いたアンケートでは
1位が「議員活動と家庭の両立の難しさ」(34.5%)
2位は「政治は男のもの」(34.0%)
という結果になっています。
(女性一万人を対象にした日本財団の意識調査2020年11月全国の18~69歳女性、インターネット調査)
「女性が政治の担い手となることは難しい」
多くの女性がそう思っていることがわかります。
【任期中に出産した議員でつくる出産議員ネットワークの代表・永野ひろ子議員(東京都豊島区)】
「そもそも人口の構成がほぼ半々になっていて、議会ってどういうところですかって。地域の意思決定をするルールを作ったり、色んな声を反映する場所の中で、あまりにも(男女の割合に)偏りがある今の状況の方がいびつで」
「豊島区の公共施設約190あったんですけど、授乳室が一か所もなかったんです。提案したら『気づきませんでした』って言って、本庁舎にまず作ろうとなった。実感をもった政策提言は圧倒的に当事者がいるかいないかで違ってくる」
高砂市でも島津議員がきっかけで議会の規則が変わりました。
高砂市議会には、戸籍上の名前で活動するという規則がありましたが、議員にとって“名前は看板”。
島津議員は旧姓で活動を続けたいと申し出ました。
【島津議員】
「旧姓で活動したいっていうのは、遠慮なく言っちゃった。これから出てくるであろう若い世代の方に、少なからず前進させておきたいという思いがあった」
すると男性議員も賛同し、すぐに旧姓での活動が認められることになりました。
【高砂市議会で30年以上議員活動・今竹大祐議員】
「きちっと手続きに則って、旧姓で活動するのがまともな方法やということで。それまでは該当者がいなかったからぼやっと思ってたけど、該当者が現れるということで取り組んだ」
さらに、議員の育児休暇についての規定がなく、議員活動を育児で休むことは「事故扱い」となっていましたが、島津議員の妊娠をきっかけに欠席理由として認められるようになりました。
【高砂市議会議長・藤森誠議員】
「ゆくゆくは結婚されるでしょう、ゆくゆくは出産されるでしょう、という若い女性議員が入ってきて、『その対応は考えないといけないね』となった。彼女の影響力は非常に大きかった」
島津議員の存在は議会が変わる“きっかけ”をもたらしています。
【島津議員】
「女性議員だからとかいうわけではなく、男性議員も人によるけれど結婚を経験している方も多いですし、配偶者の出産とか、性だからその課題に直面しないというわけではない」
「そういうところから、いかに共感いただいて自分の考え方を伝えて、向こうの考え方と合わせて作っていくかというところ。変に“女性の課題”となってしまう方が、なかなか実現しにくくなっちゃうのかなと思ったり」
■ママ議員“育休”取らない選択 「仕事は仕事でやりたい」
議会は午前9時から午後5時ごろまで。
出産前は、議会のあとに勉強会や地域の活動に参加していましたが、今はすぐに実家に向かい、赤ちゃんのお迎えです。
【島津議員】
「仕事が始まる前までは離れられないと思っていたけど、ただ仕事は仕事でやりたいという思いがあったので」
議会規則は改正されましたが、島津議員は育児休暇を取らない選択をしました。
【島津議員】
「出産も育児も議員の任期の間にはしないでほしいという声もあれば、こういう年代の議員がせっかく誕生したんだったら、どんどん結婚とか妊娠、出産もしてそういう中で議員活動してほしいっていう、両極端のお声をいただいていました」
「報酬減らないのに休むんかって声も実際あったので、自分の中でバランスを考えたときに、産休は取るとしても育休は取らない方がいいかなと考えました」
実家が近く、両親も健在。
恵まれた環境の中で仕事ができています。
様々な声があることは理解していますが、本当にどうしようもなくなった時に、育児休暇を取得するつもりだということです。
【島津議員】
「私たち女性議員ひとりひとりがモデルケースになって、これぐらいの子がいてもできる方法があるというのをどんどん確立していったらよいと思う」
政治の世界に起きた小さな変化。
この積み重ねが、民意が反映されたよりよい社会につながっています。
(カンテレ「報道ランナー」3/23放送)