豆腐もお酒も冷やした野菜もおいしい “生水(しょうず)”の恵みと暮らす街 琵琶湖の源ともいわれる 高島市・針江の風景 【兵動大樹の今昔さんぽ 関西テレビ「newsランナー」】 2023年09月01日
1枚の写真から街を再発見!兵動大樹の今昔さんぽ
■琵琶湖の水の3分の1が流れ込むと言われる 水の街・高島市からスタート
【兵動さん】
「今回は滋賀県高島市です。JR湖西線の新旭駅でございますね」
JR新旭駅がある滋賀県高島市。琵琶湖の水の3分の1は、この高島市から流れ込んだとも言われ、湧き水があちこちから流れ出す水の街でもあるんです。
今回はどのような写真が出てくるのでしょうか?
【兵動さん】
「(写真を見て)えー、何これ。こういう感じです」
これは1955年(昭和30年)ごろに、滋賀県高島市内で撮影された写真です。どこの風景か分かりますか?
【兵動さん】
「ちょっと怖いんかなと思ってしまうところもあるんですよ。白黒(の衣装)で、こういう列があったら。ただ、この辺(列の後ろの方)で見ると、お祭りなのかな?というのと、この傘みたいな特徴なんですけどね。というか写真の場所を探すんもむずいけど、(人がいなくて)聞き込みすんのもむずい」
【兵動さん】
「(駅に向かって歩いている人を見つけて)お姉さん、ちょっとだけあきません?『newsランナー』っていう番組で回らせてもらってる兵動ですけど、昔の写真持って今どうなってるかなんですけど。昭和30年代の写真でね、こういうお祭りか、儀式か知ってます?」
【街の人】
「はい、あると思います。すぐそこに(駅前の銅像を指して)ああいう四角いのとか持って…。私、地元長くないんでよくわからないけど、祭りはあります」
【兵動さん】
「祭りはあるんですね。分かりました。ありがとうございます。これがお祭りとしたならば、四角いのを持って歩いていくお祭りがある…かもね。なんですけど、これ(写真では四角いものは)別に何も持ってはらへんよな」
■田園風景の中に見つけた喫茶店で有力情報ゲット
写真に写っているのは、「四角いものを持って歩くお祭り」なのでしょうか。さらなるヒントを求め、田園風景の中を進んで行きます。
【兵動さん】
「ええ景色やな。ここ喫茶店あるわ。『萌香(モカ)』さんと読むのかな。ここで聞けたらうれしいな。(喫茶店の扉を開けて)おはようございます。関西テレビの『newsランナー』っていう番組で回らせてもらってる兵動ですけど。ちょっと中に入れさせてもらってもいいでしょうか?すいません、お邪魔します。うわー味のある、むちゃくちゃええ喫茶店」
こちらは、40年以上地元の常連客に愛され続けている喫茶店。さっそく写真について聞いてみます。
【珈琲館萌香 店員】
「分からへんわ、私。昭和30年…」
【兵動さん】
「駅前にオブジェの、竹みたいなものに四角いのが刺さってあって、そういうのを持って歩くというお祭りはあると(聞いたんですけど)」
【珈琲館萌香 白いシャツの常連客】
「それ、七川祭りちゃうん?七川祭り」
【珈琲館萌香 店員】
「やぶさめのお祭り」
【珈琲館萌香 白いシャツの常連客】
「やっこさんが14人で練るやつ。的持って」
【珈琲館萌香 帽子をかぶった常連客】
「(写真は七川祭りではなくて)これ針江のお祭りやな。私の住んでる針江ですわ」
【兵動さん】
「針江?」
【珈琲館萌香 帽子をかぶった常連客】
「私、針江に住んでいますので、針江のお祭りやと分かります。日吉神社というお宮さんのお祭りですから、水の恵みと五穀豊穣を願うお祭りやったんやと」
■きれいな水が街中に流れる高島市“針江地区”
有力な情報を得た兵動さん、 高島市内の針江地区へやって来ました。
【兵動さん】
「きれいな水。こういう風な所で、もう野菜があるやん。この時期ああいう所で漬けて冷えんねやろな、たぶんな」
