2018年12月下旬。世間がクリスマスムード一色の中、小さな一室で勉強に励む小学生たちの姿がありました。
先生「じゃあ、自然長はなんぼですの?って言うたら、(白板を指して)ココが148cmやから、ココは52cm。これはプラス16cmの状況で32cmやねんから、自然長は?」
生徒「36cm」
彼らは、全国屈指の難関・私立「灘中学校」を目指す小学6年生です。灘中学といえば、偏差値70以上。東大合格者数ランキングでは、常に上位に位置する中高一貫の男子校です。
生徒「難しい問題にチャレンジして、それが出来た時の達成感がすごい。」
超難関校に挑む受験生、その生活は?勉強法は?
塾生全員「灘中に合格するぞ!」
生徒「ここ入ったら(合格発表)見えるん?」
生徒の母親「見えるんかな?」
中学受験の最高峰・灘中受験!その追い込みラスト1ヵ月に…”センニュウ”
〈馬淵教室 京都・四条烏丸校〉
先生「抵抗は2倍よりも大きくなりますか?小さくなりますか?」
生徒「小さくなる」
先生の質問に、間髪入れずに答えたのは、佐古奏(さこ・かなで)くん(12)です。幼い頃から、常に妹想いの優しい性格で、家事のお手伝いもよくする「しっかり者」なんだそうです。塾は、なんと週6日!学校が終わると、自宅のある大阪からバスと電車を乗り継ぎ、およそ1時間の道のりを1人で通っています。その移動中に行うのが…「ピクロス」(お絵かきロジック)。
奏くん「数字が1列にある黒マスの数を表してて、20やったら20個って感じで、それを埋めていったら1つの絵になるみたいな」
灘中受験に挑む小学生は、スマホゲームでも脳のトレーニングです。奏くん、中学受験は自らチャレンジしたいと言ったそうです。
奏くん「元々、『漢検』をやってて、1級に合格してから何をしようかと考えてた時に、友達が中学受験するって言って。だから自分もやろうかなと思って始めた。」
幼稚園の頃から漢字が好きだったという奏くん。小学4年生でなんと『1級』まで全て取得したのです。
湊君「(Q.なぜで、灘中学校に行きたいと思ったの?)1番賢い学校やし、いいかなと思った」
奏くんは何でも1番になりたい、負けず嫌いな子どもだそうで…。
奏くんの母・祥子さん「負けん気は強くて、漢検を幼稚園の時から受けてたんですけど、満点合格を狙っていたし、準1級とか1級になってくると最年少合格とか、常に1番高いところを目標に立てる感じです。」
塾内模試では、常にトップクラスの成績を収めている奏くん。灘中へ行った”その先”も見据えていました。
奏くん「ロボット作りたいと思う。(Q.なぜロボット?)ドラえもんが大好きなんですけど、おもしろそうやし、プログラミングとかも楽しそうやし、最近、便利なロボットが増えてきてるから。」
学校が冬休みに入り、朝から1日中、塾での授業。唯一の息抜きは、受験仲間と食べるお弁当の時間です。ちなみに、この日は12月24日。
奏くん「クリスマスプレゼントに『灘の合格証書』欲しい。」
奏くん、お母さんに「クリスマスプレゼントは受験が終わるまで我慢する」と直談判したそうです。
2019年元日も塾通い。受験生にお正月はありません。お昼12時から夜までみっちり勉強です。この日は、いつもの京都校ではなく、兵庫県にある教室で特別授業。受験生たちは、全員で”ある場所”へ向かいます。そこは…灘中学です。本番に向けて気持ちを高めるため、本番の試験会場へとやってきたのです。
先生「灘を前にして、どういうことをお願いするか。あそこの扉(校門)、全部閉まってるやん。あれを開けようぜ!お前たちが4月以降、しっかりと通えるように、そういう気持ちと人に対する感謝を持ってしっかりお願いごとしてみよう!では目を閉じて。黙想!」
奏くん、何を思ったのでしょうか?
奏くん「自分だけじゃなくて、いつも塾行ってる友達と一緒に灘に行けるように。」
自分だけでなく、いわばライバルである友達の合格も願う奏くん。とにかく優しい性格なんです。
1月3日。最後の模試です。受験に向けて順調にきていた奏くんでしたが…
奏くん「だいぶ悪かって…(理科が)66点。(Q.目標は何点だった?)先生が言ってる70点でした。」
受験まであと2週間。最後の模試で平均点に及ばない結果となってしまいました。その後、灘中学の出願倍率が発表。過去5年でも最大レベル!とても厳しい戦いとなりそうです。
試験前日。奏くんを訪ねてみると…
奏くん「ちょっとだけ緊張はしてる。(Q.自信はある?)まぁ・・・」
模試の結果もあってか…奏くん、やや不安な様子で受験当日を迎えることになりました。
1月19日朝7時。お母さんの付き添いで奏くんがやってきました。受験生は塾の教室に集まり、本番直前のミニ講義と決起集会を行います。
先生「みなさんほど勉強してきたメンバーは他にいないよ!だから、その成果は必ず出ると思うから、自分を信じて力を信じてやってきてください。」
「灘中に合格するぞー!」「合格するぞー!」「合格するぞー」「合格するぞー」
その頃、灘中学校の正門前では、保護者や塾の関係者が花道を作っていました。前日はトンカツを作って『験担ぎ』をしたというお母さんも緊張気味の様子。花道を通る奏くんに、お母さんはそっと手を差し出しました。そして、大きく頷いた奏くん。塾の先生たちにも激励され、いざ受験会場へ!
母・祥子さん「体調を崩さないことだけ、ずっと気にかけてたのでそれが良かったです。万全で。」
算数・国語・理科の3教科を終え、1日目が終了。
奏くん「算数がちょっと難しかったけど、まぁまぁかな。(Q.他の科目は?)ん…」
母・祥子さん「いつもこんな感じです。塾のテストの後とかも『どうやった?』って聞いても、『んー、まぁまぁ』と言って、そういう時はだいたい良い結果なので、たぶん大丈夫。」
もうあとは願うのみ。結果はいかにー。
2日間の試験が終わり、合格発表の日。体育館の中に、合格者の受験番号が張り出されています。自分の力を発揮できた生徒たち。塾の先生と喜びを分かち合います。
合格した生徒「国語で(点数)取れたのがうれしい。」
合格した生徒「スランプとかもあったけど、ちゃんと乗り越えられたしうれしいです。」
そして奏くん…。併願校の試験を終えてから、合格発表を見にきました。
奏くん「結構、不安でもあり楽しみでもあり」
2年間の集大成。奏くんの受験番号は『483番』です!果たして…?
奏くん「あった。あった。」
奏くん、見事合格です!
母・祥子さん「よかったな。よかった、よかっ。た」
奏くん「うれっ、うれっ、しゃっくりが…。灘のために今まで勉強してきたので合格できてよかった。」
そして、お母さんにあるものを”おねだり”。受験が終わるまで我慢していたクリスマスプレゼントです。
奏くん「ドラえもんのコミックを全部。1~45巻まで。」
母・祥子さん「何でも買いましょう!」