諄子容疑者の「怒号」 音声データに残る“国有地交渉” 2017年08月02日
学校法人「森友学園」を巡る補助金詐欺事件で31日、大阪地検特捜部に詐欺の疑いで逮捕された前理事長の籠池泰典・本名康博容疑者(64)と、妻の諄子・本名真美容疑者(60)。
森友学園は、補助金を申請する際、建築費が異なる3つの契約書を作成し、国や大阪府などにそれぞれ提出。
このうち、最も建築費の高い約23億円の契約書を基に、国から補助金約5600万円をだまし取った疑いがもたれています。
【逮捕前の籠池容疑者(先月20日)】
(Q故意でやったことではない?)
「仰るとおりです!仰る通りです!本当に仰る通りですよ」
これまでの取材で、不正を否定していた籠池容疑者ですが、23億円の契約書は、本来の契約金額を根拠なくほぼ1.5倍に水増しして補助金が満額支給されるよう作成された疑いが強いことが新たに分かりました。
捜査関係者によると、設計会社が文書で嘘の契約書を作るよう施工会社に指示していたとみられ、設計会社などの関与も疑われています。
しかし設計会社の代理人は「補助金を多く受け取ることにメリットはなく、籠池容疑者の指示であった」と証言しています。
籠池容疑者は、補助金の満額支給を狙って偽装したのでしょうか?
一方、最大の謎とされているのが国有地が8億円値引きされたワケ。
関西テレビが独自に入手した音声データには、森友学園と近畿財務局の池田靖前国有財産統括官とみられる男性の協議内容が残されていました。
【池田靖・国有財産統括官(当時)】
「出来るだけ早く価格提示をさせていただいて。私ども以前から申し上げているのは”有益費”(ゴミの撤去費用)の1億3000万円という数字を国費として払っている」
【諄子容疑者】
「それは当たり前やん」
【池田靖・国有財産統括官(当時)】
「その分の金額ぐらいは少なくとも売り払い価格は出てくる、と。そこはなんとかご理解いただきたい」
【籠池容疑者】
「(池田氏が)言っているような『1億3000が云々』というものよりも、ぐーんと下げていかなアカンよ」
国有地の売却額について、籠池容疑者側が工事を行い、後に国が支払った土地の土壌改良の費用にあたる「有益費」1億3200万円より安く出来ないと申し出た国側。
それに対し、籠池容疑者側がさらなる値引きを求めた音声が記録されています。
結局、国有地は「有益費」を回収するため、わずかに上回った金額で売却されました。
国側が落ち度を認めたことにより籠池容疑者側のペースで進んでいくこととなった売買交渉ですが、音声データには国側が限界まで価格を下げた「根拠」が、残されていました。
それが、籠池容疑者とともに逮捕された妻、諄子容疑者(60)です。
音声データに記録された複数の打ち合わせの、いずれにも同席していた諄子容疑者。
国側が持っている情報を明かさず交渉に臨む姿勢にしびれを切らして怒りをぶつけます。
【諄子容疑者】
「嘘つき!嘘つき!あんたの魂に呼びかけてやる!嘘つきめ!」
「こんな仕事ばっかりして余裕ありすぎて頭がおかしいんじゃ。何が余裕がないや。」
「それは器が小さいんや。己を反省せい。言い訳すな。」
「どこまであんたら根性腐っとんや、よくこんな無責任なこと言うなあ!鬼!」
国側を激しく非難する諄子容疑者。 その勢いはどんどん増していきます。
【諄子容疑者】
「ほんまにひどいわ。いいってもう、聴きたくないからもう!帰って、もう!帰って!ほんとにもう!」
夫の少し後ろに下がりながら、カメラの前では常に明るい表情を見せる、諄子容疑者。
運営していた塚本幼稚園の卒園式では、夫が逮捕されるかもしれない危機感から、必死に思いを訴える場面もありました。
