「おしゃれな建物」建てがちなヴォーリズさん 近江八幡にいまも残る 泊まれる名建築 【兵動大樹の今昔さんぽ 関西テレビ「newsランナー」】 2024年02月02日
【兵動さん】「滋賀県・近江八幡市に来ています。後ろにあるのは八幡山ロープウェーで、上がって行ったら、左手に八幡山城の城跡がある。上からは琵琶湖が一望できる最高のロケーションです」
■大正時代とは思えないモダンな住宅が写る写真
これは1915年(大正4年)に滋賀県・近江八幡市内で撮影された写真です。どこの風景なのでしょう?
【兵動さん】「今回の写真、大正に見えへん。『いま』って言われてもおかしくない。立っている人も大正4年にしたら大きいかな。外国の人ちゃう?左の方にいる3人は着物着てる。すごいモダンな建物が近江八幡にあったんや。面白い写真」
【兵動さん】「兵動です。今日はご旅行?」
【女性2人組】「バイクで。一緒に教習所の卒検受けてん。中型バイクの免許をオバチャンなってから取った。第2の青春」
【兵動さん】「楽しまな損やもんね。昔の写真の場所を探してるんやけど、こんなん聞いたことない?」
【女性2人組】「この辺だったら『ヴォーリズ』っていう、建築の人」
【兵動さん】「前に行ったことあるわ、『ヴォーリズ』。西宮の神戸女学院の建築や、京都の教会もヴォーリズでクリスマスに行った。ヴォーリズさんはおしゃれな建物建てがち」
関西の人に馴染みのある建物としては、大丸心斎橋店もヴォーリズ建築です。
【兵動さん】「ヴォーリズさんご存じですか?」
【街の人】「メンタームとかの工場作ったし、建築家でもある。近江兄弟社という学校を作り、近江兄弟社という医薬品会社も作り。ヴォーリズさんで知っているのはそんなところ」
果たして、写真の建物はヴォーリズ建築なのでしょうか?
■近江八幡は「ヴォーリズ」で有名だと判明
地元のお店で聞いてみます。
【兵動さん】「『長五郎せんべい』さん。ここも歴史あるやろな。すみません、おせんべい屋さんですよね?」
【長五郎せんべい 主人】「そうです。これ(『長五郎せんべい』)を焼いてます。安土城とかの絵柄になってます。玉子だけ(砂糖不使用)、良かったら食べてみて」
【兵動さん】「おいしいわ。ちょうどいい歯ごたえ。ところで昔の写真を持って、今どうなってるか探してるんですけど、大正4年の写真なんです」
【長五郎せんべい 主人】「これはヴォーリズさん。近江兄弟社。メンタームはアメリカからライセンスをもろて、そのもうけで病院とか学校とかいろんなもの作っていたわけです。おもにキリスト教を布教するためにやっていた」
アメリカ人のウィリアム・メレル・ヴォーリズはキリスト教の布教を目的に、1905年(明治38年)、現在の八幡商業高校の英語教師として赴任。以来、建築設計を始め、教育や医療、製薬などの事業を行いました。
日本に帰化し、「一柳米来留(ひとつやなぎメレル)」として、近江八幡の街と人をこよなく愛し、地域に大きく貢献しました。
■ヴォーリズ先生は気さくな人だった
長五郎せんべいのご主人の同級生がよく知っているだろうということで、同級生がいる「乃利松」というこんにゃく屋さんへ行くことになりました。
【兵動さん】「『newsランナー』という番組で回らせてもらっています。これ、赤こんにゃくの糸こんにゃくがあるの。太さもいろいろ」
【乃利松食品 店の人】「(太いのは)突きこんにゃくで、ところてんみたいに突いているんです。(Qここでずっとやっているんですか?)創業は天保7年。1836年。ずっとこの地でこんにゃくを作っている」
長五郎せんべいのご主人の同級生、乃利松食品の吉井礼子さん(77)に、ヴォーリズさんのことを伺いました。
【乃利松食品 吉井礼子さん】「(Q壁に掛かっている肖像写真は?)ヴォーリズ先生です」
