実は…100年前から続くワインの名産地・柏原市 台風や気候変動の影響を受けた“規格外”のぶどうを活用 今も続くワイン醸造の秘密に迫る【兵動大樹の今昔さんぽ 関西テレビ「newsランナー」】 2023年11月10日
【兵動さん】
「今回はJR柏原駅前からスタートでございます。閑静な住宅地で、すてきな街です」
■たくさんのぶどう?何をしているところなのか
これは1977年(昭和52年)に柏原市内で撮影された写真です。どこの風景か分かりますか?
【兵動さん】
「これ何やろな。ぶどうなのかな。柏原(の特産品)は、ワインは聞いたことがあります。後ろでなんかやってはるのは、ワイン作りなのかな。(後ろに写っている)このたるを見ると昭和35年と書いているでしょ。歴史が古いのかな」
それでは聞き込み開始です。
【兵動さん】
「(写真を見せながら)昭和52年の写真なんですけど、柏原ってワインが有名って聞いたことがある」
【街の人】
「そうです。ぶどうから。(ぶどうも柏原が有名?)そうです。昔は日本一(のぶどうの産地)やったって話です」
【兵動さん】
「この辺で商店街みたいなところあります?そこで話を聞きたいなと思っているんですけど」
【街の人】
「オガタ通り商店街があります」
早速、教えてもらったオガタ通り商店街へ行ってみます。
【兵動さん】
「味のあるいい商店街。なんかいいのが出てきましたよ」
商店街に着くと、“シャインマスカット大福”と書かれたのぼりを発見。和菓子屋さんがありました。
【兵動さん】
「こんにちは。シャインマスカット大福ってどこにありますの?」
【和菓子司 草月 店員】
「これです。今フルーツ大福がはやってて」
【兵動さん】
「このシャインマスカットとかは、柏原のぶどうですか?」
【店員】
「柏原のぶどうの最盛期は終わったので。夏なんです。うちは、もともとシャインマスカットは長野産を使っています」
【兵動さん】
「長野の(ぶどうは)おいしいですよね」
【店員】
「いや柏原のもおいしいです!」
【兵動さん】
「両方おいしいわ。柏原のぶどうを使ったものは?“柏原ぶどうレーズンバターどら焼き”」
【店員】
「夏の間にデラウェアを干して、乾燥させて保存しておくんです」
柏原産のぶどうを使った自家製レーズンを作っているそうです。兵動さん、「せっかくやからいただこう」と、“葡萄の郷”というお菓子を購入しました。
【兵動さん】
「ココアとくるみの香りがして。うん、うまい!ココアの味の中に、ちょっと甘みと深みのある干しぶどうの味がマッチしてる。結構干しぶどうが入っているから食感も変わるし。これはおいしいわ」
ここで写真について聞いてみました。
【店員】
「カタシモワイナリーさんだと思います。(お店から)まっすぐ行って右側に行ってもらったら、カタシモワイナリーって(書いた)看板がずっと立っていると思います」
■年間約16万本のワインを製造するワイナリー
「カタシモワイナリー」という情報を得ました。教えてもらった通りに行ってみると…。
【兵動さん】
「電柱の上に“柏原ワイン”と書いてあるね。ぶどう狩りの案内図もあるで。知らんかったな。“柏原市観光ぶどうセンター”。ちょっと寄ってみようか」
柏原市観光ぶどうセンターと書かれた看板を見つけ、寄ってみることにしました。
【兵動さん】
「すみません。ここはぶどうセンターですか?」
【柏原市観光ぶどうセンター 職員】
「もう時期は終わってしまったんですけど、ぶどう狩りの受付とか(を行っている)」
柏原市では、8月中旬から10月初旬にかけてぶどう狩りが楽しめるそうです。
【兵動さん】
「来年の夏くらいに、ぶどう狩りをしたいなと思ったら、ここに連絡したらいいんですか」
【職員】
「そうですね」
【兵動さん】
「柏原のぶどうって、結構種類いっぱい作られてるんですか?」
【職員】
「そうですね。メインはデラウェアという小粒のぶどうです」
【兵動さん】
「夏になったらよく食べとった、子どもの時。おいしいやつや。ぶどうの生産(量)で言ったら、全国何位とかあるんですか?」
【職員】
「上位には。デラウェアに関しては生産量的にかなり多いかなと」
大阪府のぶどう収穫量は全国8位(令和2年)、デラウェアの栽培面積は全国3位(平成30年)だそうです。ここでも改めてカタシモワイナリーの場所を聞いてみると…。
【職員】
「この辺りも堅下(かたしも)の地域になるんですけども。ちょっと行って左に曲がったくらい(の場所)です」
「カタシモ」は地名のようです。ぶどうセンターを出て歩いていくと、「カタシモワイナリー」と書かれた看板を見つけました。築130年ほどの古民家を利用した、カタシモワイナリーの直売所です。早速訪ねてみます。
【兵動さん】
「(写真を見せながら)同じところから写真を撮りたいんですけど、皆さんがおっしゃるには、カタシモワイナリーさんちゃうかということで、来たんですけど」
【カタシモワイナリー 高井麻記子さん】
「これは若かりし日の父と祖父です。ここで間違いございません」
写真の場所はやはり、カタシモワイナリーでした。店内を見ると、種類豊富なワインがずらりと並んでいます。
【高井さん】
「全部うちで醸造しているワインです」
【兵動さん】
「こんなに?年間でどれくらい売っているんですか?」
【高井さん】
