関西有数のホタル生息地・守山市 100 年前は“蛍問屋”が存在し商売の対象にも 乱獲で一時姿を消したが市民の力で復活 【兵動大樹の今昔さんぽ 関西テレビ「newsランナー」】 2023年09月27日
【兵動さん】
「今回は滋賀県守山市、JR守山駅前からスタートです。駅前には緑もあって住みよい感じもするし。京都から来ると大津、草津、守山という感じですけども、今日はそこからスタートです」
【兵動さん】
「今日の写真は、ちょっと待ってくれ。これは無理やて、ほんまに」
これは昭和の初期頃に滋賀県守山市内で撮影された写真です。どこの風景か分かりますか?
【兵動さん】
「えー。この当時の女の子全員“ワカメちゃん”みたいな感じやもんな。お店の前というか。文字書いてるわ。『源氏蛍問屋』。蛍問屋ってなんや?『桜井屋』さんやな、店の名前は。ほんでこれ、なんかいっぱいぶら下がってるけども、袋詰めしてはるわね。ホタル入ってるってこと?」
【兵動さん】
「これ(左側の男性)はホタル見てはる感じはするけど。それが守山と何の関係があんのか。ピンポイントで場所が分かるのかどうかですけども、なかなかいい写真です」
■街で聞き込みすると、守山が“ホタル”で有名なのは間違いなし
聞き込み開始です。
【兵動さん】
「『newsランナー』っていう関西テレビの番組で回らせてもらっている兵動ですけど。昭和初期の写真やねん。ちょっと見てもらってもいいです。これ(写真)ね、横の方に『蛍問屋』って書いてるんですけど、守山のホタルって有名ですか?」
【街の人】
「有名ですね。よく見に行きますよ。結構いますよ、あちこち」
【兵動さん】
「ここ(足元)見てたら、ホタルがあるわ。有名なんや。こういうマンホールにもホタル。あ、そうかやっぱり琵琶湖とか、滋賀県は水がきれいやから、そういうのであるのかな」
関西では5月下旬から6月にかけてホタルの見頃になります。関西各地にホタルの鑑賞スポットはたくさんありますが、中でも守山市は「ホタルの街」として有名です。守山市内を流れるいくつもの川の水源は、地下からの湧き水。この澄んだ湧き水がホタルの生育環境を整えているのです。
【街の人】
「(『newsランナー』)見てます」
【兵動さん】
「これね、昭和初期の写真なんです。守山はホタルが有名やって聞いたことあります?」
【街の人】
「『もぴか』と『もーりー』ですね。ホタルのキャラクターがいます」
【兵動さん】
「そんなんあるんや。ホタルのことよう分かるところとか、分からへんわね?」
【街の人】
「一つ向こうの通りが『ほたる通り』っていう通りなんですけど」
【兵動さん】
「ほたる通りという道があるんですか?」
■「ほたる通り商店街」の食堂で有力情報 「おやじが『蛍問屋』だった」
いかにもヒントが見つかりそうな「ほたる通り商店街」へ行ってみることにしました。
【兵動さん】
「書いてあるわ『ほたる通り商店街』。今はちょっとお店も減ってる感じなんかな。すごいよ、街灯にホタル(のオブジェ)。リアルホタルやな」
【兵動さん】
「岡田屋さんというお店、ちょっと行ってみようか。すいません。恐れ入ります。関西テレビの『newsランナー』っていう番組で回らせてもらっている兵動ですけど、ちょっとだけお話よろしい?うわ、うまそやな」
【岡田屋食堂 岡田隆夫さん(64)】
「守山回ってんの?」
【兵動さん】
「守山回ってますねん。今回はね、古い写真なんですよ、昭和初期やいうて。こんなもん分からへんわってなってたんですけど、ここにね、『蛍問屋』って書いてあったんです」
【岡田さん】
「はいはい、『源氏蛍問屋』と書いてますな。蛍問屋いうの、うちとこのおやじが、これにちょっと携わっとったんです」
