“魚のたたり”で途絶えたが大正末期に復活「宇治川の鵜飼い(うかい)」 女性鵜匠が活躍し“人口ふ化”や“放ち鵜飼い”など今も進化 かわいい“鵜”に兵動さんメロメロ 【兵動大樹の今昔さんぽ 関西テレビ「newsランナー」】 2023年09月03日
1枚の写真から街を再発見!兵動大樹の今昔さんぽ
【兵動さん】
「今回は京都の宇治市ですね。地下鉄六地蔵駅前からスタートでございます。ちょっと行ったら京都市の伏見区になるらしいです。伏見区に近い六地蔵という所からやらせていただきたいと思います」
【兵動さん】
「今日の写真ですが、はーこれも古いな、すごい写真」
これは昭和初期に京都府宇治市内で撮影された写真です。どこの風景か分かりますか?
突然、自転車に乗った女性が、兵動さんの隣にピタッと自転車を止めて話しかけてきました。
【自転車の女性】
「兵動さん、テレビ出過ぎやわ。悪いことしたらあきませんで」
【兵動さん】
「いやいや悪いことなんか。昔の写真持って、今どうなってるかいう(のを探る番組のコーナーしてます)」
【自転車の女性】
「分かります、よくテレビで見てます」
【兵動さん】
「うれしいわ。(写真を見せ)これって何や思います?この生き物」
【自転車の女性】
「ニワトリでしょ。(兵動さんは)見た感じすてきですね、オシャレですね。私も今84歳なんですよ。バイク乗らないけどブイブイいわしてる」
【兵動さん】
「ブイブイいわしてんの?ありがとうございます。いきなりブイブイいわしてる方とお会いしました。これ(写真の動物)がニワトリじゃないかということですね。何かの動物園的なものなのか、なにかちょっと分からない」
■写真の鳥はニワトリ?カラス? 動物病院で聞くと「鵜飼いの鵜」
地元の人に聞き込みを続けると、「ニワトリ」または「カラス」ではないかというのですが、確かな情報はありません。さらに歩いていると動物病院を見つけました。
【兵動さん】
「えーすごいな『林屋動物診療室』。ってゆうか(看板)でか!ちょっとこれ聞きましょうか。めちゃくちゃ大きい病院や」
【兵動さん】
「こんにちは。鳥に詳しい先生ですか?この鳥、なんの鳥なんやろういう話になって」
【獣医師】
「これ鵜飼い(うかい)の鵜(う)じゃないですか?」
【兵動さん】
「鵜飼いの鵜。分からへんね。鵜飼いの鵜って大体この辺(首の上)までしか(水面の上に)出てないから。全体的なフォルムが分からへん。宇治って鵜飼いの鵜かなんかって有名なんですか?」
【獣医師】
「ちょっと僕、宇治の人じゃないんで…」
【兵動さん】
「例えばこの病院で『うちの子がしんどなって』いうて、鵜を連れてきた方というのは?」
【獣医師】
「それはいない」
【獣医師 林屋牧男さん】
「どないしました?」
【兵動さん】
「すいません、先生。申し訳ない。この鳥何やろうという話になって」
【林屋さん】
「何って聞かれたら、『ウゥ~』っていう」
【兵動さん】
「まさか、こんな重鎮が出てきてボケるとは思ってもみいひん。みんないつもボケられてるんですか?先生に」
【看護師】
「はい」
【林屋さん】
「宇治川でね、鵜飼いやってるわけ。有名なのは長良川(岐阜)やろうけど、宇治もずっと昔からやってて」
「鵜飼い」は、体に綱をつけた鵜を使ってアユなどの魚を捕る伝統的な漁。宇治川の鵜飼いは平安時代の貴族も見物を楽しんだとされる夏の風物詩なんです。
【林屋さん】
「これたぶん宇治の『塔の島』のあたりよな。塔の島っていう中州がある。そこ行って聞いてみはったらすぐ分かると思うわ」
■宇治川 増水で島に近づけず しかし“鵜“を発見
