「知られていないだけで、たくさんある」不可解な逮捕・勾留 釈放後に衰弱死した16歳少女 「自分も同じ目に」寄せられた情報 取り調べの闇 2026年08月21日
無実を訴え続けた16歳の少女が衰弱死。長期にわたる取り調べ、その後のことでした。
この問題をnewsランナーが放送したところ、身に覚えがない逮捕、長く続く拘束、不適切な聴取の体験談が続々と寄せられました。
■実家が運営する障害者支援施設で働いていた少女・るなさん(仮名) 16歳で死去
体重わずか20キロ、少女・るなさん(仮名)は16歳で命を失いました。
【るなさん(仮名)の姉】「あの子はずっと『悪いことはしてない。私はしてない』ってずっと言ってたから、なぜ警察の人たちは、そこの真実にたどり着けなかったのか理解ができない」
障害者支援施設を営む家で育ったるなさん(仮名)。中学校を卒業し、スタッフとして働き、「行動援護従業者」という重度の障害者を扱う資格も取っていました。
【るなさん(仮名)の姉】「元々『介護福祉士の免許も取ろうかな』って、『勉強しようかな』って言ったんですけど、あの子は勉強が苦手だから、『私は実力で、経験を積んでやる』って言って。 将来的には母が今、理事長の立場にいるのを『私が理事長になる』って言ってました」
■明石警察署による突然の逮捕 「被疑者ノート」には「ママにあいたい」
去年2月、バレンタインデーの行事で、利用者が隣の人に噛みつくのを止めたところ、別の利用者が「虐待だ」と市役所に通報。
6月になって、るなさんは別の男性スタッフと共に暴行の疑いで明石警察署に逮捕されました。
るなさんの「被疑者ノート」には取り調べの状況と、悲痛な思いが記録されています、 「あごを すうかい たたいたか きかれました 本当はやったんだろう しょうじきに 言えなど」「私は本当にやっていません」
(「被疑者ノート」より)
ノートには、涙でにじんだ跡も。
「ママ 大好き 早くあいたい」「ママと行きたい あいたい 自由になりたい」
■衰弱する中でも「頑張る」 しかし、釈放の5カ月後に死去
るなさんは、勾留された18日間で摂食障害を起こし、体重は激減。
男性スタッフと共に不起訴となって釈放されたものの、PTSD=心的外傷後ストレス障害と診断されました。
【るなさんの母親】「もう立てない、車椅子、おむつ、(食べても)全部流れてしまう。そんな状態でもずっと『頑張る』と。弱音は吐いたことなかったです」
しかし、釈放の5カ月後、この世を去ります。
【るなさんの母親】「あの時多分、心臓に負担がかかったんだと思います。目の瞳孔がグッと開いて、そのまま次第に意識がなくなって、そこで『るな!』って言って『救急車!』って。 亡くなる1日前まであの子は喋ってたし、ご飯も食べたし…」
母親は今、警察と検察の責任を問うため、民事裁判を起こし、刑事告訴もしています。
■明石警察署に“人違い”で逮捕された男性が語る家宅捜索と逮捕
去年7月、同じ明石警察署に逮捕された人がいます。 木下弘明さん(仮名)は、「人違い」で逮捕されたというのです。
木下さんは専門学校の講師で、九州から神戸に引っ越してきたばかりのころ、自宅に不審な黒い箱が置かれ、郵便受けには「TAKAHASHI(タカハシ)」と書かれたシールが貼ってありました。
そのままにしていたところ、突然警察官がやってきたといいます。
【木下弘明さん(仮名)】「普段のように家でパソコン作業をしていたら突然ドンドンドンとドアを叩く音がして、窓から男の人が『玄関を開けろ』というふうに言ってきて。 玄関をガチャっと開けてガーッと10人ぐらい入ってきて、そこから『動くな』ということで、家宅捜索が始まったという感じですね」
■17日間勾留も後半になると“雑談”
逮捕容疑は、アメリカから自宅宛てに麻薬を密輸し、途中の関西空港で発見された、というもの。
宛先の名前が、同じ「ひろあき」だったといいます。 木下さん(仮名)の「被疑者ノート」には「全く身に覚えはないし、そんなのやってません!」「お前ウソつくとヤバいからな」という取り調べのやりとりも記録されています。
【木下弘明さん】「何で逮捕されたのかも、証拠ももちろんないですし。 ただ、誰かから仕組まれた場合、例えば家に薬物とかを隠されていたとか、そうした場合に、本当にやってなくても有罪になるという心境で、ちょっと不安はめちゃくちゃ大きかったですね」
勾留は17日間に及び、薬物の知識や海外の渡航歴などを聞かれましたが、後半になると、雑談ばかりに。
■不起訴となったものの「誤認逮捕」と認めず
そして結局、不起訴となり釈放されますが、その際の捜査機関の対応を鮮明に覚えています。
【木下弘明さん】「突然『ちょっとこっちに来い』と別の部屋に呼び出されて、釈放届みたいな感じの紙をポーンと見せられて『出ていいよ』という感じで釈放された。 また何週間か経ってから検察の方に呼ばれて『嫌疑不十分』なので、完全にシロではないという判断だったのかな、という感じですね」
警察も検察も「誤認逮捕」とは認めず、謝罪もなかったといいます。
■小6女児 親と引き離され3時間半の“取り調べ”
おととし2月、別の少女も明石警察署で事情聴取を受けました。
当時、あまねさん(仮名)は小学6年生。母親と引き離され1人で聴取を受けました。