【兵動さん】「先代かと思った」
【兵動さん】「ヴォーリズさんの写真を飾っているんですか?」
【乃利松食品 吉井礼子さん】「ヴォーリズさんは実業家でもあり、近江兄弟社学園(現在のヴォーリズ学園)で3歳児の幼児教育から、小学校、中学校、高校までしていた。近江兄弟社学園は奥さんとヴォーリズ先生が作られたんです。
私は幼稚園から高校まで近江兄弟社学園です。(ヴォーリズ先生に)『先生おはようございます』って言うと、『おはよう』って手をあげて、本当に気持ちよく(あいさつしてくれた)」
【兵動さん】「“生ヴォーリズさん”にお会いしたことあるんや。気さくなええ方やったんですね」
【乃利松食品 吉井礼子さん】「気さくな、笑顔の、白髪の(先生だった)」
写真の場所は分からなかったのですが、観光案内などを行う「白雲館」で聞けば分かるのではないかと教えてもらいました。
白雲館に行く前に、近くにあるヴォーリズ建築に行ってみることに。「YMCA」として建てられ、現在「アンドリュース記念館」となっている建物で、ヴォーリズ建築第1号だということです。近江八幡市ではこの他にも「旧八幡郵便局」「八幡商業高等学校」など、いくつものヴォーリズ建築を見ることができます。
■写真の建物は今も残っていて、なんと「泊まれます」
「白雲館」で事情を説明し、写真について聞きました。
【近江八幡観光物産協会 事務局長 田中宏樹さん】「(Q写真の建物の場所は?)だいたい分かります。すでにない建物もありますが、(真ん中と左に写る建物は)いまもほぼ同じ形で残っています」
【兵動さん】「これは何の建物なんですか?」
【田中宏樹さん】「簡単に言うと“モデルハウス”的なものです。こんな建物を建てられますよ、ということで」
【田中宏樹さん】「(Q真ん中の建物の前にいる人はヴォーリズさん?)これはヴォーリズさんではなくて、ウォーターハウス邸という邸宅に住んでいたウォーターハウスさんだと思います」
写真は近江八幡の「ヴォーリズ建築」で間違いありませんでした。近江八幡観光物産協会の田中さんに、写真の場所を案内してもらいます。
【田中宏樹さん】「このあたり一帯が『池田町洋風住宅街』と呼ばれたエリアになります。年配の方は昔、塀にしがみついて『アメリカが見える』と言っていた」
【兵動さん】「大正時代にこんなモダンな家が出てきたんですものね」
【田中宏樹さん】「写真の当時とほとんど変わっていないと思います。110年ほどたった建物」
【兵動さん】「ウォーターハウスさん、ここに立っていたんや。そんであちらに着物の女性がいた」
【田中宏樹さん】「そうです。あちらは吉田さんの家。いまも吉田さんがお住まいです」
【田中宏樹さん】「真ん中の建物は『ウォーターハウス記念館』となっていて、春と秋に特別公開しています。宿泊施設にもなっていまして、ヴォーリズ建築を体感でき、一日貸し切りできます」
特別に中を見せてもらうことに。
【田中宏樹さん】「非常に明るくて、昔の日本の暗い家からしますと、開放的です」
【兵動さん】「(リビングのソファに腰かけて)むちゃくちゃええやん」
一棟貸しで、1泊利用料金(定員7名)132,000円(税込)となっています。
【兵動さん】「ヴォーリズさんが作った建物。普通は外から見ることしかできないところで一晩過ごせるんですから、素晴らしい時間ですよね」
■いまも残るヴォーリズ建築 昔と同じ建物を撮ることができました
【兵動さん】「写真はだいたいこんな感じで。いきましょう、はいチーズ」
【兵動さん】「ヴォーリズさんは近江八幡に来られて、いろんなことをやられた。建物もいろいろ残っていて、泊まることもできる。ぜひ遊びに来ていただきたいと思います」
(関西テレビ「newsランナー」 2024年1月26日放送)