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2018年12月5日(水)

【特集】家族までも追い込む…「ギャンブル依存症」の現実とは

大阪のベイエリアの人工島「夢洲」に大阪府や大阪市は、

万博に続きカジノを含む統合型リゾートIRの誘致を目指しています。

そこで、懸念されるのはWHO(世界保健機関)で病気に認定されるいる「ギャンブル依存症」の増加です。

この病、苦しめるのは患者本人だけではありません。

 

 

ここは、ギャンブル依存症からの回復を目指す民間の施設「グレイス・ロード」です。

20代から50代までのおよそ60人の男性が一緒に暮らしています。

日々、ギャンブルからの脱却だけを目指す生活です。

 

【大阪出身のユウキさん(20代・仮名)】

 「高校卒業後、すぐギャンブルに手を染めました。どん底にいくまで1年ぐらいしかかからなくて、

  とにかく自分の持ち金でできたのは1週間くらい。そこから家庭内窃盗がすぐにはじまって」

 

【兵庫出身のマサヤさん(20代・仮名)】

「一瞬でのめりこみました。大学にもいかなくなってやめるし、20歳の誕生日になったその日に消費者金融に借りに行った」

 

この施設に入るには、月16万円が必要です。

回復プログラムの中心は、「言いっぱなし、聞きっぱなし」のグループミーティング。

自分の中に抱えている辛い過去を、包み隠さず話すことが回復の第一歩になります。

【ギャンブル依存症回復施設「グレイス・ロード」植竹淳さん】

 「北は北海道から南は九州までお困りの方が利用されている。

 (回復施設は)足りない。お困りの方はいっぱいいる」

 

3年前、親に勧められたれてこの施設に入った大阪出身のタカシさん。

 

【大阪出身のタカシさん(30代 仮名)】

「勝った時は、北新地で大盤振る舞い」

 

高校の体育祭で応援団長をつとめるなど、クラスの中心にいた

タカシさんでしたが、大学ではミナミにあった「闇カジノ」にのめり込みました。                        

夜の仕事で稼いだ数千万円にのぼるお金はすべてギャンブルにつぎこみました。

 

【タカシさん(30代 仮名)】

「(闇カジノで)バカラやるようになって金銭感覚が普通ではなくなった。

 ひどいときは数百万円を数時間で失うこともありましたね」

 

それでも、ギャンブルをしたい衝動を抑えきれず、親の金を盗んだり

親の持ち物を売ったりして、金をつくりました。

 

【タカシさん(仮名)の母親】

「この財布の中に私のヘソクリをいれていた。なくなったんでおかしいなと思っていたら、

 息子の部屋の机から見つかった時はビックリしました」

自宅の庭の池で父親が大切に育てていた鯉さえも金に変えようとしました。                       

【タカシさん(仮名)の父親】

「これはさすがにお金にかわらないでしょう。

 お金にかえてギャンブルいこうということになるんでしょうね。依存してくると」

パチンコのほか競馬、競輪などの公営競技があり「ギャンブル大国」ともいわれる日本。

国の調査では、ギャンブル依存症が疑われる状態になった人は、全国で320万人にのぼるとみられます。

そんな中、今年7月、カジノを含む統合型リゾート・IR実施法が成立。

国が認めるギャンブルにカジノが新たに加わりました。

 

【大阪市 橋下市長(当時)2014年】

「東洋のベニスを目指していくという大きな方針の下、大阪のベイエリアを方向転換させていく」

 

大阪は、ベイエリアの人工島「夢洲」にIRを誘致する方針を打ち出しています。

「夢洲」を舞台に万博誘致に成功した大阪はIRの有力候補地になっているのです。


【大阪府・大阪市IR推進局 井谷宣明課長】

「IR誘致をすすめていくうえでギャンブル依存症の問題は

 喫緊の課題であると認識している、しっかり対策をとっていく」

大阪府と大阪市は、ギャンブル依存症に対する理解を深めてもらおうと

市民を対象にしたセミナーを開いています。また今年度からは、大阪府内の高校で、出前授業も始めました。

 

【精神科 西村直之医師】

「(ギャンブルラーのうち)5パーセントぐらいは改善しないとまずいよねという人たちがいて、

 重度の人たちが1パーセントから3パーセントいる。

 軽々しく見てはいけないし、しっかりと対策をとっていかないといけない」

 

カジノ解禁を受けて、研究もすすんでいます。

ギャンブル依存症は、WHO・世界保健機関では精神疾患の一つに分類され、

脳の障害が影響しているという研究もあります。

京都大学は、韓国にあるカジノの客の行動データを集め、

「ギャンブルにのめり込んでいく兆候」を明らかにすることを目指しています。

【京都大学こころの未来研究センター  𠮷川左紀子教授】

「普通にギャンブルを楽しむ行動と非常に危険な方向に変化していくギャンブルの行動とは

 何がどう違うのか、危険な行動に至る人たちにどういう特徴があるのか少しずつ分かっていけばいいかなと」

 

研究の途上にあるギャンブル依存症ですが、

「家族を巻き込むこと」が大きな特徴の一つといわれています。

 

【タカシさん(仮名)】

「母親は大変な状況、僕は家庭内窃盗を繰り返していた。

 実家に自分がいると泥棒が家にいるのと一緒なんで、眠れなくなって神経をすりへらしてうつ病になった」

 

「まじめにやっているの?」。それが母親の口癖でした。

そして、GPS機能を使い息子がギャンブルをしていないか

常に行動を監視するようになりました。

【タカシさん(仮名)の母親】

「往復の通勤の動きを見ていました。電車を乗り過ごしているときもあって、

 そういうときはすぐメールとかで「あんた電車を乗り過ごしているやん」と送ったりした。

 

父親は妻の衰弱する様子を見て「息子が死んでも構わない」

 

【タカシさん(仮名)の父親】

「息子と一緒に病院にいったとき、「お母さんの方が病気ですよ」と言われた。

 家族が、みんな病んでしまいますね。

 息子が「自殺する」と言い出したら、それやったらええやんと。

 死んで1回泣いたらええんちゃうのと、どうしようもできないなと思いました」

そんなタカシさんの両親を救ったのは、同じ痛みを持つ家族との交わりです。

家族の相談先として、行政の窓口や医療機関もありますが、

ギャンブル依存症に詳しい専門家が少ないのが現状です。

月に2回程度、大阪で開かれる「家族会」の交わりが、前を向くきっかけになりました。

 

【タカシさん(仮名)の母親】

「同じつらさとか、しんどさ持っている人たちと共有できて、

共有から一歩進んで、下をむいていたのにまっすぐ見て、次はもっと笑えるような会になっていく」

 

タカシさんは、今年7月、およそ3年かけて施設の回復プログラムを終えました。

スタッフとして施設に残ったタカシさんは、

講演会などで、ギャンブル依存症の現状を知ってもらう取り組みもしています。

【タカシさん(仮名)】

「僕は回復の道中なんですね。だから3年という日を迎えられるとは思っていなかった」

 

【タカシさん(仮名)の母親】

「いまはお給料もらってスタッフとして働いているけど、

 やっぱりどこかで不安があるし、これは死ぬまで続く。

 自分自身が傷ついたままで、息子を恨んでいる気持ちが残っているんですよね」

 

 

カジノ解禁で注目されるようになったギャンブル依存症。患者本人だけでなく家族も含めた対策が求められています。

 

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