『シン外来生物』相次いで現る! 街路樹に無数の穴…驚異の“繁殖力” 街に潜んで増殖中 人々の暮らしに迫る“脅威” 専門家「スーパーな生物…小さくても、侮るな!」 “大迷惑”な外来生物を食い止めろ! 人間 VS 外来生物たち 2022年08月05日
ある外来生物が原因で、伐採を余儀なくされる大量の木々…
そして、住民を悩ませる不可解な現象。
人々の暮らしに迫る外来生物の脅威。
その正体をツイセキします。
■緑豊かな住宅地に異変が!? 木の幹に無数の穴… 一体なぜ?
神戸市の六甲アイランド。
緑豊かで、多くの住宅が立ち並ぶエリアで、ある異変が…。
【川崎晋平記者 リポート】
「見てください、こちらの木だけ明らかに他の木と比べて穴だらけで。枯れているような状態であることがわかります」
木の幹に無数に空いた穴。
神戸の六甲アイランドには、他にも穴だらけになって枯れたたくさんの木が。
異変のワケとは…。
【神戸市・自然環境課 岡田篤課長】
「あ、いた!…ほぼ間違いないです。ツヤハダ(ゴマダラカミキリ)だと思います」
岡田さんが虫取り網で捕まえようと…
【神戸市・自然環境課 岡田課長】
「あ、入った。奇跡的に入った」
体長およそ3センチのこの虫は、”ツヤハダゴマダラカミキリ”。
中国原産といわれ、世界の侵略的外来種ワースト100にも選ばれています。
20年前に横浜で日本国内で初めて見つかって以来、長らく確認されていなかったこの外来生物。
2021年に神戸の六甲アイランドで大量発生していることが分かったのです。
ツヤハダゴマダラカミキリは、木に産みつけた卵から孵化した幼虫が中を食い荒らし、木を枯らしてしまうのが特徴です。
幹に空いた無数の穴は、成虫が木の内部から外に飛び出す際にできたものでした。
【神戸市・自然環境課 岡田課長】
「木の幹も皮がはがれてボロボロになっていたり、幼虫が食べたような痕もあります。ツヤハダゴマダラカミキリが食害をした木の特徴ですね。放っておくと木が倒れて危ない状況になってしまいます」
■木を切るしか…ない? 厄介な…“ツヤハダゴマダラカミキリ”対策
この虫、ツヤハダゴマダラカミキリの厄介なところは…国立研究開発法人 森林研究・整備機構「森林総合研究所」の加賀谷さんに話を伺いました。
【森林総合研究所 加賀谷悦子氏】
「成虫が出てくる丸い穴が確認されて、ようやく、これは“ツヤハダゴマダラカミキリ”にやられてしまったんだ!と初めて分かる。『どの木を守っていけばいいのか』というのが、まず分かりづらい。切る以外の手段も整っていないため、対応が難しいと考えられている」
幼虫の段階では、大きな穴などの目に留まりやすい“異変”がないため、幼虫がいる木だけを狙って薬剤で駆除するのは困難。
気付いた時には、伐採するしかないほど木を食い荒らされてしまっているのです。
六甲アイランドでは2022年、これまでに被害にあった木を中心に400本以上を伐採しました。
しかし…。
神戸市の担当者が辺りを少しパトロールしただけで、すぐにツヤハダゴマダラカミキリを発見…
【神戸市・自然環境課 岡田課長】
「まだまだかなりの数がいると思います。きりがないですね…根絶への道はなかなか長いですね」
【森林総合研究所 加賀谷悦子氏】
「外来種というのは侵入先では病気や天敵が少なくて大変増えやすい。根絶のために重要なことはエリアのどこで被害が広がっているのかを調べるということ。スピード感をもって対策に取り組むのが非常に大事」
■AI(人工知能)アプリを活用 市民協力で「被害エリア」を把握へ
そこで神戸市は、市民の協力を得て被害の範囲を正確に把握しようと、生きものの写真を投稿できるアプリと連携を始めました。
【バイオーム 多賀洋輝氏】