「作っているのは大小合わせて(年間)16万本くらい。めっちゃありますよ。ブランデーもありますし、ワインだけじゃないんですよ」
【兵動さん】
「(ブランデーを指し)“大阪ど根性スピリット”って書いてる」
【高井さん】
「社長のネーミングセンスです。(スパークリングワインを指して)たこ焼きに合わせてほしい大阪スパークリング。“たこシャン”っていいます」
【兵動さん】
「柏原で採れたぶどうで作っているワインがあったりするんですか?」
すると、店内のワインセラーを見せてくれました。
【高井さん】
「この辺のワインは自社栽培のぶどうで作っておりまして。大阪の契約農家さんで作ってもらっているぶどうで作ったワインですとか、あと、大阪だけだと天候のリスクがありますので、山形の契約農家さんに作ってもらっているぶどうで作ったワインもあります」
【兵動さん】
「ぶどう畑も持っているということですか?」
【高井さん】
「はい」
自社栽培を行っているぶどう畑を見せてもらうことに。
■明治に始まったぶどう栽培 そしてワイン作りへ
高井さんに案内してもらい、カタシモワイナリーから徒歩5分ほどの場所にある畑に向かっていると、直売所の駐車場の隅に大きなたるがありました。
【高井さん】
「この(写真の)たるの仲間かもしれないですね。(たるに)“202”って書いてますんで」
【兵動さん】
「お!これや!」
【高井さん】
「(写真に写っていたのは)これじゃないですかね。全部、税務署に(たるを)1本1本届け出ているんですよ。で、番号を振っているので間違いなく、この(写真の)たるが、この(目の前にある)たるです」
【兵動さん】
「ほんまや」
写真に写っていたたると同じものであることが確認できました。そして、ぶどう畑へ。
【兵動さん】
「うわ、すごいな。これ全部ぶどう畑?」
【高井さん】
「全部ぶどう畑です。この辺は100年以上前からずっとぶどう畑のエリアになります」
広大な土地にぶどう畑が広がっていました。畑の中に入ってみると、頭上に張り巡らされた棚に、たくさんのぶどうがなっていました。
【兵動さん】
「でもこれ、もう時期は終わっているんですか?」
【高井さん】
「はい、もう時期は終わっているんですけど、秋にイベントをしますので、そのために残しています。この(畑になっている)ぶどうをつまみながら、この畑で採れた(ぶどうで作った)ワインを飲むっていう(イベント)」
せっかくなので、畑になっているぶどうをいただきます。
【高井さん】
「(房の)肩のところがおいしいので、一粒つまんでみてください。(品種は)“マスカット・ベーリーA”といいます。日本にしかない品種なんですよ」
【兵動さん】
「めちゃくちゃおいしいです。果汁が口の中にあふれて、風味がすごい。柏原では、ぶどう作りはだいぶ前からしているということですか?」
【高井さん】
「はい。明治の中期にこの辺りを開墾(かいこん)しまして、そこからずっとぶどうを栽培しています」
昭和初期には、柏原市を含む大阪では、ぶどうの栽培面積で全国1位になっています。
【高井さん】
「最盛期には、山のてっぺんから駅前まで全部ぶどう畑で、家はほとんどなかったんです」
【兵動さん】
「そこから次はワイン作りに?」
【高井さん】
「ぶどうは年に1度しか採れないにも関わらず、台風や気候変動に弱いんですね。このままでは将来的に困窮するということで、100年ちょっと前にワイン作りを始めました」
1914年(大正3年)、規格外のぶどうを活用したワイン醸造を開始したのです。
【高井さん】
「もしよかったら、今年採れたぶどうのワインを飲まれますか?」
【兵動さん】
「いや、まぁ…断る理由はないですね」
ワインを勧められ、うれしそうな兵動さん。カタシモワイナリーの奥にあるミュージアム カフェ&バーでワインの試飲をさせていただきます。今年の夏に収穫した、大阪産のデラウェアぶどうで作ったというワインをグラスに注いでくれました。
【兵動さん】
「できたてや。おいしい。あ!最後の最後にここ(頬を指して)デラウェア(の味)になった!」
【高井さん】
「うまみが残りますよね」
【兵動さん】
「残る。昔、僕らが知っていた日本のワインというのは、甘いとか、がぶがぶ飲む感じなんですけど、幅が広がっているというか、いろいろな種類のワインを日本で作っているということを初めて知りましたね」
おいしいワインを味わったところで、肝心の写真の撮影場所について聞きました。
【高井さん】
「ちょうど、この建物の下なんです」
ミュージアムの下には、写真が撮影された醸造所があるということです。醸造所では、収穫したぶどうの実を、機械で軸から取り外し、タンクの中で絞ります。それを樽などにつめて温度管理をしながら発酵させていくのです。今回は特別に、発酵させる前の絞りたてを飲ませていただきました。
【兵動さん】
「絡みつくような…大人な感じ。ぶわーっと包み込んでくれるような、重みのあるぶどうの味がします」
それでは、写真の背景を教えてもらい、撮影です。
【兵動さん】
「はい、チーズ。柏原はぶどうもワインも有名です。すごく歴史を重ねて、いまだにワインを作られていて。これからもがんばってください。ありがとうございました」
(関西テレビ「newsランナー」2023年11月3日放送)