警察が疑ったのは、同級生の男の子への「わいせつ行為」。女の子が数人で、「男の子の陰部を触った」というのですが…。
【あまねさん(仮名)】「私が覚えてないだけであるんじゃないかな?っていうので、めっちゃ不安になって、でも自分的にはそんなことやった覚えもないし」
やった覚えのないことについて、警察官の聴取が続きました。
【あまねさん(仮名)】「『この紙にやったこと書いてね』みたいなことを言われて、そこに自分的には下半身を触ったっていう認識じゃなくて、もしかしたら当たったかもしれないみたいな感じだったので、それを言ったんですけど」
【あまねさん(仮名)の母親】「『叩いたも触ったも同じだから、触ったと書いて』って、その時の女性警察官が言ったそうなんです。 自分としては叩いた。こう叩いた。鬼ごっこだからこうした(“タッチ”した)イメージだったんだけど。でも女性警察官はずっと『触った触った』って言うんだと」
■“わいせつ行為”そのものが存在しない可能性 子どもに謝ってほしいという母親の声に明石署は「何もできない」
聴取は夜にかけて3時間半。正面や横顔など6枚、容疑者のような写真も撮られました。
親の承諾のない写真撮影は、警察庁が通達で禁じています。
【あまねさん(仮名)】「自分の性格的に『泣いたら負けだ』と思っちゃうところがあって、それが余計怪しまれる様子だったのかなとか思っちゃうんですけど、『泣いたら負けだ。大人に泣き顔とか見せたくない』って思って、泣くのを我慢してました」
最初は娘を疑った母親でしたが、親子で「法テラス」=弁護士の無料相談に出かけたところ、警察の行為が不適切だったと初めて知ったといいます。
その後、わいせつ行為自体がなかった可能性が高まったのです。
【あまねさん(仮名)の母親】「『謝ってやってほしい、取り調べを受けた3人の女の子に、悪かったねって言ってやってくださいよ』って言うんだけど、『それはできない。おうちの人に言ったんだから、もういいでしょう』、おっしゃったんですよね。 『これ以上、明石署ではできない、何もできないんだ』っておっしゃるので、私たちはもうどうしようもなく」
■るなさんの勾留を2回延長したT検事 不起訴理由の開示にも応じず
るなさんの死亡については、検察にも厳しい目が注がれます。
神戸地検のT検事は、裁判所に却下されたにも関わらず、るなさんの勾留を2回延長していました。 T検事とは、どんな人物なのでしょうか。
【るなさんの母親の代理人・佐々木正博弁護士】「それ以外の事情や証拠は聞き入れない、見ない。そのストーリー1本でゴールまでたどり着こうとしているって印象は、この検事には強く感じました」
母親の代理人が、るなさんを不起訴にした理由の開示を求めても、T検事は「諸般の事情を考慮して致しません」の一点張り。「捜査の裏側」は、秘密のベールに包まれています。
■取材申し込みに警察・検察はゼロ回答
兵庫県警と神戸地検に取材を申し込んだところ…。
兵庫県警は「個別の事件の詳細については、回答を差し控えます」 「なお、事案1(るなさんの件)については、係争中の案件であることから、県の主張は裁判で明らかにしていきます」と。
そして神戸地検は「亡くなられたことについてはご冥福をお祈りするが、個別事件における捜査の具体的内容に関わる事項であり、コメントは差し控える」としたのみです。
■通報した利用者から届いた手紙「うそをついてしまって、すいませんでした」
るなさんが亡くなった後、遺族の元に一通の手紙が届きました。
「虐待があった」と通報した、当時の利用者からでした。
【通報した利用者の手紙】「オーバーに言ってしまった。ぎゃくたいかどうか分からないのに、ぎゃくたいとして伝えてしまった。うそついてしまって、すいませんでした」
通報は虚偽でした。それが分かっても、るなさんは帰ってきません。
【るなさんの姉】「その方に罪はないとは言いません。ですが、やっぱり警察の方がそこを確認しなかったというのが、私は一番許せないです」
その場にいた大勢の人たちに、警察は確認をしていませんでした。
通報者の手紙が、遺族の心を掻きむしります。
■身に覚えない“わいせつ疑い”で事情聴取受けた少女「やられた人にしか分からないと思う」
ことし6月にはもう1通、別の手紙が届きました。
「『何日も続けば、死んでしまってもおかしくないよ。やられた人にしか分からないと思う』、娘はニュースを見ながら、そうつぶやいていました」
明石警察署の取り調べを受けたあまねさん(仮名)の母親からでした。
【あまねさん(仮名)の母親】「1年ちょっとの間でまたこんなことが起きている。3時間半だって娘は本当に苦しかったわけだから、18日間も親から離されて、やってもないことをひたすら聴き続けられたるなさんの気持ちを思うと、お家の人を思うと、本当にもう胸が苦しくなったんですよね」
■「悪いことしてない。謝ってほしい」と言い続けたるなさん 真相究明のために戦う母親
【るなさんの母親】「こういうことが知られていないだけで、たくさん日常にあるということが、私も初めて知って。 るなは『悪いことしてない。謝ってほしい』と言い続けていたので、彼女が普通に思うことをしてあげたいなと私は思う」
母親は今、警察と検察の責任を追及しています。真相の究明へ、母親は戦います。
(関西テレビ「newsランナー」 2026年8月20日放送)