国際ジャーナリストのモーリー・ロバートソンが “リアルなニッポンの今”を徹底取材する「モーリーJAPAN」。
外国人の視点で日本の“魅力”をリポートするこの企画、
今回モーリーが訪れたのは…
ん?背景には「海」、クルーザーに乗って登場か…と思いきや
【モーリー・ロバートソン】
『雨の大阪湾、本日は洋上の甲板からと思いきや…実はATCの一部なんですね』
【モーリー】
「本日は大阪万博で注目される大阪ベイエリアにやってきました、徹底取材いたします!』
長らく”負の遺産”と呼ばれた大阪の湾岸地域・ベイエリアですが、駅前には巨大マンションの建設が進み、地価は上昇。万博会場予定地、夢洲も今、急ピッチで工事が進んでいます。
時を経て本格的に動き出した大阪ベイエリアを国際ジャーナリスト、モーリー・ロバートソンが徹底調査!
【モーリー・ロバートソン】
『雨脚がとても強い中、大阪ベイエリアの一角にやってきましたけれども、あそこにちょっとおしゃれな意識が高い船があるな。ここはアムステルダムか!?』
まずは…雨の大阪ベイエリアを満喫すべく、今、話題の遊覧船に乗り込みます。
この船、中がスゴイんです。
【モーリー】
『すごい!どうなってるんですか、ここは!』
モーリーさんも大興奮!
こちらは日本初、なんと寿司カウンター付きの小型船。
高級感のある空間でベイエリアの景色を楽しみながら、知る人ぞ知る、北新地にあった名店『さえ㐂』のお寿司が味わえるんです。
【モーリー】
『なぜ船になったんですか?洋上でやろうと?』
【楼船さえ㐂の寿司職人・濱力貴人さん】
『万博も決まりましたし、食の力でどうにか盛り上げていきたいなという思いから、こういう船で水辺を盛り上げようっていう』
【モーリー】
『私はすでに盛り上がりました。これはいい』
【楼船さえ㐂の寿司職人・濱力貴人さん】
『お寿司とご一緒にお酒を、新潟県から洗心』
【モーリー】
『うわー!最高だ!うれしい、洗心ね。大吟醸だよ、すーって、はいってくる』
【濱力さん】
『本日一貫目が大間から中トロですね』
【モーリー】
『中とろいただきます!わおすごい!ふふふふ(笑)すごい!これはお客さん 恋しちゃいますね!』
【濱力さん】
『なかなかコースの最初にマグロをバンって出すお店少ないんですけど、マグロの旨味をダイレクトに感じていただきたいという思いから最初にお出ししています』
ここからは名店の芸術的お寿司の数々とモーリーさんの全然伝わらない”独特の食リポ”をお楽しみください。
【モーリー】
『あーーー!これねお魚に対するリテラシーが上がりますね。こういうふうに味わうんだっていうなんか教わっている感じ。本物のお寿司の学校みたいな』
【モーリー】
『クエ。すごいは。ハハハハこれはすごい!今の一口で拠点を(東京から)移そうかなと思った!大阪でウケるってわかったら拠点移せるよ、クエのために。』
【モーリー】
『ふふふふ(笑)うわーーすごい!言っていることの意見変えてくれって言われたら、これ食べさせられたら私意見変えてしまうかもしれないですね』
大阪市内の西の端、万博会場という夢を託された人工島、夢洲へ!
長い間、開発が進まず”負の遺産”と呼ばれていましたが、今は急ピッチで地盤工事が進められています。
【モーリー】
『ぺんぺん草いっぱいある夢洲をこう歩いているんですけど、本当になんだこりゃ!自然の驚異っていうか自然の力です』
夢洲を案内していただくのは大阪府・市特別顧問として誘致活動に携わった万博のキーパーソン・橋爪紳也さん。
【大阪府立大学教授・橋爪紳也さん】
『ちょうどあのあたりにですね、駅ができましてゲートができます。こっちの方にですね.今は何もないですがここにパビリオン群が並ぶことになります』
【モーリー】
『サーカスとかシルクドゥソレイユのテントをあげるくらいなら想像できるんですけど、あのハコモノというか建物作るっていうことになると想像できないですね』
モーリーさんが今いる場所はちょうどこのあたり。
夢洲の中央に新駅が建設され、その南側にパビリオンが建てられる予定です。
5年後はこんな風になるそうですよ。
ここからは夢洲を舞台にどんな世界が広がるのか?
緊急対談です!