教えてもらった宇治橋の上流にある中洲「塔の島」へ行ってみましたが…
【兵動さん】
「わー、『増水のため立ち入り禁止』。うわ、流れめっちゃ早い。塔の島…あの塔のとこが島なんやろな。雨がごっつ降ったんですよ。そやからねえ、あそこ(塔の島)に行って聞き込みせんといかんねんけど。あれ、あれ、鵜ちゃうの?鵜飼いの鵜でしょ、あれたぶん」
観光船の事務所で話を聞いてみます。
【兵動さん】
「すいません。ちょっとお聞きしてもいいです?これ(写真に)写ってるのは鵜じゃないかってことになりまして、ほんで塔の島に行ったら分かるよってなったんですけど、橋渡れなくて」
【宇治川観光通船社長 民秋和之さん】
「そうですね。ちょっと増水でね。ですけど(鵜の)トレーニングは、京阪(宇治駅)の向こう側に『太閤堤(たいこうづつみ)』っていう所があるんです。そこの池でトレーニングしています、今」
【兵動さん】
「鵜の練習をしている。太閤堤」
鵜飼いの練習を行っているということなので、「お茶と宇治のまち歴史公園」にある太閤堤へ行ってみることにしました。
【兵動さん】
「あれか?ちょっと行ってみるか。すいません。関西テレビの『newsランナー』いう番組で回らせてもらってる兵動いうんですけど。ちょっと寄らせてもらっていいです?」
【鵜匠 沢木万里子さん】
「どうぞどうぞ」
【兵動さん】
「(近くにいる鵜を見て)かわいい、これめっちゃかわいい。めっちゃお利口さんに立ってるやん。名前とかあるんですか?」
【沢木さん】
「連れてきている子はみんな『ウッティ』です」
【兵動さん】
「ウッティ。全員がウッティですか?かわいいなー。この籠の中もウッティですか。すごいすごい。ひもつけて」
■宇治で復活 綱をつけずに魚を取らせる幻の「放ち鵜飼い」
【沢木さん】
「今から、『放ち鵜飼い(はなちうかい)』のトレーニングをするのに準備しています。通常の鵜飼いでしたら、夏の夜にかがり火をたいて、鵜に約4メートルぐらいの綱を付けて鵜飼いするんですけど、放ち鵜飼いは綱を付けずに、鵜たちを自由に泳がせて、『ウッティ』って呼び寄せたら帰ってくるという」
【兵動さん】
「うそでしょ。放ち鵜飼いいうて、放ったらもう帰ってけーへんのんとちゃいますか?」
【沢木さん】
「それを帰ってくるように」
鵜に綱をつけずに魚を取らせる「放ち鵜飼い」。これまで日本で唯一島根県で行われ、20年以上前に途絶えてしまったこの「幻の鵜飼い」を、2018年に宇治で復活させたのです。現在は春と秋に「放ち鵜飼い」のイベントを開催しています。
【鵜匠 松坂善勝さん(85)】
「これが一番最初に生まれた子ですわ」
【兵動さん】
「最初に生まれた子?」
【沢木さん】
「この子たちみんな、宇治で人工ふ化で生まれた子たちなんです」
【兵動さん】
「そんなことまでしてるんですか、宇治で」
宇治では2014年にウミウの人工ふ化に日本で初めて成功。飼育が難しいとされるウミウを大切に育ててきました。
【沢木さん】
「人工ふ化で私たちが育ててるから、よくなれているので(放ち鵜飼いでも)帰ってくる」
【兵動さん】
「へーそうか、だから親とは言わへんけど、そういうことですよね」
【兵動さん】
「うわ、行った。すごいすごい。ひもはあるんやけど離すんや」
【沢木さん】
「ウッティ、あがろう、さぁ帰ってきて」
【兵動さん】
「すぐ戻ってきた」
【沢木さん】
「こういう風に喉が膨らんでるんですね。で、はい吐こう(鵜が2匹の魚を吐いて、1匹はかごに、もう1匹は鵜が再び口に入れて)首の留め具を緩めてあげて、はい食べた。もう一度締めて、もう一回いってらっしゃい」
