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2019年2月12日(火)

<なるほど!ちまたのケーザイ学>「“靴のまち長田”の挑戦」

ハイヒールに、サンダル、スニーカー。
「オシャレは足元から」と、言われるように、店頭には季節ごとに様々な商品が並びますが・・・

【女性客】
「私は外反母趾なので合う靴が少ないから、足にあったサイズを探すのが難しい」

【別の女性客】
「欲しい柄とかあっても結局入らなくて諦めたりとか」

自分にぴったりの1足を探すのは、意外と大変なようです。そんな客のニーズに応え、神戸の靴職人が立ち上げた「セミオーダー」の靴が今、話題になっています!その人気を支える職人たちの「スゴ腕」とセミオーダーのハイヒール誕生に込められた願いとはー

 

「足にフィットして、尚且つおしゃれも楽しみたい」

そんな女性のニーズに応えて、阪急うめだ本店が、今月6日から販売を始めたのが、豊富な種類の中から選べる「パターンオーダー」のハイヒールです。

サイズは、21.5cmから26cmまで。幅も4種類あり、ヒールの高さやタイプも選ぶことができます。価格は、2万5920円からですが…

Q:いくらまでなら出す?
【女性客】
「2万5000円か3万円ぐらいまで。で、長く履けるんであればケアしながら使いたいなと思って」

【阪急うめだ本店 婦人靴販売部 髙安純太さん】
「お客様のニーズが多種多様化する中で、よりお客様1人1人にフォーカスした靴を提供したいというのがあり」

1人1人の細かいニーズに応える靴づくりを、陰で支えている会社が神戸の長田にあります。

【薄田キャスター】
「靴の街、長田に来ています。見てください。ここにはこんな大きな赤いヒールのオブジェもあります」

この街では、古くからゴム産業が発達し、大正時代にはゴム製の長靴や運動靴。戦後には、日本で初めてとなる塩化ビニールを使用した、いわゆる「ケミカルシューズ」が生産されました。

そんな「靴のまち」で、ことし創業71年目を迎えた神戸レザークロスは、婦人靴店「エスペランサ」を全国展開するほか、木型やヒール、生地など、靴の材料の卸業を手掛けます。

年間の売り上げは、100億円! その背景には日本でも数少ない木型師と呼ばれる職人の存在があります。

【薄田キャスター】
「すごい!壁一面木型が並んでいますよ。えー、圧巻ですね。1つ1つ、同じように見えて、つま先がシャープなものから丸みを帯びているものだったり。何種類ある?ここにあるもので」

【神戸レザークロス 木型師 五十石紀子さん】
「ここだけで多分800型ぐらいはあるかなと思います」

革靴はもちろん、サンダルやブーツ、スリッパでさえ、底のある履物は、職人たちが作った木型を基にできていて、こちらでは、その木型が年間、約1000個作られています。

阪急うめだ本店のオーダーヒールの木型もその一つです。

Q:特にこだわっているのは?

【神戸レザークロス 木型師 五十石紀子さん】
「木型を削っているときに、靴がどうあがるのかイメージするために、こういう風に皮を乗っけてみたりして、光のラインがここに乗るから、もうちょっとここを(厚みを)付けてみようかなとかその先にある靴をイメージしながらやっています」

完成までに2,3カ月かかりながら、消費者の目に触れない木型と、裏方である木型師の存在を知ってもらいたいそう考えた神戸レザークロスは3年前、「ゲージ」というセミオーダーのハイヒールブランドを立ち上げました。

企画と販売は、五十石さんたち木型師が手掛けます。

【神戸レザークロス 木型師 五十石紀子さん】
「少し形が通常よりも規定をはずしているかもしれないが、作りやすさではなく、履きのやすいものだっていうところで木型を削っています」

21.5cmから26cmまでのサイズと4種類の幅。さらに、「カーブ」と呼ばれるつま先からかかとまでの曲がり具合も3種類あり、左右別々にオーダーすることができます。

このために作った木型は、360種類にも及び、生地やヒールの種類など、デザインの組み合わせを含めると、400万通りの中から、自分にぴったりの1足をオーダーすることができるんです。

私も、自分に合う靴を探してみることに…

【神戸レザークロス 木型師 五十石紀子さん】
「足の周りを赤外線のカメラがぐるっと回転して立体のデータを計測します」

【薄田キャスター】
「すごい、私の足の形がかたどられていく」

計測すると、右足の方が、左足に比べて少しだけ長く、幅も広いことが判明。

24cmのサイズを試してみることになりましたが、同じ24cmでも、幅やカーブが異なるため、なんと12種類もあるんです!この中から、試し履きを重ねて、私の足に一番しっくりくるものを履いてみると…

【薄田キャスター】
「あ、かかと浮かない。なんか、本当にぴったりくっついてますね、足の一部になった感じがする。これが私の運命の靴だったんですね」

価格は、一律37800円と、「エスペランサ」の主力商品と比べ4倍ほど割高ではありますが、それでも、全国の催事で引き合いがあり、これまでに約1500足を販売しました。

Q:ブランド立ち上げたときと3年ほどしてどう?

【神戸レザークロス 木型師 五十石紀子さん】
「ここまでの価格帯で、セミオーダーでお待ちいただいて、靴が売れるのかって言うのは正直不安なところではあったんですけど、お客様のニーズと本当にあったんだなと痛感しています」

そんな五十石さんたちが作る木型は、神戸・長田の他のメーカーにも使われています。

こちらは、地元のメーカーを中心に構成する組合が去年10月に発売したセミオーダーのハイヒール「神戸シューズ」のプレミアムライン。0.25cm刻みで細かいニーズに対応したこの商品は、地元の7つの靴メーカーがそれぞれ作、「メードイン長田の靴」です。

【日本ケミカルシューズ工業組合 鈴木浩副理事長】
「僕たちには作る強みがあるので、(これまで)問屋やいろんな靴の店に卸していたが、自分たちで作って、自分たちで売るっていうのをスタンダードな形としてできればいいと思う」

「靴のまち長田」から、今、次々と発売される「オーダーメード」のハイヒール。これらの靴には、復興への願いも込められているのです。

1995年、兵庫県南部を襲った、阪神淡路大震災。震源に近かった長田では、靴産業に関係する8割以上の企業が被災。「靴のまち」は壊滅的な打撃を受けました。

その後、ファストファッションの普及で、海外製の安価な靴が流通するようになると、長田の靴産業は、さらに窮地に追い込まれ、企業の数も生産額も半分以下に減ってしまいました。

生き残りをかけ、これまでの「量産販売」から、数は少なくても、「付加価値のある靴」へと舵を切る。そんな決意が、オーダーメイドのハイヒール誕生の背景にはあったのです。

【神戸レザークロス 木型師 五十石紀子さん】
「やはり長田も大量に同じものを作るのではなく、価格帯も高くてもクオリティが高く、例えば生産背景たったりプロダクトにストーリーがあるものを作って、みなさんに届けようと」

生まれ変わろうとしている「靴のまち」長田。“オーダーヒール”はその象徴となるのでしょうか?

 

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