大阪都心に残る下町…野田阪神は古くからの「藤」の名所 「ノダフジ」の名付け親はいま話題の牧野富太郎 600年にわたり藤を守る“藤さん”に巡り合って…【兵動大樹の今昔さんぽ 関西テレビ「newsランナー」】 2023年09月12日
【兵動さん】
「今回は阪神の野田駅ですけどもね、こちらは2回ぐらい寄せていただいてます。すぐ隣が福島で、さーっと行きゃ梅田。本当にアクセスがいい所なんですけど、住んでる方もたくさんいらっしゃるし、お店も多いという、そんなすてきな野田阪神からスタートです」
■写真には“花と人物” これだけで撮影された場所を見つけられる?
【兵動さん】
「今日の写真です。ははは、これは無理やって。こんなんむちゃくちゃやね。(近くにいた街の人に写真を見せて)こんなんですねん」
【街の人】
「ここちゃいます?」
【兵動さん】
「ほんまやな。なんで『ここ』っておっしゃったかというと、(すぐ頭上に藤棚があり)こういう写真(藤のような花を触っている人物)やからね」
これは1935年(昭和10年)頃に大阪市内で撮影された写真です。どこの風景か分かりますか?
【兵動さん】
「何の写真これ。誰?この方がどこで何をしているかということよね。ほんまにここちゃう?上でなんか花をやってはるやんか。この花にものすごい似てんねんけどな、垂れ方とか。これ…アジサイ?俺分からへんねん花の種類とか、ほんま知らんねん。『これはなんの花ですか』から聞き込みしないと」
【兵動さん】
「関西テレビの『newsランナー』っていう番組で回らせてもろてる兵動いうんですけど」
【自転車に乗った街の人】
「知ってます。いつもテレビ見てるから」
【兵動さん】
「うれしい、ありがとうございます。あのね、昭和10年の写真なんですけど、こんなん見たことないわね?」
【兵動さん】
「ちなみに、(頭上の藤棚を指さして)あの花って何の花か分かります?」
【街の人】
「それは分かりますよ。『ノダフジ』やから」
【兵動さん】
「ノダフジというお花の名前ですか?」
【街の人】
「そうです。“ノダ”ってついてるんです。野田はこれが有名で、あそこにも書いてますでしょ。“区の花『のだふじ』”いうて」
【兵動さん】
「うわ、ほんまや。めちゃくちゃでっかく書いてるやん。あの橋脚のとこ“区の花『のだふじ』”」
ちなみに、来年発行される新5000円札の裏面には「ノダフジ」がデザインされているんです。そんな「ノダフジ」と野田にはどんなつながりがあるのでしょうか?写真に写る人物はいったい誰なのでしょうか?
■商店街の“電気屋”で「ノダフジ」が売られていた
兵動さん、なじみの野田新橋筋商店街で聞き込みです。
【兵動さん】
「ここの商店街好きや。上みたら藤あるわ。ノダフジやんなこれが。ほうぼうにノダフジがある。 あー、うなぎや。むちゃくちゃ腹減った。(うなぎ屋さんに声を掛けて)今お話しできますか?ノダフジいうのは有名ですか?」
【川繁商店 店員】
「めっちゃ有名ですよ」
【兵動さん】
「(写真の)こういう方とか見たことない?ノダフジに詳しい方とか分からんよね?」
【店員】
「分からないですね」
【兵動さん】
「すいません忙しいとこ、ありがとうございました」
【兵動さん】
「商店街のお店もだいぶ変わったんかな。すいません、こんにちは。うまそうやな。むっちゃでっかいタコ入れてる。ここは?」
【多幸丸製粉野田阪神店 店員】
「先週オープンしたんですよ」
【兵動さん】
「あの、ノダフジって知ってます?」
【店員】
「ノダフジって聞いてるんですけど、詳しくは知らない。この先に売ってるとこあるって。売ってるのか、もらえるのか分からないけど。なんか知らん…ウソかもしらん」
【兵動さん】
「一か八か行ってみるか」
「ノダフジ」を売っているところがあるそうなので、さらに商店街を歩いていきます。
【兵動さん】
「『今昔さんぽ』は3回目や。いろんなロケで来させてもろてるから、どっか知り合いの店もあったはずやねんけどな。あ、すごいの出てきた。ノダフジ売ってた。しかも電気屋さんで。電気屋さんでノダフジ売ってる、どういうこと?こんにちは。俺、前ここ寄せてもーたんちゃう?ね?」
【まちの電気屋きょうりつ 加茂裕美さん】
「同じ番組ですか?写真を前なんか…」
【兵動さん】
「ほなおんなじ番組やわ。もうすごい法被がノダフジやんか」
【加茂さん】
「そうそう。商店街の法被なんで」
【兵動さん】
「商店街の法被がノダフジカラーなんや。ほんで電気屋さんが何でノダフジ売ってんの?」
【加茂さん】
「この時期だけ藤を広める活動の一環で、10年ぐらい前から商店街で苗木の販売をしていて、私一応企画をやっているから自分とこの前に置いてるっていう」
【加茂さん】
「あーゆーご家庭で育ててはる藤を飾らせてもらったりして」
【兵動さん】
「これ(苗木)からあれ(展示しているノダフジ)になったちゅーこと?」
【加茂さん】
「これから30年ぐらいたつとあんな感じ」
【兵動さん】
「あれ見よ。すごいな。一般の方がずっと育てて?(名前の札が付いていて)大野さんが(育てた)」
【加茂さん】
「太さがもう全然違うと思うんですけど。わーうれしい。これ撮ってもらえるとめっちゃ喜ばれると思います」
【兵動さん】
「こんなん立派やで。個人でここまでしよう思たら」
