信長も楽しんだ「左義長まつり」 食べ物で作るまつりの“ダシ”が見もの うさぎの毛は“はるさめ” 駄菓子も駆使する見事な技に感動 【兵動大樹の今昔さんぽ 関西テレビ「newsランナー」】 2023年11月22日
【兵動さん】
「滋賀県近江八幡市に来ています。こちら『八幡堀』というお堀があります。屋形船があったり。ここになぜ堀があるかというと、昔、上の方に『八幡山城』というお城があって、その城の堀がこの八幡堀だったということです」
今回の写真は1957年(昭和32年)に近江八幡市内で撮影された写真です。どこの風景なのでしょうか?
【兵動さん】
「今日も古い写真や。まあお祭りでしょうね。真ん中に写っているのは軍配ですかね。何かがそびえている。それから将来大物になりそうな子供が写っていますよ。まず何のお祭りか聞いていきましょう」
■聞き込みのはずが、寒さのあまり温かいものがほしくなり…
聞き込み開始です。
【兵動さん】
「寒い。まだ雪が残ってるわ。近江牛の街やな。(『肉吸い』と書かれたのぼりを見て)これうまそうやな。ちょっと失礼します。『肉吸い』と書いてありましたけど、近江牛ですか?」
【お食事処ほたる 渡海育子さん】
「もちろんです」
【兵動さん】
「食べたいです。(近江牛の肉吸いをいただいて)う~ん、おいしい。おだしと近江牛の脂の甘みが混ざって。牛肉は柔らかいし、ちゃんと歯ごたえもあって、めちゃくちゃおいしい」
体も温まったところで、写真について聞いてみます。
【渡海さん】
「『左義長(さぎちょう)まつり』ですね。今年はもう作ってますよ。その年の干支を食べ物で作るんですよ。昆布とか出汁じゃこ、そういうふうなものを使って、その年の干支を作るんです」
400年以上続くという「左義長まつり」。町ごとに食材を使って「ダシ」と呼ばれる干支の飾りを作り、その出来栄えを競います。できあがった「ダシ」は、みこしのような左義長に据え付けて街を練り歩き、他と出会えば“けんか”に。祭りのクライマックスでは、火よけ・厄よけの願いを込めて、左義長を一斉に燃やします。
【渡海さん】
「(詳しいことなら)旧伴家住宅(きゅう・ばんけじゅうたく)ってあるんですわ。そこに左義長を展示してますわ」
■左義長まつりのダシを見せてもらい話を聞きます
教えてもらった「旧伴家住宅」を訪ねることにしました。
【兵動さん】
「この辺りは歴史的なものがいっぱいあって、風情がある。そしてここか『旧伴家住宅』。(入ってすぐダシが見えて)いきなりすごいな。関西テレビの番組で回らせてもらっている兵動です。これが…」
【旧伴家住宅 伊崎慎次さん】
「左義長まつりのダシです。これは展示品ですが、同じものを今作っています」
【兵動さん】
「干支を食べ物で作っていると聞いたんですけど」
【伊崎さん】
「よく見ていただくと、うさぎの白い毛は“はるさめ”ですわ。コイのひれはスルメ。背景にたまねぎの皮を使ったり。町内でやり方は違うでしょうけど、どこでもこういう風になっています」
【兵動さん】
「面白いな。左義長というのは何なのですか?」
【伊崎さん】
「左義長というのは全国どこでも正月にするお祭りです。(近江八幡の左義長まつりは)安土にあった信長の時の祭りを、八幡山城ができた時に近江八幡に持ってきた」
■今まさにダシを作っている現場も見せてもらいました
もともとは安土城下で織田信長も参加して行われていたという「左義長まつり」。安土城が落城した後、八幡山城を築いた豊臣秀次が、祭りを近江八幡に移したと伝えられています。近くに保存会があり、会長に聞けばよリ詳しく分かるのではないかということで、行ってみました。
【近江八幡左義長保存会 会長 中嶋勝行さん】
「こんにちは(奥から声がして)」
【兵動さん】
「びっくりした。ダシの牛がしゃべったのかと思った。見事ですね」
【中嶋さん】
「左義長は食材をできるだけ使う。神様に奉納するという形がありますので」
【兵動さん】
「(牛の飾り付けの)お花は唐辛子やマカロニ、ピスタチオの殻を付けてる」
【中嶋さん】
「亀の甲羅はスルメ。全面的にスルメを使ったようなダシも昔はあった。ええ匂いしました」
実はこの祭り、仮装をして参加するのが習わしなんだそうです。
【中嶋さん】
「昔は(男性が)化粧して女装するという。長じゅばんを着たり。織田信長も自ら眉を書いたり、いろんな衣装を着けたり、そういう派手好きな人物だったと言われます」
【兵動さん】
「会長は若い時、化粧とかは?」
【中嶋さん】
「私も花嫁化粧して、かつらかぶって、母親の着物を着ていました。若い時は本当に楽しかったです」
今回の写真は昭和32年に撮影された「左義長まつり」だと分かりました。今年の祭りに向けて、ちょうどダシを作っているということで、製作現場を見せてもらうことになりました。
【中嶋さん】
「今、たいまつのわらをきれいなわらにして、取り付けるといった作業をしていますね」
【兵動さん】
「これがダシの土台になるんですね」
【町内の人】
「手作業。(わらを)束にして、600ぐらい作るわけです」
「(3月の祭りに向けて作業を始めるのが)毎年1月から。1月8日、正月明けたらすぐ作り始める」
【兵動さん】
「(訪れたのは平日の午後だったので)日頃お仕事なさってますよね?」
【町内の人】
「してます。合間に(ダシ作りをしています)」
■兵動さんも驚き ダシ作りのスゴ技
奥に進むと、
【町内の人】
「(2023年の)干支がうさぎ年ですので、ここではうさぎを題材に作っているんです。ベースとなる部分は和紙で作っていて、例えば爪はスルメ」
【兵動さん】
「出た。要所要所にスルメや。みなさん職人さんじゃないですよね?」
【町内の人】
「みんな素人ですね」
【兵動さん】
「素人でこんな躍動感あるうさぎを作れるんですか」
こちらの町内で2023年に作るのは、チェコのプラハにある天文時計に2匹のうさぎをあしらった複雑なデザイン。町内全戸に公募して、保育園の子から50~60代の人まで、18個出てきたアイデアの中からこのデザインに決まったと言います。青を表現するための食材が大変だそうで…
【町内の人】
「いろいろ集めてきまして。駄菓子に視野を広げるとなんとかあるかなと」
【兵動さん】
「フリスクあるやん。ガムとか」
【町内の人】
「これを一粒ずつ並べるんです。去年の青地に黄色い線の模様は、黄色いところはスパゲティを並べて、青いところはひまわりの種なんです。一粒ずつ、1メートル80センチの丸に並べていって」
【兵動さん】
「これはすごいことや」
【町内の人】
「左義長が燃える時、たいまつも、台も、うさぎも全身全霊で作ったものが燃えていくさまを見ると、若い子は全員泣いています」
祭りのことがよく分かったところで、写真の場所を案内してもらいます。
【中嶋さん】
「八幡山がバックで、右に酒屋さんが見える。今も酒屋さんはあります」
【兵動さん】
「なるほど。山が全然変わっていない。はいチーズ」
【兵動さん】
「すごかった『左義長まつり』。聞けば聞くほど見に来たくなる。町のみなさんの熱い思い、ものすごくいいもんが見られると思います。そして今年、中嶋会長は花嫁姿になるんでしょうか?」
(関西テレビ「報道ランナー」 2023年3月3日放送)