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2018年4月3日(火)

防災シリーズ「そなえは今」 大阪を津波が襲ったら…水上からみえた課題

大阪を拠点に活動する、災害研究所の理事長・伊永勉さん。

ボートに乗って、川や海から津波対策をチェックする活動を続けています。

この日は大阪・中之島の西の先端部周辺から、

安治川を大阪港に向かって下りました。

 

南海トラフを震源とする巨大地震は30年以内に

70~80パーセントの確率で起きると言われています。

もし起きれば、大阪湾の奥まで津波が入ってくることも想定されていて、

伊永さんらは対策について長年考えてきました。

 

およそ2キロ下ると、安治川水門が見えてきました。

津波や高潮の時には、この水門が閉まって水の侵入を防ぎます。

 

【ADI防災研究所 伊永勉理事長】

「これが例の、安治川水門で、向こう側へ閉まる。海からの高潮や津波を防ぐ」

この水門は昭和45年に完成した高潮対策の施設で、巨大地震による津波を想定していません。

南海トラフ地震のシミュレーションでは、

水門は閉まるものの損傷を受けるという結果が出て、作り直しが検討されています。

 

 

【伊永さん】

「揺れた後に津波が来るんやから、正常に動くかどうかわからんでしょ、毎年実験してはるけどね」

 

水門からさらに川を下り、海に入る直前あたりでは、

係留されている船が目立つようになります。

 

【伊永さん】

「安治川のね、下流の左岸、台船がどさっと並んでいる。

 でも自走船じゃないので、エンジンがないので係留ロープ切れたら、ただ流される」

 

港の船は、地震があれば、津波が来る前に沖に逃げるか、

係留ロープを強化して漂流を防ぎます。

 

しかし、タグボートで運ぶ台船は、自力で移動できません。

数ある船の係留の強化がどこまでできるのかも疑問です。

 

伊永さんが特に、台船が気になったのは、

津波で漂流することが容易に想像できる点でした。

【関西大学 社会安全学部 高橋智幸教授】 

「大阪の場合は、漂流しそうな船舶が結構ある。

 たとえば水門がうまく動かなかったりした場合、堤防を越流するので、そうすると船舶が入ってくる。

 船が街の中に入ってくると、建物にあたったりしてより被害がひどくなる」

 

東日本大震災では、津波に押し流された船や、コンテナ、車、がれきなどが

市街地で建物などにぶつかって、被害を広げました。

 

また、陸上に残された漂流物は、道を遮断し、土地を占領し、港を使えなくするなど、

復興の活動の大きな妨げにもなるのです。

 

高橋教授らのグループが宮城県・気仙沼市の津波の動きを映像で再現しました。

水の動きに加え、土砂や漂流する船舶の動きも追っています。

港に泊まっていた船が複雑な動きをしながら市街地に入ってきます。

 

黒い船の形であらわされたのは、震災の後、注目された「第18共徳丸」。

この大きな船を押し流す津波の力に、多くの人が驚きました。

 

【高橋智幸教授】 

「津波は水が襲ってくる災害というイメージが強いが、実際には津波によってたくさんの物が流されてくる。

 船舶、がれき、車 そういうものが水と一緒に襲ってくる複雑な災害」 

 

この絵は、1854年の安政大津波の様子を描いたものです。

南海トラフを震源とするとみられる大地震のあとに、

津波が大阪の道頓堀川などをさかのぼってきました。

大きな船が、小舟を押し潰すように押し流されていて、現代にも通じる課題が表されています。

 

大阪港や、周辺の川では、小型船が目立ちますが、

物揚げ場と呼ばれるこれらの場所は使用が自由で、係留は違法ではありません。

大きな船がつく岸壁も、多くが適正な使用許可のもとで使用されています。

 

【大阪市の担当者】 

「我々は違法な係留があるという認識はございません。

 事前にとれる策としては係留強化をしていくことが大事だと思っています。

 船舶所有者ご本人に意識を持っていただくというのが、これまでやれていなかったこと。そこを強化していきたい」

 

港では船のほか、コンテナや建屋、多くの自動車などが、海に面した場所に置かれています。

それらが津波に押し流されて、弱い堤防や橋などにぶつかったら、被害が大きく広がるきっかけになりかねません。

もうひとつ、伊永さんらが気になったのが堤防です。

コンクリートがひび割れたり剥がれたりしている場所が、あちこちで見られました。

 

【伊永さん】 

「高さは一応想定通りの高さはあるが、護岸が結構、老朽化が進んでいるというか、傷んでいるというか。

 鉄筋しか頼りにならんから、それがもろくなったら、補修しても鉄筋が腐ったら終わりやで」

 

堤防について、大阪府が深刻な課題として急いで進めているのが、

「液状化」への対策です。

 

水分の多い地盤の上に立っている堤防は、

大きな地震が起きると、その地盤が振動によって液状化を起こし、堤防が沈み込んでしまいます。

これが液状化による堤防の沈下です。

 

【大阪府の担当者】 

「液状化によって防潮堤が沈下したり、ずれたりすることによる浸水被害が想定されますので、

 河川・港湾・海岸線 防潮堤全体55キロ、対策が必要で10年かけて対策を進めているところです」

 

大阪市西淀川区の堤防で、液状化対策の工事が行われています。

 

【現場責任者】

「こちらの噴射口から超高圧のセメントミルクを吹き出し、液状化層を固い地面に置き替えていく」

 

セメントを噴射する機材を地中に入れて回転させ、周囲の土壌を固めていく地道な作業。

これを堤防に沿って、延々と続けていきます。

 

工事が予定されている延長55キロの堤防のうち、およそ20キロが完成。

工事は順次行われていますが、あと6年かかる予定です。

大阪は、昔、水の都と言われ、海に続く水路が町中を縦横に走っていました。

 

今の大阪にいて、海に近いという感覚は、あまり持てませんが

町の成り立ち上、海とは切っても切れない関係があるのです。

【伊永さん】

「高潮堤防、水門、津波はこれで対応できるかどうかと不安を感じます。

 台船、小舟、あれが流されて上がってきた時に次の災害、大阪湾の弱さを感じる。

 やっぱり皆さん住んでいる人が、自ら逃げる、早く判断することが絶対的な条件じゃないでしょうか」

 

南海トラフ地震は、100年ほどの周期で、過去何度も起きています。

大阪が、津波への備えが必要な町であることは、間違いありません。

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