スズキの正規販売店でトラブル再び 「全額支払うと早く納車できる」「全額支払うと安くする」と言われ 代金支払い車は届かず… 行方が分からなかった社長を“直撃取材” 2023年08月31日
新車の購入代金を支払ったのに納車されない!?大阪・泉佐野市にあるスズキの正規販売店が購入者に告げず破産していました。何があったのか?雲隠れしていた社長を直撃。
メーカーが正規と認めた大阪の販売店で起きた“納車トラブル”の実態とは?
■大阪の“正規”販売店で新車購入も…納車されず
大阪府泉佐野市のスズキ泉州販売店。いくつもの自動車販売店が並ぶ、国道26号沿いにあります。
【記者リポート】
「ありました!スズキの看板です。店内の電気は付いていないようです。閉店のお知らせの張り紙がありました。“破産手続の申し立て準備中”と記載があります」
ここで新車を購入した人たちが、代金を全額支払ったにもかかわらず納車されない事態が起きています。
「僕、自動車販売店がつぶれると思わなかったからね。まわりで噂もなかったし」と語るのは自営業のAさん夫妻。
近くにあるスズキ泉州販売で、2023年3月に、人気車種スズキワゴンRスマイルを購入する契約を結びました。その時、販売店から言われたのが…
【Aさん】
「早く振り込んでくれたら早く納車できますよって言われたんですよ。え、そんなもんなん?って」
車の購入契約を結ぶとき、最初は頭金のみを支払うのが一般的です。しかし、一度に全額支払うと早く納車されると思ったAさんは、契約後すぐに全額およそ200万円を払って、納車を待ちました。
しかし…Aさんの元に届いたのは、車ではなく破産手続きに入ることを知らせる書面。慌ててAさんは自分の車がどうなっているのか、様々な関係先に問い合わせをしました。
破産したスズキ泉州販売は、メーカーのスズキ、そのスズキ直営の代理店(ディーラー)のスズキ自販近畿と契約を結ぶ、正規の販売店(サブディーラー)です。
客から新車の注文が入ると代理店を通してメーカーに発注、新車はメーカーからでき上がるといったん、代理店に納品されます。
Aさんは代理店のスズキ自販近畿に問い合わせたところ、ちょうど数日前に車が代理店にまで納車されていたことが分かりました。
車が何とか手元に届く!と喜んだAさんでしたが…
【Aさん】
「(スズキ自動近畿に)車の代金は入ってきてないって言っていました。どうもなりませんって。お金払ってくれたら(車を)出せるけど、お金がうちに入ってこない限りはその車はよそに売ってしまうと」
Aさんが5カ月前に払ったおよそ200万円は、販売店のスズキ泉州販売から代理店のスズキ自販近畿に入金されておらず車は渡せないというのです。
その後、弁護士や国民生活センターにも問い合わせましたが、どうすることもできないと言われ、泣き寝入りの状態です。
■他にも被害者が! 全額入金したのに納車されず 長年信頼していたのに…
被害に遭った人は他にもいました。
Aさんよりさらに4カ月前の、2022年11月にワゴンRスマイルをスズキ泉州販売で購入したというBさんです。この店で購入したのには理由がありました。
【Bさんの妻】
「近いし、知り合いのお店だったので。続けて2台買ったんですね。もうその後も車検だったり、修理メンテナンスを頼んでいたので、すごく親しくして。私たちはすごく親しみを持って付き合っていました」
10年以上の付き合いがあった販売店で、「全額をすぐに支払うと安くする」と言われたBさん夫妻、契約後すぐにおよそ180万円を何の疑いもなく支払いました。
納車予定は2023年2月でしたが、半導体不足やウクライナ情勢を理由に納車が遅れていました。そんなとき…
【Bさんの妻】
「5月か6月か忘れたんですけども、偶然私が(前回の『ツイセキ』の放送を)見ていまして」
「newsランナー」の「ツイセキ」での報道を見て、Bさんは自分たちも車の代金を全額支払ったにもかかわらず、納車が遅れていることに不安がよぎりました。
【Bさんの妻】
「半年以上待たされているので、ちょっと不安になって、聞きに行こうかって行ったら、全員いてたんです、社長も店長も他の従業員も。『でもうちは…』っていう風にもう全員がとぼけていました」
長い付き合いのある販売店。信じていた結果がこれでした。
【Bさんの妻】
「何が起こっているかも分からなくて、私たちは安くしてもらえるから、そこで買ったんではないんです。長いお付き合いなので、『車買うならそこ』、『車買うならもうスズキ』って買っているので。最初からもうだますつもりだったのではとしか思えなくて。本当にショックでした」
■倒産した“販売店” 音信不通の社長を直撃 被害者への謝罪の言葉は?
車を渡さないまま、突然の倒産。そもそも“販売店”とされるスズキ泉州販売はどのような会社なのか…
取材によると、22年前、先代の父親からスズキ泉州販売を引き継いだのが60代ぐらいの女性の社長。従業員は店長と整備士や事務員が数人。社長も自ら接客を行っていたといいます。
社長を知る人物に話を聞くことができました。
–Q: 派手にお金を使う感じの人?