50年以上前に父親が営んでいた蛍問屋の名残があるそうで…
【岡田さん】
「年季入ってますでしょ。これがホタルをつってた袋」
【兵動さん】
「すごい。写真にあるのと同じ袋。ここにホタルを入れて、くくって、つるしてたんや」
【岡田さん】
「この通り、この近所に2~3軒あったって、僕は聞いてるんですよ。一般市民が(ホタルを)捕まえて、問屋に売りに来たと。それを問屋さんが買うて、一般の人が買いにきはんのか、問屋さんの中卸で買いにきはんのかは定かではない」
【兵動さん】
「大将が、記憶ある時には問屋さんはやってなかった?」
【岡田さん】
「もうなかったんです。うちの屋号は昔から『岡田屋』なんですよ。おやじがうどん屋兼まんじゅう屋にして、蛍問屋も一緒にやっとった」
【兵動さん】
「手広うやってはったんやね、当時。これ(写真のお店)は、『桜井屋』って書いてあるから、お父さんのとこではないですね」
【岡田さん】
「この当時、中山道突き当たるまで400メートルぐらいあって、この通りに2~3軒問屋さんありましたけど、今はそういうお店もないし。(ホタルのこと聞くなら)『ほたるの森資料館』、運動公園内に資料館が併設されてあるんですね。ほんでもしよかったら、ここの川もそんなん歩きもって」
【兵動さん】
「そんなん見ながら中山道の方向かって歩いて行くんが一番ええですね」
言われたとおり、川を見ながら中山道へ向かって歩いていきます。
【兵動さん】
「わーすごいね。きれいな水やな。『ほたる地蔵』いうお地蔵さんあるわ。こういうきれいな水ですね、街中の川やのに」
【兵動さん】
「この先で交差する道が中山道ね。ええ道やな。歩いてみたいね、街道もね。詳しいことはさっき教えてもろた『ほたるの森』行って、そこで話聞いてみよう」
■「ほたるの森資料館」でホタルのあれこれ教えてもらいます
「蛍問屋」の写真のヒントを求めて、守山市民運動公園にある「ほたるの森資料館」へ行ってみました。
【兵動さん】
「あ、ここか、『ほたるの森資料館』。すいません。恐れ入ります。関西テレビの番組で回らせてもらっている兵動ですけど、ちょっと入れてもうてもよろしいですか?えらい、屋根裏登ってはったん?」
【ほたるの森資料館館長 古川道夫さん】
「今、忙しい時やったんで」
【兵動さん】
「忙しい時やった。申し訳ない、タイミング悪うて」
毎年ホタルの見頃の時期に行われているイベントの準備で忙しい時にお邪魔してしまいました。
【兵動さん】
「昭和初期やいうてるんですけどね、この写真なんですけど。『源氏蛍問屋』って書いてます。ゲンジボタルってどんなんですの」
【古川さん】
「今ちょうどいいのがここに。研究用のホタルなんですけど。光ってるの分かるでしょ」
【兵動さん】
「暗くないからぼわーとはならんけど」
【古川さん】
「そうです。人間が刺激与えんと光らないので。ちょっと部屋を暗くすると」
【兵動さん】
「光ってる!ゲンジボタルはやっぱり普通のホタルから比べると大っきいんですか?」
【古川さん】
「メスの方が大きいんですけど、大きいので2センチぐらいあるんで、たぶん日本にいるホタルの中で一番大きい」
【兵動さん】
「もともと守山にはホタルが多かったんですか?」
【古川さん】
「めちゃくちゃ多かったらしいです、100年以上前は。バランスがよかったんちゃいますか?人の分布とか田んぼの分布とか、あときれいな水が多かったとか。いろんな条件重なって、たくさんいたんじゃないかと思われるんですけど」
古くからゲンジボタルの生息地として知られてきた守山では、天皇陛下へゲンジボタルの献上が毎年行われたり、蛍まつりが開催されるなど、多くの人が見物に訪れ、「蛍問屋」が商売として成り立つほどにぎわいました。ところが乱獲が原因でしだいに守山からホタルは姿を消すことになりました。そんな時、一人の守山市民が立ち上がりました。
