特集コーナー/バックナンバー

2018年4月25日(水)

脱線事故13年 JRの安全は…

【娘を亡くした藤崎光子さん(78)】

「『安全のために予算をたくさんつぎ込んだから、安全になった』ということを

(JR西日本)は言ってるんですが、決して安全になっていない」

 

【事故で負傷した玉置富美子さん(68)】

「何のために亡くなった方がいて、我々けがをして苦しんでる人間がいて。

 それが教訓となってるんだったら、私としても、すごく意味があったと思ったんですが…」

去年12月、博多発東京行のJR西日本の新幹線「のぞみ」に異常が発生。

名古屋駅で調べたところ、安全な走行を足元から支える台車に14センチもの大きな亀裂が入り、

あと3センチで真っ二つになっていました。

【JR西日本・吉江則彦副社長(当時)】

「脱線に至ったかもしれない。福知山線脱線事故以降色々(改革)をやってきたが、

 それが生かされなかったのは重大に受け止めている」

 

「世界一の安全」を誇る新幹線の乗客、およそ1000人の命が危険にさらされる異常事態。

調査の結果、博多を出てすぐに、新幹線の車内では、異常な臭いや音が発生していたことが分かりました。

 

当時どのような異臭がしていたのか?

JRは今月19日、関西テレビに「あるもの」を公開しました。

【記者リポート】

「こちらが今回新幹線の中で発生したとされる、異臭を再現したモノです。

 台車に使われる油を熱したものなんですが、嗅いでみます。

 鼻を突いて喉に来るような臭いです。仮に新幹線の中でこのようなにおいがしたら臭いと思います」

 

乗客からも「異臭がする」との指摘があったことから、岡山駅で保守担当者が乗車。

異常な音や振動を確認したため、東京の指令所と連絡を取ります。

 

【保守担当】「音が激しい!(停車して)床下を点検したいんだけど…」

【指令員】「走行に支障があるのか?」

【保守担当】「そこまではいかないと思う。見ていないので分からない」

 

このやりとりで指令員は「走行に支障はない」と判断。

JR西日本は新幹線を走らせ続けました。

結局、運行を引き継いだJR東海が名古屋で止めるまで、乗客は3時間以上も危険な状況下にあったのです。

 

13年前の脱線事故の教訓は生かされなかったのか?

福知山線の事故の背景には、私鉄に勝つために速さを優先し、

遅れを発生させた社員に「懲罰的な日勤教育」を行う、JR西日本の企業体質がありました。

【企業理念・安全憲章唱和】(入社式・ことし4月)

「安全第一を積み重ね、お客様から安心・信頼していただける鉄道を築き上げます!

 判断に迷った時は最も安全と認められる行動をとらなければなならい!」

 

福知山線の事故のあとJR西日本は「安全が最優先」の企業理念を定め、故意ではないミスを処分しないことにしました。

それなのに、なぜ今回、新幹線を止められなかったのか?

JR西日本労働組合が開いた緊急集会で、現役の運転士が心境を語りました。

 

【JR西日本新幹線運転士・松本信孝さん】

「社員個人が営利優先の運行第一の体質が体に染み込まされていて、消そうにも消せない。

 走行中の新幹線を止めるには、停止させる原因がはっきりしていない場合、躊躇してしまうのが現実」

 

こうした声を受けJRは今回、「安全最優先」からさらに一歩踏み込んで、

「迷ったら躊躇なく列車を止める」方針を採用しました。 

【JR西日本・来島達夫社長】

「『躊躇なく』というのは勇気がいる。

 安全のために(停車する)判断した行為は、会社としての判断だということで、

 止めることを後押しする雰囲気を大事にしたい。勇気を後押ししたい」

 

この結果、異変を感じた新幹線を止めて点検した回数は、

問題発生前は8か月間で1回だったのに対し、発生後は4か月で18回と激増したのです。

 

JRが異常への対処法を見直す一方で、異常そのものを無くす必要もあります。

しかし、亀裂があった台車を調べると、想定外の事態が発覚しました。

 

【台車を製造した川崎重工業・金花芳則社長】

「関係者に多大なる、ご迷惑・心配をかけたことを深くお詫び申し上げます」

 

なんと、2007年の製造時に川崎重工が規定に違反して台車を削りすぎたため、強度が不足。

さらに製造当初から内部に傷があり、亀裂に至ったとみられることが判明したのです。

 

問題を事前に見つけるため、JRは定期的に様々な機械を使って新幹線を検査しています。

しかし、亀裂が入った場所は「目視による点検」しか行っておらず、傷は長年見過ごされていたのです。

【博多総合車両所・松井元康所長】

「目視はしていたが、十分に(安全を)担保できなかった。

 いろんなリスクを想定し、未然に手を打つことを、さらに一層不断の努力を重ねなければいけないことを社員一同痛感した」

 

検査の甘さを指摘されたJRは、超音波を使って台車の内側の傷を見つける検査を導入。

これまでに26個の台車で傷を発見し、全て交換しました。

 

一連の問題と対策について、JRは安全学の権威である関西大学の安部教授らに評価を依頼しました。

福知山線の事故の前からJRを見てきた安部教授は、

「改革が未だに定着しておらず、想定外の事態に対応する力が足りない」と指摘しました。 

【関西大学・安部誠治教授】

「福知山線の事故では『カーブでまさか運転士がブレーキをかけないことはないだろう』と

 当時JR西の幹部は思っていて、カーブにATS(自動列車停止装置)を付けていなくて、結果大惨事になった。

 新幹線は1964年の開業以来、深刻な問題は起こってない。

 『未知のリスク』にどう対応するかということをしっかりやらないとダメだと、

 これが福知山線事故の教訓を活かすことにつながると思っています」

 

再び安全が揺らぐ中、25日、脱線事故の遺族たちも立ち上がりました。

 

【事故で妻と妹を亡くした浅野弥三一さん】

「経営と安全とは表裏一体であるとかじゃなくて、輸送事業にとっては、安全というのは、根幹なんです。

 あえて、3年ぶりにこの集いを開くことにしました」

 

事故で妻と妹を亡くした浅野弥三一さん。

新幹線の問題などを受け、遺族とJRが安全について話し合う場を3年前ぶりに設けました。

 

【事故で妻と妹を亡くした浅野弥三一さん】

「大きな(改革の)フレームはできた。だからといって、事故が無くなるという保証はどこにもない」

 

【JR西労組・荻山市朗中央執行委員長】

「やらされ感があると結局安全の実効性とか持続性が保てないと思う。

 一人一人が安全対策の意義とか目的をしっかりと理解して、主体性や参加意識を持って取り組むことが大事だと思う」

 

再び失った信頼を取り戻すために…

JR西日本には、「心がけ」でなく「結果」で示すことが求められています。

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