【社長を知る人】
「ではないです。(Q. 旅行とかギャンブルとかに使うような?)全然ないと思います。どっちかっていったら地味っていったらあんまりあれですけど、誰も社長って気付いてないぐらいの感じなので」
後日取材に応じた代理人の弁護士によると、破産手続きの相談があったのは7月。負債総額は1億円ほどで、Aさんらのように車が未納になっている客は20~30人に上っているとみられ、会社の資金繰りがうまくいかなくなったということです。
ツイセキ班が現地で取材を続けていたところ…突然、店に販売店の社長が現れました。7月の閉店以降、行方が分からなくなっていた人物です。
【記者】
「すみません。関西テレビの者なのですが、社長でいらっしゃいますか?」
【社長とみられる人物】
「いえ、弁護士に聞いてください」
【記者】
「社長にお話を聞きたいので。購入者に対してどうされるおつもりか、後ほど取材にお応えいただけるかだけでも、教えていただけませんか」
社長は問いかけに答えず、店舗に入っていきました。
社長は代理人弁護士らと、破産手続きのために店舗に来ていました。代理店のスズキ自販近畿の関係者も現れ、次々とスズキの備品を運び出していきます。
社長が来ていると聞きつけた被害者も、この場に駆けつけました。
「お金全額返してよ!」「謝れ!」と訴える被害者の声に対し、社長から謝罪や釈明の言葉はありませんでした。
■代理店に救済を求めるも…「別会社だから」と現状把握しようとせず
メーカー・スズキ直営の代理店が、正規に認めた販売店・スズキ泉州販売の破産。Bさんはわらにもすがる思いで、スズキ自販近畿(代理店)に直接話を聞きに行きました。
【Bさん】
「(11月に注文した)車台番号はあがっていたんですか?」
【スズキ自販近畿(代理店)担当者】
「もちろんあがっています」
【Bさん】
「そしたらその車をもらうことはできないと?」
【スズキ自販近畿(代理店)担当者】
「そうですね。うちにも(スズキ泉州販売から)お金が入ってないので」
【Bさん】
「『何でスズキお金持ってこないねん』って疑わないのか?と思う」
【スズキ自販近畿(代理店)担当者】
「だいぶ僕らも催促はしていました。お客さんが奈良の(販売店の)事件があったからお金くれないんやと。僕はお客さんからお金をもらってないと思っていた」
【Bさん】
「経営状態を調べたりしないんですか?」
【スズキ自販近畿(代理店)担当者】
「絶対それはできない。やっぱり別の会社なので、もし中身が悪くても僕らにはそれは絶対見せないと思う」
メーカーのスズキが客に新車を売ることを正規に認めた販売店ですが、あくまで別会社だからと現状を把握しようともしていませんでした。
■親会社が書面で取材に応じる “販売店”との関係に問題は?
関西テレビ取材班がスズキ自販近畿に取材を申し込むと、親会社スズキの広報が書面で取材に応じました。
【書面】
「スズキ自販近畿は、今後も引き続き誠意ある対応をするよう求めてまいります。今回被害に遭われたお客様からご相談をお受けした際は、ご協力できることがあれば検討してまいります」
その上で、販売店との関係性に問題はなかったのか問うと…
–Q.奈良県に続き御社の子会社が契約する副代理店(認定販売店)が招いたこのような事態について、今後対策を講じる必要はないと考えていますか。もしくは対策の予定はありますか。
【書面】
「弊社では、スズキ製品をお選びいただいたお客様にご迷惑をお掛けすることが起きないよう、販売店様にご協力いただけるよう、繰り返し国内販売代理店を指導してまいります」
■奈良の次は…大阪 相次ぐトラブル “正規販売店”で買うメリットとは?
「新車を買ったのに納車されない」という問題について、3カ月前に奈良県内の正規販売店で起きた問題を番組でお伝えしました。同じことが今回、大阪でも起きてしまいました。
被害者のAさんは「早く納車されるから買った」と話し、被害者のBさんは「親しくしているから買った」と話していました。
“販売店”で買うメリットとは何でしょうか。簡単にまとめると「安い・近い・手厚い」が考えられます。
【関西テレビ 神崎博報道デスク】
「車体価格の仕入れ値そのものは、正規代理店(ディーラー)のほうが安いのですが、トラブルがあった販売店(サブディーラー)などは価格競争をしているので正規代理店と比べ安く売ることが多くあります。また、販売店は近所にあることが多く、正規代理店と違って電話をしたらすぐに駆けつけてくれ、他社メーカーの車の修理など“町の車屋さん”としてお付き合いができることも。購入価格が安くなるから販売店が魅力的ですが、今回のようなリスクがあることも知っておくことは重要なようです」
(関西テレビ「newsランナー」2023年8月31日放送)