暑い時もあれば寒い時もある“電車内の空調” 快適温度の調整に各鉄道社が苦慮 乗客が自ら快適な乗車位置選べる「車内の温度分布図」 大阪メトロの取り組み 2023年08月30日
視聴者から届いた身近な疑問について、関西テレビ「newsランナー」の取材班が取材する「取材依頼届きました」。今回は、「暑い時もあれば寒い時もある“電車内の空調設定”」について取材しました。
「阪急電車の車内が暑く、他は寒いと感じる。車内温度はどういう基準で何度に設定?(大阪市・50代女性)」
快適な車内にするにはどうすればいいのか。最新技術でも難しい課題に編み出した秘策とは…?
■電車内の空調設定 各鉄道会社が“快適温度”の調整に苦慮
投稿者が他の電車よりも暑く感じたという阪急電車。関西テレビ取材班が阪急電車に問い合わせてみると、車内の冷房は一律で「26.5度」に設定しているとのことです。それほど高くは思えませんが、他の鉄道会社と比べてみると、JRや大阪メトロは23~25度で、京阪・近鉄・南海は26度です。
阪急電車が一番高い温度に設定されていました。阪急電車は、体温調節が難しい高齢者など「寒い」と感じやすい人に合わせているそうです。
一方、取材を進める中である現実を知りました。
【大阪メトロ・広報戦略部 角野 功さん】
「お客様の声が届いている中の約1割が“暑い・寒い”の意見。季節の変わり目になると、服装や個人の温度の感じ方の差があるので、若干増える傾向」
■乗客からの相談件数の1・2位は「暑い・寒い」 大阪メトロの取り組み
たった1割といってあなどるなかれ、なんと乗客からの相談件数の1位・2位が「暑い・寒い」に関するものだというのです。鉄道会社は車内の温度調整には苦慮していました。
大阪メトロでは、基準の温度はあるものの乗務員が時間帯や外の気温、走るエリアなどによって車内の温度を微調整しています。
【大阪メトロ・乗務員】
「通勤通学時間帯や雨の日は、温度調整を心掛けてやっています。地上部・地下部があったり、各駅に止まって扉が毎回開閉するので、車内温度を一定に保つのが難しくて苦慮しながらやっています」
さらにこんな取り組みまで…
【大阪メトロ・乗務員】
「実際に乗務員が列車に乗って、空調を調査しに行く取り組みもやっています。調べた温度調査(の結果)を掲載して(乗務員同士で)共有しています」
■戦前の昭和11年初の「冷房設置」寒すぎるとの声で…現在の「弱冷車」に
各社が頭を悩ませている車内の温度調整。実は、今に始まったことではないようです。そもそも電車に冷房が設置されたのは、昭和11年。南海電鉄が日本で初めて「冷房車」を導入しました。
なんと戦前からあったというのです。その後、各社でも導入が進み、夏は蒸し風呂状態だった車内が一気に快適になりました。
しかし、そこで出てきたのが「寒すぎる」という声。そこで昭和59年、京阪電車が日本で初めて導入したのが今ではおなじみとなった「弱冷車」でした。
最近では車両ごとに温度を微調整できる機能や、乗車率のデータなどを蓄積し、最適な温度を提示してくれる機能など冷房の性能も進化していますが…
【街の人たち】
「ちょっと寒いかも。子どもと一緒だったら子どもも寒くて」
「(寒くても)気持ちいい。ことし暑いから良かったって思う」
暑い・寒いの感じ方は人それぞれです。
■完璧な温度調整は不可能…乗客が自ら乗車位置を選べる「車内の温度分布図」
【大阪メトロ・広報戦略部 角野 功さん】
「正直申しまして、全てのお客様に満足いただく温度調整というのは非常に難しいと感じております」
最新技術を駆使しても、完璧な温度調整は不可能です。
そこで大阪メトロがホームページに掲載したのが「車内の温度分布図」。情報を公開して、乗客自ら乗車位置を選ぶ参考にしてもらおうというのです。
せっかくなので実際の車両で教えてもらうことにしました。
【大阪メトロ・交通事業本部 井上正昭さん】
「このあたりが車両の真ん中辺りになりまして、比較的冷えるエリアになります」
多くの車両では天井の両端に冷房が、中央に送風機がついていて、涼しい空気が左右に届く仕組みになっています。
一方で、例外が車両の連結部付近です。
【大阪メトロ・交通事業本部 井上正昭さん】
「この辺が車両の端で、あまり冷えないところ。構造の問題で真ん中にサーキュレーター(送風機)が置けないという問題があり、空気が混ざらないため冷えにくくなっています」
–Q:冷えやすい所と冷えにくい所の温度差は?
【大阪メトロ・交通事業本部 井上正昭さん】
「体感によっても違うんですが2~3度ぐらいの差が出るということになっています」
実際に体験してみると…
【記者リポート】
「こちらの比較的涼しいといわれるエリアは、両側から風が吹いていて涼しいと感じるんですが、こちらに来た瞬間、風がやんで、比較的温度が上がったように感じます」
場所によって体感温度に差があることが分かりました。
【大阪メトロ・交通事業本部 井上正昭さん】
「車内の中で温度の違いがありますので、寒がりの方は冷えない場所に、暑がりの場所は冷えやすい場所に座っていただく。駆け込み乗車をすると、体感温度が暑くなったりするので、時間的な余裕をもって利用いただければ」
自分にとっての「快適さ」を感じるには、乗客側のちょっとした工夫も必要なのかもしれません。
(関西テレビ「newsランナー」2023年8月30日放送)