◆『ALSOK』東京研修所(東京・稲城市)
真新しいスーツに身を包んだALSOKの新入社員。これから4泊5日の社員研修が始まります。しかし、受付で待ち受けていたのは…
教官「声が小さい!腹から声出せ!」
教官「もっと大きな声出るぞ!しっかり挨拶しなさい!」
その異様な光景に、新入社員たちは思わず固まってしまいます。
G20サミットやラグビーワールドカップ、さらに、来年の東京オリンピックを控え、警備態勢の強化を加速させるALSOK。今年の新卒採用は警備職や技術職合わせておよそ800人。新入社員も会場警備に動員される為、例年にない厳しい研修が待ち構えています。
警備長「まだ声が小さいです。これから皆さんは社会人となり、ALSOKの社員として第一線で働く訳ですけども。初動全力!最初から全力で行うこと」
教官「気をつけ!」「かかとをつける!」「五指は揃えろ!」「手がゆるんでるぞ!」「左向け左」
初日は警備員としての基本的な動きを習得する訓練。方向転換や敬礼動作など、体勢によって細かい動きがあり、さらに、きびきびと動くことが求められます。
教官「全員気をつけをとれ。不動の姿勢をとれ!」
指導するのは、警備の第一線で活躍する社歴10年以上の先輩教官。
教官「つま先をつけたまま回すんだ。」
研修生の左藤望さん(22)「ちょっと…」
教官「左足はつま先をつけて回す。」
方向転換の動作で、何度も教官に指導されているのは、4班の班長、佐藤研修生(川崎支社配属/機械警備部門)。さらに…
教官「それが全力か?本気でやれ!」
班を統率したいと、自ら班長に志願した佐藤研修生。しかし、「声が出ていない」と叱責され、この表情。
佐藤研修生「お疲れさまです。剣道やってるんで声は出るんです、実は。ただ、気持ちの問題で…。物理的に出せることは出せる。」
小学生の頃から16年間、剣道一筋、体育会で育ってきた佐藤研修生。剣道で培った精神力を警備に生かしたいと、ALSOKに入社しましたが、初日から自分の未熟さを思い知らされたようです。
研修生一同「いただきます」
午後6時半。楽しいはずの食事の時間も、教官が行動を監視。研修生たち、常に気を抜くことは許されません。
女性研修生「時間に常に迫られてる感じです。」
夕食の時間はわずか20分。この後、座学の研修がすぐに始まります。安全を守る仕事で、時間厳守は必須なのです。
教官「起立をしたら、2列目以降は、最前列に合わせるのじゃないのか!警備会社の社員です。仲間意識をもって団結をして下さい。」
『ALSOK』南剛志・警備長「これから東京オリンピックがありますが、1人では警備ができませんので、団結心をもって一つの目的に向かって事故のない警備を提供できるようやっていきます。」
東京オリンピックなど大きなイベントでは、警備員の規律ある団体行動が不可欠。不審者と対峙した場合は、大声で威嚇しないといけない為、挨拶も全力で行います。
教官「(教官を無視する研修生に対し)おい!シカトするなよ。お疲れさまです!」
男性研修生「お疲れ様です!」
教官「自分が本気で声を出さないと伝わらない、だから僕も全力で教えます。」
そして、佐藤班長も…。
教官「『お前が声を出さないと他がついてこない!』と言われただろ。何でそんなに適当にやるんだよ!やる気ないなら帰れ!」
佐藤研修生「怒られる側の気持ちが分かった気がします。(これまでは)怒ってたんです、後輩とかを。僕がチームの足を引っ張っている…」
これまで剣道部員を統率し、班をまとめることには自信がありましたが、心を打ち砕かれたようです。
仲間の研修生「落ちこみ過ぎだって、マジで…」
◆初日終了。夜が明けてー
教官「起床!」
朝6時起床。20分後には点呼が始まるため、大急ぎで準備しなくてはいけません。そして点呼の時間…。4班の佐藤班長、班員が揃っているか確認していきますが…、何やら浮かない顔をしています。
教官「班員が足りない?とりあえず探してこい!」
女性班員が1人来ていないことが発覚し、大至急探し回ります。過去には、初日で逃げ出したケースもあり、現場に緊張が走ります。しばらくして…、
女性班員「すいません…」
佐藤研修生「どこにいたのですか?」
間違えて別の班に。恨み節の1つぐらい言いたいところですが…、全ての責任は班長なのです。
教官「方向転換を確実にやれ!しっかり練習したか!」
教官「何をいつまでダラダラダラダラやってるんだよ!」
佐藤班長、幸先の悪い2日目となりました。
2日目は、警戒棒の実技訓練や部隊訓練、さらには駆足行進など、スケジュールが分刻みで行われます。(ゲキを飛ばす教官たち)教官の指導も、初日と比べて増える中、朝の点呼で足を引っ張ってしまった佐藤班長に変化が…。
(大声を出す佐藤研修生)顔つきが変わり、何か吹っ切れたような表情。実技考査は最終日。厳しい研修で積み重ねてきた成果を出すことはできるのでしょうか。
◆いよいよ、最終日ー
教官「実技考査、実施せよ」
いよいよ実技考査の日がやってきました。大人数が息をぴたりと揃えて行動しないと、合格できません。指の揃え方や足の角度など、一糸乱れぬ動きができているかをチェックする教官たち。そして…
緊張感みなぎる試験が終わり、涙する佐藤班長。そして、鬼のように接してきた教官たちも…。
教官「辛いこともあったと思うが、本当によく頑張った。今後こうやって集まることはないかもしれない。だけど、同期を忘れるな。」
佐藤研修生「色々なことを立て続けに言われたので、いっぱいいっぱいになっていたのですが、ここで日々過ごしていくうちに、仲間の為を思ってやってるという意識が芽生えてきて、それと同時に(自分が)変わっていったと思います。」