【保護者】
「もうショックでショックで仕方がない。実質1年以上と聞いたから、そんなに長い間?…と。結局取り返せない時間なので」
こう憤るのは、大阪市立の小学校に通う6年の児童の保護者。
その理由とは…1年半に及ぶ別室への隔離。
児童は1年半、クラスとは別の教室に隔離され、副担任と過ごしていたというのです。
さらに、学校は保護者になんの説明もしていませんでした。
児童は当時の様子をこう振り返ります。
【児童】
「(授業は)算数と国語ばっかりで、理科、社会はタブレットで、NHKの動画とかを見たり。体育とか、実験あれば『おもしろそうやけど行く?』と聞かれて行ってたけど、そういうことも言われなくなった」
――Q:別室で授業を受けているときはどんな気持ち?
「ちょっと寂しいな。先生と2人で雑談してても共通の話題少ないし、そこまで楽しいわけではなかった」
個別指導はクラスから離れた教室で副担任と1対1、授業のほとんどは算数と国語のプリントをするだけでした。
なぜ、このような指導が行われたのか。
関西テレビの取材に、校長と教頭が応じました。
【教頭】
「当該児童の心は、休み時間に友達とのトラブルがあるとざわざわする。別の場所を確保して話を聞く、気持ちをくみとりながら整理する、それが個別の指導の形になります」
【校長】
「通常学級に入ることが望ましいし、最適だったと思うけど、ただ無理強いできないから、子どもの気持ちに寄り添って」
学校は個別指導について、「最適」ではなかったとしつつも、感情のコントロールが難しい児童のために実施していたと主張します。
背景にあったのは、児童が小学2年のときに始まった、特定同級生からのいじめでした。
【保護者】
「通りすがりにいきなりみぞおちを殴られる、言葉はなく。あとは廊下で急に背後から飛び蹴り、筆箱を投げられる」
同級生との関係から、児童の精神状態が不安定になり、授業に集中できない状態が続いたといいます。
保護者はトラブルとなっている同級生と離れて授業を受けさせることを求めましたが、この学校には1学年に1クラスしかありません。
そんななか、学校が提案したのは、障害のある児童を対象にした「特別支援学級」での指導です。
児童に知的な障害がないことなどから、保護者は再三にわたる提案を拒否しました。
その後、4年生になると児童のトラブルは少なくなり、安心していた保護者ですが、5年生になったころから少しずつ違和感を覚えるようになります。
【保護者】
「同学年の子と遊ぶということが一切なくなった、そこからおかしいなとは思ってた。今年の2月に体調を崩して、学校に行ってる時のことを聞いて友達に会った?とか誰かと話した?とか聞くと、『いや、誰にも会ってない』何でと聞くと『別の個室にいるだけで友達には一切会ってない』って言うんで」
なんと、保護者の知らない間に児童は別室に隔離されていたのです。
その間、およそ1年半。
なぜこんな事態になってしまったのか、学校の認識を聞くと…
【教頭】
「保護者の意見も尊重したと私は考えている。特別支援学級への入級は考えなかったし、お父様の気持ちもよく分かったし。それ以外で学校としてこの子にできることは何かと考えて、この子の『困り感』をなんとか解消するために、いろいろと策を練ったと」
個別指導は「特別支援学級」ではなく、「普通学級」で行ったと主張する学校。
そもそもなぜ、保護者の同意を得なかったのでしょうか。
【校長】
「当該児童も家で父親と話して、学校の様子も伝わっているから、当然日々の学校生活についても伝わっているのかなと思っていた。それが今回、子どもがどういう状態か(父親が)全く知らなかった、僕自身も驚いた」
学校は、「児童が保護者に話すと思っていた」と言います。
「児童のため」と始まったはずの個別指導。隔離されていた本人が望んだことなのでしょうか?
――Q:別室での個別指導の申し出はどちらから?
【教頭】
「子どもです。まず子どもが『僕に寄り添う人、僕の気持ちを分かってくれる人をつけてほしい』と。困っている子どもがそこにはいる。子どもの『困り感』を取っ払って、学習に向かうべき姿に向かわせてやりたいと」
しかし、本人に聞くと…
【児童】
「教頭先生が(僕が)イラっとしたときに、『こっちの部屋行き』って紹介されて、イラっとしてないときも、『行こ行こ』と言ってきて。はじめは無理って断ってたけど、結構しつこくなって、面倒くさくなって、もういいやって」
『児童からの申し出』と主張する教頭に、『教頭からの執拗な勧誘があった』と言う児童。
どのような思いで1年半の月日を過ごしていたのでしょうか?
――Q:戻りたいとは思わなかった?
【児童】
「ちょこちょこ、たまに。戻らんで大丈夫なんかなとか、寂しいなとか思ったりします。どうせ言っても無理やろなと思いこんだり」
――Q:普通の教室になぜ戻れないと思った?
「勉強できないみたいな感じになってた、先生が言うには。プリントも次進みたいと言っても、『まだここやっとき』と言われて、自分が頭悪いから次に進まれへんのかなと思ったりして」
児童は保護者の指摘で、現在はクラスに戻りましたが、1年半の隔離により、学習面での遅れが目立っているといいます。
この問題に市教委は…
【大阪市教育委員会 担当者】
「子どもの特性や心身の状況に応じて、このような個別指導、個別支援を行うことはあることなんですけども、ただし、保護者への説明が必要であったということは、教育委員会としても認識しておりますので、不適切であったと言わざるを得ない」
大阪市の松井市長も、記者団の取材に対し…
【大阪市 松井一郎市長】
「これは不適切だと思う。私が市教委に話したときに、その情報がなかったのも大問題だと思う。まずは子どもたち、保護者に寄り添った対応をするようにと市教委に伝えた」
1人で過ごした、1年半の学校生活。
市教委は弁護士などで構成される第三者専門家チームを学校に派遣し、児童のサポートに努めるとしています。
――Q:個別指導と教室に戻った今どっちがいい?
【児童】
「戻ってるときの方が、教室におる方が楽しいです。ゲームの話とかは先生はできないけど、友達ならゲームとかアニメの話とかいろいろできるから楽しい、みんなといる方が」
児童が安心して学べる環境づくりが急がれます。
(関西テレビ「報道ランナー」2022年5月19日放送)