【兵動さん】
「あ、豆腐屋さん。こんなきれいな水で豆腐作ってはるんやろ。すいません。関西テレビの『newsランナー』っていう番組で回らせてもらってる兵動ですけども。うわーすごい。やっぱこの水で豆腐作ってはんねや」
【兵動さん】
「(家の中から出てきた豆腐店の人に)こんにちは、よろしくお願いします。この水で豆腐作ってもう何年ですか?」
【上原豆腐店 上原忠雄さん(83)】
「私で3代目で130年。私とこは豆腐屋ですんで、豆腐作って、生活用水もこの湧き水で生活しています。私とこはね、水源は川の中に鉄のパイプが埋め込んである。地下10メートルから湧き出てくる自然に」
【兵動さん】
「(パイプを通って)上に行ったのが」
【上原さん】
「ここに出てくる。水をいったんここにためてね、ここの水を吸い上げて水道と同じように蛇口から使うんです」
生活用水も豆腐作りも湧き水とともにある暮らし。せっかくなので、兵動さん、豆腐を試食させていただきました。
【兵動さん】
「うわーしっかりしたお豆腐。なんていうんかな。普通の豆腐では味わえないというか」
【上原さん】
「私とこはね、大豆をすりつぶして鉄釜で煮てるんですよ。釜の底におこげができる。そのおこげの香ばしさが、香りになっています」
【兵動さん】
「へえ、すごいなー」
素朴な味わいの豆腐を試食したところで、写真について聞いてみると…
【兵動さん】
「この辺のお祭りには間違いないですか?」
【上原さん】
「この辺のお祭りです。こちらは日吉神社(の祭り)です」
【兵動さん】
「日吉神社。それ先ほどの方も言ってたな。ということで日吉神社に行った方がいいってことですね」
■酒屋さんにふらり 「試飲できます」のお誘いに兵動さんちゃっかりいただきました
教えてもらった日吉神社を目指しますが、途中で「酒」の看板が目に入り、気になってしまいます。
【兵動さん】
「(酒屋さんの店先に)ここ湧き水があって、『ご自由にお飲みください』って書いてある。飲んでええんかな。うわ、柔らかい水やな。思てはる3倍冷たいと思う。これ暑い時にええわ。(看板を読んで)川島、酒、ウイスキー…作ってんのかな。この酒屋さんも誇る地元のお酒ってあるやろな。(『試飲できます』の張り紙を見つけて)何も言わさんといて。ちょっと見てみようや。せっかくやねんから、水きれいなとこやねんから」
江戸時代末期に創業した川島酒造は、地元近江米と湧き水で作る地酒の造り酒屋。社長は留守だということで、お店の方に話を聞いてみました。
【兵動さん】
「何作ってはんの?お酒は」
【川島酒造杜氏 蓬田佳央さん(35)】
「日本酒」
【兵動さん】
「日本酒とウイスキーって書いてたけど」
【蓬田さん】
「ウイスキーこれから作り始めるんです」
【兵動さん】
「新しい取り組みでこれからウイスキーを作るの?」
【蓬田さん】
「そうです。今から」
【川島酒造事務 添田妙子さん(45)】
「(日本酒の)試飲もできますよ」
【兵動さん】
「もうちょっと声張ってもらっていいですか?」
【添田さん】
「試飲もできますよ!」
【兵動さん】
「じゃあ、お願いします。どれ?え、全部これ作ってんの、ここで?ここの商品ばっかりが並んでるいうこと?」
【添田さん】
「他のはないです」
兵動さん、思惑通り試飲させてもらうことになりました。
【兵動さん】
「おいしい。『日本酒入門したいんです』やったらちょっと違うの探した方がいいと思う。なんかちょっとお酒飲んでて、日本酒クッといきたいなという時には、キレと辛みとがドスンとくるという。これは僕お酒結構飲むので、酒好きには良いお酒。これすごいね」
【添田さん】
「うれしい、ありがとうございます」