「アプリで投稿される写真には、位置や時間の情報が含まれている。赤く示しているところが(ツヤハダゴマダラカミキリが)実際に見つかっているところ」
さらなる被害拡大の恐れに、危機感が募ります。
【神戸市・自然環境課 岡田課長】
「今のところは六甲アイランド、東灘の一部にとどまっている状況。どんどん市内全域に広がると樹木や果樹への影響が出てくる。非常に懸念をしているところ」
■ほかにも“襲来中”の外来生物 誰もいないのにインターホンが鳴る不可解現象
生活を脅かす外来生物はツヤハダゴマダラカミキリだけではありません。
兵庫県伊丹市に住む加藤さんの家では、不可解な現象が数年にわたって起こっていました。
【加藤裕一さん】
「しょっちゅう『ピンポンピンポン』って鳴りまして。モニター見ても誰もいないし来てもいないということが続いて…てっきり“いたずら”かなと思ったんですけど…」
インターホンを鳴らしていたのは…。
【加藤裕一さん】
「ドライバーで(インターホンの中を)開けたらアリがいっぱいで。コードの中にアリがいっぱい入り込んでるという状態」
なんと、正体はアリでした。
体長2~3ミリと、国内に生息する主なアリより一回り小さな体で動き回るのは、特定外来生物の”アルゼンチンアリ”です。
1990年代に日本に侵入し、全国各地で確認されているこのアリは、今も伊丹市内で大量に発生しています。
アルゼンチンアリが脅威とされる理由は…
【伊丹市昆虫館 長嶋聖大 学芸員】
「アルゼンチンアリの恐ろしいところは爆発的に繁殖力があるところ。(女王アリ)1匹2匹やっつけたくらいでは全く巣に影響がない。駆除が大変で、とんでもない増え方をする」
強い繁殖力をもつアルゼンチンアリ。
その小さな体で”あらゆるところ”に入り込みます。
加藤さんの家では、玄関のインターホン以外に風呂場の電気温水器にも無数のアルゼンチンアリが入り込んでショートして故障しました。
アリとの攻防は時間を問わず続きました。
【加藤裕一さん】
「個人とアリの戦いですよ、ずっと延々。(寝てるとき)たまに付いてますから。布団に入り込んできて」
■伊丹空港でもアルゼンチンアリを発見! 人間VSアリ…「防衛ライン」に毒エサ設置
2022年4月には伊丹空港の敷地内でも伊丹空港の敷地内でもアルゼンチンアリが発見されました。
放置すると空港内の電気系統に影響を与えるおそれもあるということで、伊丹市も対策に乗り出しています。
対策の中心となるのは、アルゼンチンアリにとって毒となるエサを置くことです。
地道にも思えますが、これが一番効果的だということです。
伊丹市は、生息地域の拡大を食い止める「防衛ライン」を設定しました。
絶対にこのラインを越えさせないという決意で、定期的にライン上に毒エサを設置しています。
伊丹市で「人間 対 アリ」の闘いが続きます。
【伊丹市・みどり自然課 高津一男 課長】
「職員は週に数日は来てます。(アルゼンチンアリは)かなり移動するスピードが速く、危ないと感じたら巣ごとすぐ移動してしまう。完全に叩き潰す前に先に移動してしまって安全なところへ逃げている可能性がある。なかなか先が見えないというか根絶は難しいなというのが実感としてある」
「しょせんはアリ?」と高をくくっている間に、根絶が不可能になるほど増殖し、人々を困らせるアルゼンチンアリ。
駆除のためには、覚悟が必要だと専門家は指摘します。
【兵庫県立大学 橋本佳明 特任教授】
「アリと人間が消耗戦やったら人間は負けます。彼らは”スーパーな生き物”です。社会性でどっちか優れているかというとアリのほうが絶対優れている。人間はみんなで協力しないと(駆除できない)。諦めたらもう負けですよ」
あなたの街にも潜んでいるかもしれない外来生物。
その対策は、困難を究めています。
(2022年8月4日放送)