いじめ被害の訴えが届かない 学校で作られる「事実と異なる報告書」 欠席理由がいつの間にか「コロナ不安のため」 神戸市で問題相次ぐ 「学校なんか行かせなければ良かった」と保護者 2023年11月23日
神戸市の小学校がいじめを受け不登校になった女子児童について、教育委員会にうその報告をし、「重大事態」の認定が遅れていたことが分かりました。
神戸でいじめ被害の訴えが届かないのはなぜか。教育現場では何が起こっていたのでしょうか。
10月、神戸市で自ら命を絶った中学3年生の男子生徒。息子を亡くした母親は、そのやりきれない思いを、語気を強めて語りました。
【自殺した男子生徒の母親】
「こうなることが誰も分からないなら、学校なんか行かせなければ良かった。もっと学校がこうすべき、教育委員会がこうすべきということは、たくさんあると思うんです」
いじめの被害を学校に訴えていましたが、詳しい調査は行われていませんでした。今、こうした悲劇が繰り返されようとしています。
■学校が話し合いの場を設けるまでに3年以上の月日
今年3月まで神戸市立の小学校に通っていたみずきさん(仮名・13歳)は、4年生だった2020年6月ごろから、同級生3人から無視されるなどのいじめを受けました。
【みずきさん】
「なんでこういうことするんだろうとか。私は一緒に楽しく遊びたいから声をかけたのに、なんで嫌そうな顔とかされないといけないんだろうって思いました。すごくつらかったです」
もともと学校が好きで友達が多い女の子でしたが、いじめが始まってからはふさぎ込むことが多くなったと言います。
母親は担任に相談していましたが、後から聞くと、1年もの間、何も動いていなかったことが分かりました。
【みずきさんの母親】
「担任の先生は娘が休み時間の間に嫌なことがあっても、“もう自分で気持ちの切り替えをしているから大丈夫だと思った”と。(担任は)本人とは全く話をしていないです」
何も解決しないままいじめは続き、1年以上経った5年生の10月、みずきさんの体調に異変が起きました。
【みずきさん】
「途中から朝起きられなくなって。お昼になってやっと動ける日が多くて。どんどん(学校に)行けなくなって。頭痛いし、お腹も痛いし、だるいし」
自律神経系の異常で起こる「起立性調節障害」だと診断されたのです。学校を休みがちになり、次第に、生きていくことが辛いと考えるようになりました。
【みずきさん】
「薬を、ネットで調べた致死量分を飲んだことがあって。解熱鎮痛剤を40錠飲みました。(Q.その時はどういう気持ち?)なんか、死んじゃおうかなって思ったり。今死んだら、私のことを調べられて、やっとまともな捜査がされるのかな(と思った)。遺書を書いていました。この時に、実際にインターネットで自殺スポットを調べていて」
追い込まれたみずきさんをさらに苦しめたのは、学校の対応でした。
文部科学省のガイドラインでは、いじめが原因で年間30日ほど欠席すると「重大事態」と認定され、詳しい調査を行うとされていますが、みずきさんは5年生の1月時点で65日欠席していたにも関わらず、認定されていませんでした。
それは一体なぜなのか、母親が学校に問いただすと、驚きの事実が判明しました。
母親は学校に「いじめによる病気が原因」で欠席していると伝えていましたが、当時の校長が、欠席理由を「コロナ不安のため」と教育委員会に報告していたことが分かったのです。
【みずきさんの母親】
「コロナ不安になっているから。理由がいじめじゃないから(重大事態に)認定できないと説明を受けまして。一言で言うと、信用できないな(と思った)」
年度が替わり、新たに赴任してきた校長が調査をはじめ、6年生の10月になって報告書が完成しました。しかし、いじめの一部は認められたものの、欠席理由の変更には触れられていませんでした。
さらに、「いじめの原因が自分なら改善する」と、みずきさんが言ってもいないことを発言したかのように書かれていたのです。
【みずきさん】
「“これから改善していくつもり”と書いてあって。確かに、その時の私に悪い部分はあったのかもしれないけど、一言もそんなこと言ってないのに書かれていて。学校とか自分の立場を守るための保身みたいな感じで、自分のいいように捉えていて、私の言ったことを全部。本当に先生なのかなって思いました」
文部科学省のガイドラインでは、市長に報告をする際、被害児童と保護者に対して調査結果への所見を添えられることを伝えるとしていますが、報告書はいつの間にか市長に報告されていました。
報告書の訂正を求め続けて1年。今年10月、ようやく学校側が話し合いの場を用意しました。
いじめ発生から、すでに3年4カ月が経っていました。
■事実と異なる報告書 学校側の説明は?