おいしいお酒を飲んで満足したところで、写真について聞いてみると、お祭りを見たことはないけど、日吉神社はすぐ近くにあるとのことです。
■日吉神社を目指しますが…
日吉神社はすぐ近くにあるということで、いよいよ目指す風景に近づいてきました。
【兵動さん】
「あ、出てきた。日吉神社さん。立派なきれいな神社やな。やっぱきれいやな水。川がばーと流れてて、水の街という感じがしますけども。あーいいね」
針江地区の多くの家庭にある湧き水が水路に流れ落ちて、針江大川に注ぎ込み、さまざまな命を育みます。水遊びをしている地元の子供たちがいて、子供にとっても欠かせない場所のようです。
【兵動さん】
「うわすごい、コイや。これすごいな。用水路やろ」
日吉神社にやって来たものの、どなたもいない様子で、周辺を歩いていると…
【兵動さん】
「『生水(しょうず)の郷』。『ここは観光地ではありません。生水(湧水)の恵みを受け、自然とともに暮らしている生活の場です。私たちの暮らしを知っていただくために、散策は必ず地元ガイドと一緒に見学カードを身に着けた状態でお願いします』。ここの方と一緒に回らなあかん。早めに言っとかな、俺らも」
「針江生水の郷委員会」の前田さんに湧き水と共に暮らす針江の暮らしと、水が湧き出る台所「川端(かばた)」を案内してもらいました。
【針江生水の郷委員会 前田啓子さん(78)】
「ここ湧いてるでしょ。以前ここに家が建ってたんですけど、その時に使っていた川端、台所の水。だから家が無くなっても、いったん掘ったお水はもう永遠に出続けるんですよ。これをみんな使って、残して使ってるんですよということです。じゃ、ここから三宅さんのお家になるんで」
【兵動さん】
「こっからもう三宅さんのお家」
【前田さん】
「こっからは個人のお家の敷地内になるんで、はい、こうして、電気つけますよ」
【兵動さん】
「これ、めちゃくちゃおもしろい。ちょっと待って、あれコイですか?。ほんで、手前には夏野菜とかスイカとかが入ってて」
【前田さん】
「これから毎日、夏野菜取れたら、スイカも常時、冷蔵庫代わりに使うんです。これ(水温)14度ですから。針江はまだこういう姿が残ってるんです」
【兵動さん】
「コイはなんで飼うてはんの?」
【前田さん】
「今のところはお掃除のためと言うて、コイ入ってなかったら泥っぽくなるんですよ。でもコイがこうして動いてくれることによってこの砂の底のところがきれいになる。そして人間の残飯をつけといたら、いつの間にかコイが全部掃除をしてくれる。昔、私たち子供の頃までは(コイは)タンパク源。夏食べるため」
【兵動さん】
「食べるために入ってたんや」
【前田さん】
「私たちは、この上流で暮らすものは下流の人がお水を使っていることを思いやり、下流の人は上流の人がきたない水の使い方をしないという安心の水」
【兵動さん】
「信頼関係ができている。めちゃくちゃええ話や」
【前田さん】
「そこからずっと川端は残ってます」
■いよいよ写真の場所に案内してもらいます
それでは、写真の場所を教えてもらいます。
【兵動さん】
「こちら(の写真)でございますね。場所お分かりですか?」
【前田さん】
「知ってますよ、よく。お祭り。5月のお祭りのシーンですね。ここお宮さんですからね、日吉神社。昔は舟どまり、ここ全部川やったんです」
【兵動さん】
「だから(今は川幅が)狭なってんねや。道路拡張するために」
【兵動さん】
「はい、チーズ。針江がいまだにきれいな水を使える。ぜひみなさんね、どんなところか来ていただきたい。その代わり、この前田さんとこにまず行って、ちゃんと申し込みしてから、ちゃんとルールを守って、街を歩いてほしいですね。すごく勉強になりました。ありがとうございました」
(関西テレビ「newsランナー」2023年8月25日放送)