【モーリー】
『今回の万博はどういうビジョンに基づいているものなんでしょうか?』
【大阪府立大学教授・橋爪紳也さん】
『テーマはいのち輝く未来社会のデザインとうたっています』
『IOTとかAI・ロボットとか新しい技術を世界の課題解決に使おうと。もうひとつがSDGs(持続可能な開発目標)への貢献。国連が掲げている持続可能な社会を達成するために博覧会も貢献しようと』
【モーリー】
『持続可能な発展ということはですね、あのひたすら都市が大規模に大規模に拡張していくというのをそろそろ一回引き返した方がよくないかとか、足るを知るとかそういう価値観にも移行する部分があるんです。そうすると膨張をやめるということと新たに作るということはどこかで矛盾しませんか?』
【大阪府立大学教授・橋爪紳也さん】
『同じ形での拡大ではなくて新しいアイデアをもったものをコンパクトにここに作るという博覧会場というのは未来的な都市のモデルだと私は思うんですね』
【大阪府立大学教授・橋爪紳也さん】
『大阪はデルタ(三角州)にできた町なんで、埋め立てて町をつくってきた歴史があります。次の時代の新しいフロンティアは大阪の場合は海辺にできます。まさに次世代の大阪を考える大事な場所がこの夢洲という次のフロンティア』
【モーリー】
『夢を見せてくれる場所イベントではありますよね。それによって大阪の街は(今後)どう影響をうけるんでしょうか』
【大阪府立大学教授・橋爪紳也さん】
『私は大阪がもう一度国際的な街として世界に存在感を示す機会になればと思うんですね』
『(70年万博は)世界の様々な文化がある各国の展示をみて驚いた、やっぱり博覧会というのは世界に目を開く機会であり,未来に対してあこがれを持つ機会だと思うんですね。一番それを強く受けとるのは子供たちであり若い世代であると思います。博覧会の最大のレガシーは次世代を担う大阪の若者たちだと考えて準備をしています』
若者のための次世代の万博。具体的な建設計画はことしの秋ごろ決定するということです。
【大阪府立大学教授・橋爪紳也さん】
『モーリーさん、ここ広いでしょちょっと高いところから全体を見渡せる場所があります、あそこに灯台があります』
【モーリー】
『あれ灯台なのね、タワーがある』
【大阪府立大学教授・橋爪紳也さん】
『今からあそこにいって上まで登りましょう!』
夢洲にある巨大建造物。実はこれ「大阪灯台」という名前の灯台なんです。
その高さは50m!海上保安庁が管轄する灯台の中では日本一の高さを誇ります。
今回、特別な許可を得て、普段は入ることのできない灯台内部に潜入!
【モーリー】
『入ったことのない禁断な場所に入ってる感じがする。なんか機密に関わっている気がする。あーーーすごいわ!』
エレベーターはなく階段のみ。
【モーリー】
『うおー!!高い場所に上がってきてる。考えるとこわいから考えないようにしてるよ バンジー!すみません』
モーリーさん、高い場所が大の苦手。一段ずつ慎重に登っていきます。
この日は海からの強風が吹き荒れ、モーリーさんとって最悪のコンディションです。
【モーリー】
『風が強いよー』
――Q:気を付けてください!
『はい!潮風!フォッ!』
15分かけて、ようやく地上50mの最上部へ。
――Q:モーリーさんどうですか?
【モーリー】
『いやーこわいです!十分こわい!』
この灯台、別名ハーバーレーダーとも呼ばれ、コンテナ船など、年間約2万隻が航行する大阪湾の安全を守る上で欠かせないものなんです。
別の場所にある管制室では船が衝突しないよう、24時間体制でチェック。関西経済を支える物流にとっても大切な役割を果たしているんです。
【大阪府立大学教授・橋爪紳也さん】
『モーリーさん大阪湾の全体と万博予定会場みなあかんのに、それどころじゃない。わははは』
続いては…夢洲のすぐお隣、咲洲にある南港野鳥園へ。ここに意外なベイエリアの姿が!
案内してくれるのは、日本野鳥の会・大阪支部の久下直哉さん。バードガイドとして関西を中心に野鳥を観察しています。
さっそく双眼鏡を借りてバードウォッチング体験。再開発が進むベイエリアにどんな野鳥がいるんでしょうか。
【モーリー】
『あー本当だ。2羽。すごいね、近くにみえますね3羽…。こりゃすごいわ、この双眼鏡、悪いことに使おうと思ったら いろんなことできますね』
モーリーさん、野鳥だけをみてください!
実は、南港一帯は古くから多種多様な野鳥が生息する大阪でも希少な水辺のエリア。この施設では人工の干潟と森を作り、野鳥の環境を保護しているんです。
【日本野鳥の会・大阪支部の久下直哉さん】
『左へ30mほどふっていただきますと…ブイの上に鳥いますね、とまっている』
【モーリー】
『あれ鳥か。うわーこれは…』
【日本野鳥の会・大阪支部の久下直哉さん】
『これはですね、あのミサゴというタカの仲間です』
南港野鳥園のアイドル的存在、ミサゴ。タカの仲間で特長はなんといっても獲物を狙うときのこのホバリング。
【日本野鳥の会・大阪支部の久下直哉さん】
『ミサゴの英名はオスプレイです』
【モーリー】
『オスプレイだ!あれみてオスプレイみたいだと思ったんですよ。戦闘機がホバリングしている。あれがオスプレイなのね。きょうはすごいいい勉強している』
さらにオーストラリアやシベリアからの渡り鳥の中継ポイントになっていて、この時期は越冬してきたカモ類が多くいます。
【日本野鳥の会・大阪支部の久下直哉さん】
『水辺だけが残るんではなくてひとつの水があり草があり木があり、すべてそろって一つの生態系になって鳥だけでなく生物が過ごしていると思います』
【モーリー】
『教えていただくとね、こういう身近なところにエコロジーの本質ってあると思うんですよ。万博のひとつのテーマにね、こういうアップデートされた本当に身近な生態系、人間がその中にいるっていう実感のある成熟した社会が何を世界に提案できるっていう時に、こういうちょっとした静かな中で向き合うっていう、いたずらに興奮や刺激だけをもとめないっていうのかな、普通の中に感動が見つけられるというのは、もしかしたら本当に新しいテーマかもしれないですね』
遥か昔から、水辺とともに発展してきた町、大阪。
2025年に向け、大きく動き出すベイエリア。子どもたちに一体どんなレガシーを遺すのかー。