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2018年10月30日(火)

【特集】『大阪湾が綺麗すぎる⁉豊かな海を取り戻せ!』

■大阪湾で「旬の魚」が食べられなくなるかもしれない?

タイにアジ、ヒラメにタコ、タチウオにワタリガニ・・これ全部大阪湾で今旬の魚たち。

しかし、これが食べられなくなるかもしれないんです。

今、大阪湾で意外な問題が明らかになってきました。

 

関西空港が見える大阪府阪南市の海水浴場は、大阪湾でも綺麗な海が楽しめると人気です。

【海水浴客】

「思ってたよりきれいだと思いました」

「めっちゃきれいですよ」

 

同じ阪南市内にある朝市。

朝6時半、とれたての魚がセリにかけられますが、どこか活気がありません。

【魚の卸売業者 中谷 嘉幸さん】

「明らかに魚種が減ってるもんね。昔はもっといっぱい色んなもんが獲れた。

“綺麗にしすぎてる”んちゃう?」

50年以ノリを養殖してきた漁師も深刻な被害を訴えます。

大阪湾のノリの特徴は真っ黒で、豊かな風味をもつことですが、最近は良質なノリが獲れる期間が短くなってきたと言うのです。

 

【漁師・名倉勲さん】

「色が落ちてな、もう段ボール箱みたいな色まで落ちる。

 水は綺麗やけど栄養がないから全然ノリにはよくない。綺麗でもあんまり良くない。いや逆に良くない」

『海が綺麗になりすぎて栄養がない!?』一体大阪湾で何が起きているのでしょうか?

 

■海が「キレイになりすぎている」 その原因は…


大阪府の水産技術センターでは、海水に含まれる成分の分析や透明度の測定などの水質調査を続けてきました。

約45年にわたる定点観測の結果、見えてきた大阪湾の問題は・・・“栄養の偏り”でした。

 

高度経済成長期に工場排水や生活排水が急増し、排水に含まれるリンや窒素といった栄養分が海に大量に流れ込みました。

それを食べてプランクトンが爆発的に増加し、いわゆる”赤潮”となって漁師を苦しめました。

この反省から排水に対する規制が作られ、海に流れ込む栄養は次第に少なくなっていきました。

すると水質は改善し、1980年代大阪湾の漁獲量はピークをむかえます。

下水処理の能力は上がり、どんどん海はきれいになっていきました。

 

ところが・・・

大阪湾にあった時計回りの緩やかな潮の流れが、神戸空港や関西空港などの大規模な埋め立てによって邪魔されて弱くなり、

海水がうまく混ざらなくなっていったのです。

その結果、いまでも排水が多い湾の奥では、栄養が多すぎる一方で、西側や南側では栄養が足りなくなってしまったのです。

 

栄養がなくなった海には、魚のえさとなるプランクトンが増えません。

プランクトンがいない海は濁りが無く透明になる為、これを漁業者は「きれいすぎる」と言っていたのです。

■豊かな大阪湾を取り戻すために…『海の栄養剤』を

かつての豊かな大阪湾を取り戻そうと立ち上がった人たちがいます。

大阪府立大学の大塚耕司教授。

手にしているのは、共同研究する企業が作った海の栄養剤です。

魚のアラで作ったアミノ酸が入っています。

 

【大阪府立大学 大塚耕司 教授】

「さかな(のアラ)からとった栄養分を、海にまた戻すと。

 海から陸にあげて処理した廃棄物をうまく利用してまた元に戻して、漁場を造成する」

 

一緒にプロジェクトを行っているのは、大阪湾の環境改善を行うNPOの岩井克巳さん。 

魚が集まる住処や繁殖場所をつくれないか、1年半前、沖合にこの栄養剤を設置し、定期的に調査を行っています。

漁礁に栄養剤が入ったネットが設置されています。

周りにはフグやハギの仲間が集まっていました。

 

栄養剤が入った蛸壺にもしっかり大きなタコが住み着いているようです。

 

【岩井克巳さん】

「蛸壺マンションの方は、タコもはいっていましたし栄養材があるというのは良いインパクとになっているのかなと」

 

■栄養が『いい加減』な豊かな海を作るため…研究も進んでいる 

更に大塚教授は今、栄養が偏ってしまった大阪湾の状況を解決するある研究を進めています。

 

【大阪府立大学 大塚耕司 教授】

「大阪湾も南港など奥の方では大量のアオサが発生して。処理にも困っています。

 困っているから悪い者をやつけるのではなく、これをいいものに換えてやろうと」

 

この研究ではまず、栄養が多すぎて湾の奥で大量発生してしまうプランクトンや海藻を回収し、

そこからメタンガスという船などに使う燃料を作ります。この時でてくる残りかすには、

栄養が多く含まれているため栄養分を取り出し、作った燃料で船を動かして足りないところに栄養をまこうというものです。

 

すでに燃料と栄養分を取り出すことには成功しています。

【大阪府立大学 大塚耕司 教授】

「『水清ければ魚棲まず』という言葉がありますけども、あまりにも綺麗な海には魚のエサがない豊かではない海なんですね。

 僕は『ええかげん』という言葉が好きでよく使ってるんですけども、まさに『いい加減』に栄養がある、

 それが美しくて豊かな海なんですよね」

 

■子供たちと共に、「海に苗を植える」活動も 

NPOの岩井さんは地元の阪南市立下荘小学校で授業を行っていました。

題材は、海の中で育つ”アマモ”という植物。

このアマモは海底に根はって栄養を吸収することができるため、栄養の少ない水の中でも、育つことが出来ます。 

今日の課題は海底の砂の中から”アマモ”の種を探すこと。

 

【小学生】

「あ、あった!それや!」「みつけたー!」

こどもたちに豊かな海を作り続けることの大切さ伝えるために、小さな種からと苗を作り、

海に植える活動は10年以上続いています。

 

■“海のゆりかご”にイカの卵も…大阪湾の豊かさを再び 

そして今、増えたアマモは稚魚が育つ”海のゆりかご”の役割を果たし始めています。

【岩井克巳さん】

「人間も生きていく上で経済活動は支えていかないといけないので、それを続けていく上で大阪湾の環境を

 我々が犠牲にしてきたのは間違いない。でも犠牲にするだけじゃなくて、その分なにか、

 逆に大阪湾にできることそういったことを考えていくことがこれから重要なんじゃないですか。時間は戻せないので」

人の手で植えたアマモに、イカが卵を産みつけていました。

大阪湾の豊かさを支えられるのは私たちです。

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