10月11日に行われた、学校との話し合いの音声が残っています。
【校長】
「私は嘘を書いている部分が自分的には何もないと思っています。これ(報告書)は9割お母さんのお話に沿って作っています」
調査を行った校長は、聞き取りの通り報告書を作ったと主張。「コロナ不安」ではなく、「いじめによる病気」で欠席していたと訂正を求めても…。
【教育委員会】
「僕が聞いているのは、もともと(みずきさんが)長く休まれるようになってしまった理由は、コロナの不安であったとか」
【みずきさんの母親】
「それが違うんですよ」
【教育委員会】
「3月の中旬になって、お母さんの方から、いや、実は…」
【みずきさんの母親】
「違います。これ、うそです。事実と違います」
話し合いは3時間半に及びましたが…。
【教育委員会】
「納得されないところは山ほどあると思うんですけど、そういったことで対応したことは理解いただけたら」
その後、教育委員会は弁護士などの第三者を入れて、学校の対応を含めたいじめの再調査を行う方針を示しました。
なぜ、これまでみずきさんに寄り添った対応がされなかったのか…。取材班は情報公開請求でいじめ対応の記録を入手しましたが、ほとんどの内容は隠されていました。
今回の対応について、学校と教育委員会に取材しました。
■学校と教育委員会の対応…肝心の質問には「調査に影響が出るので」
10月7日、神戸市立小学校の校長と、神戸市教育委員会の課長に、問題について話を聞きました。
【神戸市立小学校 現校長】
「我々としては誠意を持って対応してきたつもりなんですけれども、寄り添えなかった部分があるのは大変申し訳なかったと思っております」
神妙な態度を取る校長でしたが、記者の質問に対し「今後の調査に影響が出るため答えられない」という答えに終始するのみでした。
Q.質問に対して1%も答えていませんよね。なぜですか?
【校長】
「うーん…」
首をかしげ、そのまま沈黙してしまいました。
さらに、一連の対応について教育委員会に問うと…。
【神戸市教育委員会 課長】
「ガイドラインの趣旨に則って対応していると認識しております」
1時間半に及ぶインタビューの間、「今後の調査」という発言が57回、「ガイドラインの趣旨に則った対応」という発言は17回ありました。
神戸市の久元喜造市長は、10月15日の会見で「調査報告書は教育委員会が作成するものですから、中身について市長は関与できない。関係者の間で理解が進むような調査を行っていただきたいですし、報道にあったような事実があったかどうかも次の調査で明らかにしてほしい」とコメントしました。
なぜ学校はいじめの「重大事態」を認めるのが遅れる傾向にあるのか。専門家は、学校が「重大事態」と認定するのを、躊躇する理由があると指摘します。
【名古屋大学大学院 内田良教授】
「そもそも、大事として捉えたくないという学校側の考え方があります。また、当然それを認定してしまえば、さまざまな調査や対応が必要になってきますね。今、教員の長時間労働の中で、重大事態に人員が割けない事態もあります」
内田教授は、教職員だけでは対応しきれない現実があるとして、初期段階から専門知識を持った人が介入していくべきだと考えています。また、学校と教育委員会の特殊な関係性が、責任の所在をあいまいにしていると指摘しました。
【内田教授】
「各学校でどういった教育活動を行うのかは校長が決めるわけなんですね。なので、教育委員会からすれば、いじめ対応も学校にお任せしますという立ち位置なんです。一方、学校だけでは担いきれないことは、教育委員会のサポートを借りたい。学校は、教育委員会から指示を待っています、というような形になる中で、責任のなすり付け合いのようなこともよく起きます」
さらに、教育機関は独立しているべきという考え方から、市が介入することも難しく、ガイドラインを守るかどうかも、学校の自主的な努力に委ねられている現状があると話しました。
■「どれだけしんどかったか分かっていない」
みずきさんはこの春、地元から離れた中学校に進学しました。
【みずきさん】
「今でもちょっと嫌なことがあると、なんか全部が戻ってきて、すごくしんどくなって、今でも(腕を)切りたくなったりとか」
Q.今はいじめはないのに、なぜそういうことをしてしまうのですか?
【みずきさん】
「完全に解決されていると思えなくて。なんでそんな時間をかけてやるんだろうと思います。時間をかけている間に、私がどれだけしんどかったか、絶対分かってない」
いじめの対応を巡る問題が続く神戸市。
「もうこれ以上、苦しむ人が出てほしくない」。みずきさんは、そう願っています。
(関西テレビ「newsランナー」 2023年11月13日放送)