【古川さん】
「この南喜市郎という人は守山の生まれの人なんです。この人は別に研究家でもなんでもなかった。しょうゆの醸造業をしてはった人なんですけど、ホタルの研究を進められて、初めて室内で人工飼育に成功した人なんですよ」
南喜市郎氏は研究の中で、ゲンジボタルの幼虫が「カワニナ」という巻き貝をエサにしていることを発見。官民一体となって河川を浄化し、人工飼育したゲンジボタルの幼虫を放流しました。さらに守山市では「守山市ほたる条例」を施行し、市内すべての河川でホタルおよびカワニナの捕獲を禁止したのです。すると、近年では1日で約3000匹のホタルが確認されるまで復活したのです。
【兵動さん】
「いろいろ守山とホタルの関連がよく分かったんですけど、これ(写真)ね、おんなじとこから写真撮りたいんですけど、これの場所は分からない?」
【古川さん】
「ホタル知ってる人にはけっこう知られてる写真で、『どこにあったん』ってよく聞かれるんで、私たちも調べるんですけど、もう誰に聞いたらいいのやらっていうとこでやめたんです。調査を」
【兵動さん】
「えー無理やん」
【古川さん】
「当時、こんなお店がたくさんあったとこって、100年前は今のほたる通り商店街しかなかったと思うんですよ。たぶんあの辺だったと思います」
■再び「ほたる通り商店街」へ戻って聞き込みすると…
再び、ほたる通り商店街で聞き込みを続けることにしました。
【兵動さん】
「というわけで、ほたる通り商店街に戻ってきました。今からお店で片っ端から聞いていきましょう。街の電器屋さん、どうなんやろ。すいません恐れ入ります。関西テレビの『newsランナー』っていう番組で回らせてもらっている兵動ですけど、昔の写真持って今どうなってるかお聞きしたいと思って。これ(写真です)ね」
【北田電器 北田勲さん(84)】
「あーこれな。『桜井屋』さんいうて“お菓子屋さん”、もともとね。突き当たって、中山道をちょっと右に曲がると四つ角がある。その角にあったんですよ。これ桜井屋さんいうて」
【兵動さん】
「むちゃくちゃすぐ分かったやん」
■写真の「蛍問屋」は中山道沿いにあったお菓子屋さんだと判明
教えてもらった通り、旧中山道の四つ角へ行ってみると…
【兵動さん】
「(表札は)松下さんてなってんな。(インターホン)すいません。関西テレビの『newsランナー』っていう番組で回らせてもらっている兵動ですけど」
事情を説明すると、話を聞くことができました。
【松下正信さん】
「『桜井屋』いうのはうちの屋号ですね」
【兵動さん】
「そうですよね。(写真には)道具商って書いてるんですけど、道具商ではなかったんですか?」
【松下正信さん】
「いや、菓子屋」
【松下博美さん】
「この後ろにたぶんお菓子があって、間口でその期間だけホタルを売っていたという話はちょっと聞いたことがあるんですけども」
昔の写真があるということで見せてもらいました。
【兵動さん】
「あーほんま(菓子店)やな」
【松下正信さん】
「守山で桜井屋はうちだけですんで」
【兵動さん】
「お菓子屋さんの前の先代が道具屋さんをやられていたかもしれないですね」
【松下博美さん】
「これは、ホタルを天皇陛下に献上してたんですね。こういう袋に一袋だけ家の中でぶら下げていたような記憶がかすかにあります」
【兵動さん】
「あー、もう間違いない。行かせていただきましょう。はい、チーズ」
「守山すごかったです。ホタルで有名。今もまた昔のホタルを取り戻そうといろんな活動をされている、すてきな街でございました」
(関西テレビ「newsランナー」2023年6月16日放送)