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2017年6月12日(月)

増える若い世代のがん 「家族との日常を諦めない」

働き盛りの世代でがんになる人は、年におよそ2万人と言われます。

多くの人がかかる病気だからこそ、自分たちの辛い経験を価値に変え、社会に還元したい。

そうした新たな取り組みが始まっています。

 

【2年前 乳がんを発症 伊藤さん(33)】

「治療中に外見とか変わっちゃうのがすごく悲しかったりとか」

【LINEのスタンプ】
「そんなおぬしが好きやねん」

 

【8年前 腸にがんを発症 関口さん(29)】

「焦っても仕方なくて、休むときは治療に専念して休むしかないっていうのは今考えるとすごく正しくて」

【LINEのスタンプ】
「今は休む時やねん」

闘病中に言われてうれしかった言葉は、誰にでも寄り添える、優しいスタンプに生まれ変わりました。

 

 

【谷島雄一郎さん(39)】

「がんになったからこそ見える景色ってあって、それをちょっとした工夫とか発想の転換で、誰かを幸せに―」

 

社会をちょっと優しくするために。

辛く苦しいがんの経験を、価値に変えて・・・

 

【谷島雄一郎さん】

「僕らみたいながん患者だからこその視点とか悩みですよね。

そういうところから一緒のコンテンツを考えてもらって」

 

 

谷島雄一郎さん。

5年前、健康診断で食道に腫瘍がみつかりました。

年間10万人に1人くらいの割合で発症する非常にまれながんでした。

診断は、もっとも重篤な「ステージ4」。

9時間を越える大手術で、食道と胃を摘出しました。

 

【谷島雄一郎さん】

「スタンプの裏にあるメッセージを知ってもらうところを目的にしないと…」

 

谷島さんが立ち上げた団体『ダカラコソクリエイト』。

メンバーは、20代から40代のがんを経験した人たちで、その経験を社会に還元するのが目的です。

 

例えば、この無料通信アプリ・LINEのスタンプ。

闘病中に言われてうれしかったひと言をもとに、自分たちで作りました。

 

 

【LINEのスタンプ】

「そんなおぬしが好きねん」

「今は休むときやねん」

 

病気の人だけに限らず、大切な誰かにかける言葉が見つからないとき
役立ててほしいという願いがこめられています。

 

谷島さんは働き盛りの39歳。

趣味はトレーニングと格闘技です。

がんと診断されたすぐあとに生まれたちーちゃん(4)と奥さんとの3人家族です。

 

【谷島雄一郎さん】

「治療すると(体力が)がっと落ちて、そこから頑張って頑張って持ってくるんですけど、
また次の治療入るとまた落ちての繰り返しなんですけどね。

それでも日常生活の一部なんで、やっぱり子どもとの遊びといっしょで、日常を諦めない努力をせなあかんなって」

 

抗がん剤治療などを行うも、転移を繰り返し、現在も肺に2カ所、腫瘍があります。

 

【谷島さん】

「がんになったこと自体は別に、受け入れることはできたんですけど。

でもやっぱり…それは理解できたとしても、腹が立たないかどうかっていったら、それはまた別で。

ものすごく腹が立つし、ものすごく悔しい」

国民の2人に1人ががんになる現代。

医学の進歩とともに、すぐ死につながる病気ではなくなりました。

谷島さんのような若い世代も年間およそ2万人が、がんになっています。

 

【医師の診察】

「ほんのわずかな大きさの変化なので、特に治療方針が変わるような変化ではないんです」

 

【谷島雄一郎さん】

「働き方は大分変わりましたね。それまでは結構マッチョな働き方だったんですよね。

成果出るまでやれや、みたいな。自分もそうだし人もそうするべきみたいな。

でもそれができなくなったので、自分のやるべきことに対して、
どういうステップでアプローチしていくかはより綿密に考えるようにはなりましたね」

 

働き盛りの世代。

働きながらの治療に不安は少なくありません。

 

【谷島さん】

「絵本読むって親らしいことの代表的なことなのかなと思って、
離れたところから絵本を読み聞かせられるような装置を作れないかなと思って」

 

がん経験者の視点を社会に−

谷島さんは、ダカラコソクリエイトのメンバーたちと新しい取り組みを始めました。

コンセプトは『離れていても家族との日常を諦めない』です。

 

 

【谷島雄一郎さん】

「お菓子をねーバラバラにするんですよね。

やっぱり本人が散らかしているもの書いた方が効果的ですよね。

お前はこれをやってるんだって。もっとちゃんとせぇって」

 

4歳になった娘のちーちゃんは毎日「絵本を読んで」とせがみます。

離れていても、タブレット端末の遠隔操作でそれが出来るのではないかと考えました。

物語の主人公は、ちーちゃん。

最近ますますおてんばになり、片付けもせずお母さんを困らせてばかりな姿を自らの手で書くことにしました。

 

 

【谷島雄一郎さん】

「世の中って何か事情があって、離れて暮らさなきゃいけない家族、
会いたくても会えない大切な存在っていると思うんですよね。

わたしのがん患者っていう視点から生まれたものが、
色んな事情で離れて暮らさなきゃならない人達の絆みたいなものを
取り戻すことに役立てるんじゃないかなって」

 

6月。谷島さんは、肺に転移したがんの治療のために家族と離れて岡山で入院することになりました。

ちーちゃんには「病気と闘ってくる」と伝えただけで絵本のことはまだ内緒です。

 

 

【谷島さん】

「ちーちゃんこれ魔法の本やで。じゃぁちーちゃん読みますね。

ちーちゃんはとってもかわいい女の子。でもやんちゃでいたずらばかり。

お片付けも全然しません」

 

 

【ちーちゃん】
「そんなことないもん。きょうしたもん!」

 

【谷島雄一郎さん】
「お母さんからまた散らかしっぱなし!夜になったら鬼がくるからね。

オイラきいおに。黄色い食べ物が大好きなんだ。黄色い食べ物をよこさないと、君のこと食べちゃうぞー」

 

【ちーちゃん】
「ちぃちゃんの絵本も見て、パパ―」

 【谷島雄一郎さん】
「何読んでくれるん?」

 

【谷島雄一郎さん】

「電話とかわらないんじゃないかと思ってたんですけど、やってみたら楽しいですね。

病院にいながら子どもとの日常を取り戻せた気がして。
がんになったからこそ見える景色ってのはやっぱりあって、
それをちょっとした工夫とか発想の転換で、誰かを幸せに、今回は自分をかもしれないけど。
幸せにする価値に変えていけるんじゃないか」

 

がんになったからこそ見える景色…

その景色が、社会を、日常を、ちょっと優しいものにするはずです。

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