ことし10年ぶりに新しくなった、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンのクリスマスイベント。
高さ30メートルを超えるツリーには、昨年よりおよそ1万1000個多い、59万1840個の電飾があしらわれ、
9年連続でギネス世界記録に認定。華やかで幻想的な世界が広がります。
そんなUSJでこの時期、人気を集めるのがパーク内の20のレストランで展開される、
クリスマス限定のスペシャルグルメです。
パーク内で出す料理の指揮をしているのが総料理長の石束拓夫(いしづか・たくお)さん。
USJが開業する年の3年前にホテルの西洋料理長から転身。USJグルメのすべての味を影で支えてきた人物です。
【石束総料理長】
「ゲストは一番の目的は、やはりアトラクションやアトモスフェア(雰囲気)を楽しみに来られてると思う。
その中で、USJならではの体験価値を飲食でも持続できるよう、ゲストの体験を高揚をできるように開発しています」
食べ歩きグルメの定番となった「ミニオンまん」も石束総料理長が考案したもの。
毎年、イベントごとにメニュー開発を行っていて、その数は1年間で、およそ250にものぼると言います。
そんな石束総料理長が考えた今年のクリスマスグルメのテーマは?
【石束総料理長】
「『クリスタルクリスマス』という大きなクリスマスツリーが一番の売りになっておりますので、
それに関連つけるような商品のラインナップになっております」
USJの今年のクリスマステーマが「クリスタル」。見て食べて、輝きを感じる料理を作り上げます。
10月下旬、この日は、クリスマスケーキの試作品をチェック。
メニューの基本的なアイデアは石束総料理長が出し、担当者と意見を交えながら完成させていきます。
こちらは、クリスタルの輝きをイメージしたケーキ。
甘さをおさえた生クリームをホワイトチョコでコーティングし、銀箔を散らしました。
【石束総料理長】
「パールはチョコですか?」
【岡田シェフ(クリスマスケーキ開発チーム)】
「チョコレートですね。全体に白いイメージで仕上げていきたい」
【石束総料理長】
「これ、キルシュ(※発酵させたサクランボからつくるブランデー)は使われてますか?」
【岡田シェフ】
「使っております。はい」
【石束総料理長】
「これぐらいやったらいいんじゃない?誰が食べても食べやすい。女子ウケするケーキになっている」
続いては、飾りつけのチェック。
【岡田シェフ】
「ちょっとアクセントで」
【石束総料理長】
「黒(のチョコ)?メリハリはあるんだけど、白を基調に仕上げたほうがクリスタル感がでるんで、
やっぱり白で行ったほうがいい」
【岡田シェフ】
「同系色」
ケーキの試作は今回をあわせて約10回。細かな修正を重ね、半年かけてようやく完成となりました。
【取材ディレクター】
「総料理長からのプレッシャーあるんですか?」
【岡田シェフ】
「かなりそれは…。これだけのパークの中でショーケースの中に入るものなので…。だからハードルは高いです」
続いて、石束総料理長がチェックにするのは、クリスマス・スペシャルビュッフェのメイン、ローストビーフ。
オーブンでおよそ3時間じっくりと焼き上げ、グレービーソースをかけた、ひとしなです。
【石束総料理長】
「味付けもいいし、ローストビーフの味付けもいいし、ソースもちょうどいいと思うんだけど、
これ芯温何度って言いましたっけ?」
【江上シェフ(ビュッフェ開発チーム)】
「54(度)ぐらいですね」
【石束総料理長】
「55度ぐらいでいけへん?もうちょっといったほうがお肉のおいしさが増すんちゃうかな?
本番は55度でいきましょう」
このたった1度の違いで肉の柔らかさやジューシーさが変わるそうです。
【石束総料理長】
「1度重要です。特にビーフの場合、ロゼに焼きあがるのが大事な商品ですので、
1度で結構焼きすぎたり、悪くなったりするので1度は結構重要です」
シーズンやイベントごとに作られるUSJの特別グルメ。どうやってアイデアを生み出すのか?
石束総料理長がその秘密を教えてくれました。
【石束総料理長】
「我々シェフがいっぱいいますんで常々アンテナ張ってるんですね。
そのアンテナ張った材料が見つかった都度、この『目安箱』の中に投稿していくんです。
で、自分のアイデアと混ぜてメニューを開発していくとこういった流れになっています」
目安箱に投稿されるのは、アイデアのたまごとなる料理の写真やレシピなど。
これらをもとに試行錯誤を重ね、オリジナリティーあるメニューを生み出していくのです
11月上旬、石束総料理長の姿は、USJ近くのある施設にありました。
実はここ、USJ専用のセントラルキッチン。
パーク内で提供される料理はすべてこのセントラルキッチンで調理され、
最後の仕上げをそれぞれのレストランで行っているのです。今回特別に撮影が許可されました。
ローストビーフ用の肉は塩コショウなどで味付けして真空パックに。この状態で店舗に運ばれ調理されます。
クリスマスケーキもすべて手作りしています。
完成直前のケーキはカートにのせられ、パーク内のレストランへ運ばれます。
そして、最後の仕上げが施され、ショーケースに並ぶのです。
【女性客】
「おいしい!クリームおいしいです。さっぱりしてます」
予想以上の売れ行きで追加注文が次々と入ります。
【石束総料理長】
「ドームの白いケーキが一番売れてる。大成功だと思います」
そして、焼き加減が気になっていた、クリスマス・スペシャルビュッフェのローストビーフ。
【女性客】
「柔らかくてジューシーなお肉でした」「めっちゃおいしいです」
お客さんの評判も上々のようです。
レストランの隅を見てみると、石束総料理長の姿が…。お客さんの立場で味をチェックしようと、
私服姿でレストランを訪れていたのです。その評価は?
【石束総料理長】
「ほぼ完璧にできてると思う。今日の時点では全部GOODなんですけど、これをまた戻ってシェフにフィードバックしたい」
石束総料理長の頭の中は、すでに来年へ向けて動き出しています。
【石束総料理長】
「今年よりもバージョンを上げた、アトラクションに連動したメニュー、
ゲスト体験価値が上がるようなメニューを今から考案していくところです」
チームワークと手作りで、お客さんが笑顔になる料理を届けます。