【兵動さん】
「今、一回吐いたん口に入れましたけど、あれは食べたんですか?」
【沢木さん】
「食べました。帰ってきたら(エサが)もらえるよっていうのも合わせて教えてるんです」
【兵動さん】
「どれぐらいやられてるんですか?」
【沢木さん】
「私は21年ぐらい。でも、松坂鵜匠とかは、もう若いころから(58年)されてますし」
【兵動さん】
「大師匠ですやん。上には上がいらっしゃるんや。女性も結構多いんですか?」
【沢木さん】
「女性は、私のほかに鈴木鵜匠と後輩にもう一人江崎鵜匠の3人います。女性の鵜匠がこんなにいるのはうちだけですね」
■言うことを聞かない困った子も…「関係修復中です」
【沢木さん】
「困ってるんですよ。あの子が全然帰ってこない」
【兵動さん】
「あいついっこも帰ってけえへん、むっちゃ面白い」
【沢木さん】
「なにかちょっと警戒心が生まれてしまって、私たちの関係にちょっと今ヒビが入っている状態」
【兵動さん】
「そんなことあんねや。なんかのちょっとしたことで」
【沢木さん】
「今、関係を修復している最中」
【兵動さん】
「大変やで」
ここで今回の写真を見てもらうと…
【沢木さん】
「えーこれ宇治ですか?宇治だったら、昔から宇治橋上流の塔の島付近で鵜飼いをされていたんで、その辺かなと思うんですが」
【兵動さん】
「昔のこと分かる方っていらしゃいます?」
【沢木さん】
「そうですね。私のお師匠さんの松坂鵜匠とかでしたら、昔のこと分かられると思うんですけど、今日はもう帰られたんで…。たぶん宇治川観光通船っていう川沿いの船会社の事務所におられると思いますよ」
【兵動さん】
「さっき行ったとこや」
■昔のことは鵜匠歴58年の師匠に聞いてみます
宇治川観光通船の事務所に戻っていた、鵜匠歴58年の松坂さんに話を聞きに行きました。
【兵動さん】
「これ昭和初期の写真でね」
【松坂さん】
「古い写真やなあ。大正時代?」
【兵動さん】
「ぐらいですね、昭和初期やとは聞いてるんですけど。これの場所って分かります?」
【松坂さん】
「池みたいな、これ川ではないな。これが平等院みたいやな。柱」
【兵動さん】
「平等院。これが平等院の柱みたいだということですか。昔、平等院で鵜飼いとか…」
【松坂さん】
「やってなかったと思う」
【松坂さん】
「やってなかったけど、大正時代に宇治で鵜飼いをやる(復活させる)ということで、教えてもらった時、来たんとちゃうかなと。これはたぶん岐阜(長良川)から来たと思う」
塔の島にある日本最大で最古の石塔。かつて宇治川の橋が何度も流失した際に、原因は“魚のたたり”にあると考えられ、供養のために建てられた石塔です。同時に宇治川での殺生や漁が禁じられ、鵜飼いは姿を消したのです。それが大正15年、観光資源として鵜飼い復活の機運が高まり、長良川の鵜匠などにその技術を学び、再び鵜飼いが行われるようになったのです。
【兵動さん】
「お寺の方が『殺生をやめましょうよ』ということで、鵜飼いが一時止まったんですね」
■写真が撮られた場所は平等院だと判明
というわけで世界遺産・平等院へ行ってみました。
【兵動さん】
「いやーすごい。初めてなんです僕。めちゃくちゃ立派ですね。この辺ですか?どうでしょう、師匠」
【松坂さん】
「あーこれみたいやね」
【兵動さん】
「いきましょう、はい、チーズ」
「僕、ほんまに宇治川の鵜飼いって勉強不足で初めて知りました。夏にね、一回かがり火のところも見てみたいなと思いました」
(関西テレビ「newsランナー」2023年6月30日放送)