【諄子容疑者】
「園長は、本当に、国のためにやってるんだから、こんな時ほど、内閣が切り捨てないでですね、助けてくださったらええんじゃないですか。自分も(安倍首相も)豚箱に入れといいたいです」
夫への思いからなのか、協議では国側を激しく批難し続ける諄子容疑者。
【諄子容疑者】
「一番最初この2人で脅されたんですよ。安くでっていうのに園長の耳元で『安くなるように』って言いながら結局高くやりよったんです」
【国側】
「あのちょっと・・・」
【諄子容疑者】
「うるさい、あんたの言い訳なんか聞きたくないわ!苦しい家庭の所をな、差し押さえやなんやそんな仕事してるから、この人、神経死んでるねん。あんたの言う事なんか聞きたくないわ。顔思い出しても腹立つわ」
時には夫婦2人で罵倒する場面も記録されていました。
【籠池容疑者】
「言ったことを『言わない』ところかから隙間が出てくるんだ」
【諄子容疑者】
「嘘をつくことが癖になっているからや。嘘つきは泥棒の始まりやから信用されへん」
【籠池容疑者】
「嘘に上塗りするから自分がどこで嘘ついたかわからなくなってるんや」
【諄子容疑者】
「信用されへんって怖いね」
そして協議の際、諄子容疑者はある言葉を頻繁に使い、国側に迫ります。
【諄子容疑者】
「その話も裁判になったらそないなんねん!国家賠償請求せなあかんやんなあ!」
「ほなほなほな工期遅れて、開校遅れて、6月の生徒募集もできへんということに対してはあんたらどうすんねん。損害賠償やろ」
諄子容疑者が怒りの感情とともに「賠償」という言葉を出す背景には、建設していた小学校の「開校時期」があります。
籠池容疑者は小学校を建設する予定だった国有地について、土地を購入する1年前の2015年に、国側と10年間の賃貸契約を結びます。
しかしこの契約後、地中にごみや有害物質があることを国側から伝えられた籠池容疑者は、土壌改良を行うため、2016年4月に予定していた小学校の開校を1年延期したのです。
【逮捕前の籠池容疑者(2017年2月13日)】
「有害物質を取り除くだけでも時間がかかって、一年開校がずれちゃったの。いまから国と話をして、定期借地の金額の交渉とかしていったら何か月かかるか分からない。もう一年ずらさないかんわと」
土壌改良工事が終わり、2016年3月に校舎の建設を始めるべく、籠池容疑者側が行った杭打ち工事の地中から、新たに生活ごみが見つかりました。
その後の協議では、籠池容疑者夫妻が新たなごみによるさらなる開校時期の延期を心配する様子が記録されています。
【諄子容疑者】
「工期は遅れますよね」
【大阪航空局】
「遅らさないようにスケジュールを…」
【諄子容疑者】
「遅らさないじゃなくて遅れていますよね。それはどうしてくれるんですか」
そして、開校時期がさらに遅れるようなことがあれば「賠償を求める」と国側を脅し始めるようになったのです。
【国側】
「(国有地を)いま全部きれいにするっていうのを考えるときに、今一度深さに焦点をあてて…」
【諄子容疑者】
「工期遅れたことに対する損害賠償もする。」
「だってもう時間間に合わへんやん!工期1年遅れてまた1年遅らせようとしてんの?」
別の日の協議では…
【諄子容疑者】
「…ほんまにひどいわ〜(泣く)。いいってもう、聴きたくないからもう!帰って、もう!帰って!ほんとにもう!あんたらのためにホンマに損害賠償や、こんなもんもうええって、帰って!」
捜査関係者は「近畿財務局は開校が遅れた場合の訴訟リスクを避けるため、破格で早期の売買を行った可能性がある」と話しています。
大阪地検特捜部もこうした経緯を把握していて、近畿財務局職員らの背任容疑について慎重に捜査しています。