毎年、桜の物語をお伝えしている「関西桜ストーリー」。
今回は新型コロナウイルスと向き合う病院の桜です。
長年勤務した看護部長の最後の1日を見つめました。
美しく咲き誇る桜並木。
花を見上げた向こうには病院が見えます。
今日は、別れの1日。
【舞鶴医療センター・法里高院長】
「本当にありがとうございました。それこそ最後の年がコロナ・コビッドで振り回された年となりましたけど、お互いに印象に残る1年だったと思います。新井文子。ご苦労様でした長い間」
新井文子さんは、この病院の看護部長。
38年、看護師を務めました。
新井さんは、病院の敷地の中にある、看護学校の卒業生。
【舞鶴医療センター・新井文子看護部長】
「看護学校に入学する時に桜が迎えてくれて、また退職する人たちとかを桜が見守ってくれて…そんな桜かなって思いますね」
別れのあいさつに向かう新井さん、病棟には看護師の皆さんが待っていました。
【新井さん】
「舞鶴(医療センター)では18年間看護教員時代も含めて勤務させてもらいました。たくさんの教え子たちと看護部長として仕事ができて幸せでした」
看護学校の先生も務めた新井さん。
70人を超える教え子に囲まれて過ごした最後の1年。
みーんな、自慢の教え子。
【教え子の看護師】
「私、部長さんに戴帽式でナースキャップかぶせてもらったんです」
【新井さん】
「その重みをずっと忘れずに」
【看護師】
「寂しくなるなって思って、部長さん笑ってくれるから、いつも。いつもほっとしてありがたかったんです」
病院内の大きな桜の木の下、待っている新井さんの元に、一人の女性が駆け寄ってきます。
二人は、同じ看護学校を卒業した同級生。
【同じ看護学校を卒業した 奥野良子 看護師長】
「お互いに看護師長とか看護部長で、まさか会うとは最後を迎えるとは、(思って)なかった」
【新井さん】
「想像してなかったな」
この場所から始まった看護の道。
気づけば、38年が経ちました
最後に向かったのは、母校の看護学校。
【新井さん】
「始まりがここが看護の原点でスタートして、ここで終わりを迎えられてよかったなと思っています」
思い出が多く詰まった、始まりの場所。
お別れの挨拶も、ここでは涙がこみ上げてきます。
【教え子の看護教員】
「看護部長さん、きょうは新井先生と呼ばせてもらいます。いろいろ壁にぶち当たっている時には必ず先生が『大丈夫よ』と助言してくれた。今こうして、仕事を一生懸命にできているのもあの時先生が退学しないように止めてくれたからだと思っています」
【新井さん】
「やり切った感は自分の中にあるので、後は後輩に託すだけです。一段と今年、桜は綺麗かなと。コロナに負けないくらいの勢いで美しく咲いているなとすごく思います」
花束を抱え、病院から家へと帰る新井さん。