頭上高くつるされた染め物 伝統技法で言葉にできない滑らかさ 日本の浴衣生地の4分の1が柏原で作られていた 【兵動大樹の今昔さんぽ 関西テレビ「newsランナー」】 2024年03月22日
1枚の写真から街を再発見!兵動大樹の今昔さんぽ
【兵動さん】「JR柏原駅前からスタートです。柏原にはこれまでも『ワイン』とか『トンネル』で来たことがありますが、今回は何があるのでしょうか」
これは昭和30年代に柏原市内で撮影された写真です。どこの風景なのでしょう?
【兵動さん】「何か“ザー”と垂れ下がってる。こっちも、こっちも、何かつるしてんのかな。真ん中の川には男衆が入っていますけど。ポイントは高い所からつるされた物だよね。聞き込んでみたいと思います」
■つるされているのは「手拭いか浴衣の生地」
【街の男性】「あっ兵動大樹さん。上手ですねえ」
【兵動さん】「フルネームでありがとうございます。ほめてもうてうれしいですわ。昭和30年代(の写真)なんですけど、見たことあります?」
【街の男性】「僕は柏原生まれじゃないんですけどね、そこの川のとこやと思いますわ。こっちと、そっちと川があって、どっちかやと思う。ひょっとしたら、盆踊りに着る浴衣の生地と違うかな」
【街の女性】「染め屋さんが昔ありましたもんね。小学校で見学に行きました」
【兵動さん】「柏原の子は小学校で見学に行ったりすんねや。お二人からすばらしい情報をいただきました」
【兵動さん】「たばこ屋さんや。間口これ?」
【武田たばこ店 武田康彦さん】「宝くじ売ってるから、あんまり開けられへん。代々だばこ屋やってる」
【兵動さん】「ええやん。ここに貼ってあるのが『小さな店で大きな夢を!』。こっちには『小さなお店で大きな当たりが出ました。ロト6で2億6904万6500円』。この店から2億出てんの!」
【武田たばこ店 武田康彦さん】「(写真を見て)昔は柏原の染め物が有名で、手拭いとか浴衣にしていた。子供のころは川で流してはるのとか、上からつるしてるの見た。(つるすのは)乾かしてはるのかな。はっきりわからんけど、昔はたくさんつってるとこあった。今は外につってるのは見ないですね」
【兵動さん】「失礼ですけどおいくつですか」
【武田たばこ店 武田康彦さん】「65歳。柏原が市になったのが昭和33年10月1日で、僕の誕生日」
柏原で布地の染色が始まったのは1910年の明治後半。当初は手拭いの染色が主流でしたが、1924年ごろから浴衣の染色が増加し、最盛期には全国の生産量の約25パーセントを占めていたんだそうです。
■たばこ屋さんもお肉屋さんも、「染め物」だという
【兵動さん】「こんにちは。(精肉店の軒先に『Since1922』と書かれていて)1922年からやられているんですか?」
【西畑精肉店 店の人】「毎週(兵動さんのコーナー)見てるよ。これ(写真)あれやな、染色さんやな。川の色が変わるぐらい繁栄してたからね」
【兵動さん】「川で洗ったりしてたんや」
【西畑精肉店 店の人】「昔は公害なんて言わないから。繁栄してる証拠。昭和30年ぐらいはね」
染色にはきれいな水が必要だったため、柏原を流れる川筋にはたくさんの染色工場が立ち並んでいたのだそうです。当時は漂白した木綿を乾燥させるため、大和川の堤防で乾かす様子が見られました。
【兵動さん】「染め物に詳しい人はいます?」
【西畑精肉店 店の人】「2軒隣に手拭い屋さんがあるから聞いてみて」
てぬぐいCHILL(チル)では、オリジナルの手拭いや、CDジャケットを手掛けるアーティストにデザインを依頼した手拭いなどを制作・販売しています。
【兵動さん】「この手拭いの染めは柏原ですか?」
【てぬぐいCHILL 三上翔さん】「はい。柏原の染め屋さんを中心に染めています。『注染(ちゅうせん)』という染め方です。他はプリントが多かったりする。プリントですと色がついている所がゴワゴワになるんですけど、注染だと色が付いている部分も滑らか」
【兵動さん】「(生地を触って)滑らかで、いいわこれ。触ってもらわな分からへんな。ごっつええわ、つるつるしていて」
注染とは、生地に染料を流し込み、生地の両面を染色する技法。その時、染めたくない部分は「防染のり」で置くことで、染料が染み込まず白く残るのです。注染で染めた手拭いは、糸から染めるため生地の手触りが滑らかで、吸収性もよいのが特徴。最近では、帽子の裏地などに使うことも多く、人気なんだそうです。
【てぬぐいCHILL 三上翔さん】「(写真を見て)これは染め屋さんの『伊達(だて)』という、干し場ですね。手拭いか浴衣を干してますね。屋根がないと雨の時大変なんで、今は屋根ありが多くなっています。左側はうちも染めてもらっている染め屋さんちゃうかな。『神奴染工場(かみやっこせんこうじょう)』さんだと思います」
■伝統の「注染」の技法をいまも続ける「神奴染工場」
今回の写真は、染め物の工場で、横の川で染めた布を洗って干している様子だとのこと。教えてもらった川沿いの神奴染工場へ行ってみます。神奴染工場の創業は明治末期頃とのことです。
【兵動さん】「この写真なんですが…」
【神奴染工場 神奴典児さん】「うちはこっち(左側)です。見て分かります」
【兵動さん】「この川で染めたの落としていたんですね」
【神奴染工場 神奴典児さん】「(布を洗うため)さおで振ってました。さお振り(ぶり)いうてたかな」
まず白い生地に型紙をかぶせ、その上から防染のりを均一に塗る作業をします。生地を1枚1枚折り返し、この作業を50回ほど繰り返します。のりを付けた部分には染料が染み込まないので、白く残ります。さらに防染のりで囲いを作り染料を注ぎ込み、生地に浸透させることで何十枚も同時に染めることができます。
染め終わってから、薄茶色の防染のりを水で洗い流します。洗い流すと染まっていない部分が真っ白になります。脱水機で水分を飛ばし、脱水できた布を高い所からつるして干します。
【兵動さん】「(機械から脱水した布を取り出して)次、どこ行きますの?」
【神奴染工場 神奴典児さん】「干しますねん」
【兵動さん】「(干し場の天井を見上げて)高っ。あの上から干してんのか。(神奴さんが)上にあがってる。マジ。えらい高い場所の丸太の上を歩いている。大丈夫?」
【神奴染工場 神奴典児さん】「大丈夫です。落ちる心配はないから」
【兵動さん】「これ写真で見た、『つるしていたやつ』ですね」
【神奴染工場 神奴典児さん】「昔は外で干してましたから、雨降ったら急いで上まであがって、布を下ろしてました。昔は天気予報がよう外れてた」
【兵動さん】「イチかバチかで干してたんや」
■昔は外につるして干していたが雨だと大変 今は屋内につるすように
写真は、大和川の土手の上から、染め物の工場の方を向いて撮った写真だと分かりました。
【兵動さん】「この辺りか。はいチーズ」
【兵動さん】「注染という染め方があって、よく汗を吸ってくれる昔ながらのすてきな手拭いなんかを作っていました。新しいデザインを取り入れたりしていて、今と昔の染め物が見られましたね。皆さんも一品どうですか」
(関西テレビ「newsランナー」 2024年3月15日放送)