■野田は古くから藤の名所 写真の人物は「日本植物学の父・牧野富太郎」
【兵動さん】
「ノダフジ有名なん、むちゃくちゃ分かるんやけど、ノダフジっていつからあるんですか?」
【加茂さん】
「一応歴史では、平安時代よりずっと前にこの辺が淀川の川の下みたいな時に、群生した藤が始まりと言われてて。そんなに古いんですよ。足利さんとか、豊臣さんが…」
【兵動さん】
「近所の人ちゃうねん『足利さん』いうて。気軽な感じで。でもまあみなさん、いうたら時の権力者が」
【加茂さん】
「見物して回ったというのが逸話であって」
野田は、鎌倉時代から藤の名所として知られ、その美しさから室町幕府第2代将軍、足利義詮(よしあきら)や豊臣秀吉も見物に訪れたと伝えられています。
【兵動さん】
「歴史にノダフジが出てくるんや」
【兵動さん】
「ほんでね、昔の写真持っておんなじ所で写真撮るっていうコーナーですけど、もうね風景というよりも人になってもうて、これってノダフジですよね。これやってる人ってどなたか分かります?」
【加茂さん】
「藤をやってたら名前は聞いたことはあります。牧野さん。植物学者の牧野さん」
【兵動さん】
「植物学者の牧野さん?」
「日本植物学の父」と呼ばれる牧野富太郎は、94年の生涯において数々の新種を発見。「雑草という名の草はない」という名言と共に、実に1500種類以上の植物を命名しました。
【加茂さん】
「たぶん、『ノダフジ』っていう正式な学術名を付けはった人。(それまでは)『藤』っていう感じだったと思います。和名を正式に決めたのはこの方と聞いてます」
【兵動さん】
「この(写真の)方が牧野さんじゃないかと。この方が『ノダフジ』と命名して発表した人じゃないかと。はーなるほどな。大概のことを教えてもろたけど、おんなじ場所から写真撮らなあかんのですよ」
【加茂さん】
「詳しい人がいますので。『藤さん』っていうんです。名字が藤さんなんです。藤三郎さん」
【兵動さん】
「藤三郎!演歌の方みたいですね」
【加茂さん】
「冗談じゃなくて、本当に名字が一文字で藤さんなんです」
■「ノダフジ」に詳しい「藤三郎さん」にお会いする
今回は1935年頃に撮影された「ノダフジ」と「日本植物学の父・牧野富太郎」の写真。ノダフジに詳しい藤三郎さんに会うため、待ち合わせ場所の春日神社へ行きました。
【兵動さん】
「すごい、ノダフジがある。あ、すいません、藤さんですか?」
【藤三郎さん】
「藤でございます。よくお目にかかってます。懐かしい黒メガネで」
【兵動さん】
「懐かしいて…戦友やったかな、同級生やったかな」
【兵動さん】
「今、何をされてるんですか、これは」
【案内している人】
「『のだふじ週間』なので、ここで案内してます」
毎年ノダフジの見頃の時期に行われている「のだふじ巡り」。福島区内に28カ所ある「のだふじスポット」を紹介する活動を行っています。2023年は4月8日~22日に開催されました。
【兵動さん】
「先ほど商店街で聞いてきて、ノダフジにものすごい詳しい人がおると。その人が『藤さん』やいうて。そんなことあります?『藤三郎さん』やいうて、演歌歌手みたいなお名前で。なぜ藤さんはノダフジにすごく詳しいんですか」
【藤さん】
「実は私の祖先は600年ぐらいこの辺に住んでまして、ずっと江戸時代に、ここの藤を守っていたのがうちの祖先でして」
春日神社は、室町時代から続く藤氏の氏神。当時は広い敷地にノダフジがたくさん咲き、「野田の藤」として広く知られていたことから、「ノダフジ」という名前の発祥の地とされています。
【藤さん】
「今は『のだふじの会』の顧問をしておりまして、会員が30名ぐらいでね、福島区内の藤の管理をしております」
■写真は藤三郎さんのお父さんが撮った「牧野富太郎」とのこと
【兵動さん】
「今日ね、写真を持ってきたんですけども、この牧野さんという方がノダフジという名前を付けた人とちゃうかと」
【藤さん】
「そうです」
【兵動さん】
「この方?牧野さんで間違いないですか?」
【藤さん】
「間違いないです。これうちの父親が撮った写真なんですよ、実は」
牧野富太郎は明治44年に標準和名として「ノダフジ」と命名。その後、昭和10年頃に調査で春日神社を訪れた時、藤三郎さんの父親が撮った写真だったのです。
【藤さん】
「ツルが右巻きの“ノダフジ”と、ツルが左巻きの“ヤマフジ”の2種類あるんです。ツルの巻き方が違うんですね」
【兵動さん】
「ツルの巻き方で名前というか(種類が)“ヤマ”と“ノダ”に変わんねや。それを見つけて、ちゃんと発表したのがこの牧野さんや」
【藤さん】
「そうです。今NHKの朝ドラで『らんまん』っていう」
【兵動さん】
「神木隆之介さんがやってる役が牧野富太郎さんなの?そりゃびっくりしましたわ」
それでは、写真の場所はどこなのでしょう?
【兵動さん】
「ここのお家が写ってるのがあっち側やったんやね。はい、チーズ」
【兵動さん】
「すごかったです。ノダフジを初めて知ったという情けない話ですけど。みなさんも『ノダフジ見たい』と思われるかもしれませんが、花の時期がありますので、また来年にでもよろしくお願いします」
※福島区のホームページによると、「ノダフジ」は、例年4月中旬に見頃を迎えるということです。
(関西テレビ「newsランナー」2023年5月5日放送)