立憲民主党・泉健太代表 提唱する「ミッション型内閣」2つのミッション 他党に呼びかける「連立政権」は実現する? 「憲法改正は優先順位低い」 民主党政権の反省は「多くを一斉に進めようとし過ぎた」【ホンネを聞き出せ! 話題の人をスズキが直撃 <第1回>】 2024年09月27日
関西テレビの東京駐在・鈴木祐輔記者が、今注目されている重要人物たちにじっくり話を聞き、ホンネに迫るシリーズをスタートする。
第1回の取材相手は、立憲民主党・泉健太代表。京都3区選出の関西議員である。
「政治とカネ」の問題で自民党への批判が渦巻き、野党第一党である立憲への注目が高まる…かもしれない。
取材テーマは「私の政権構想」。泉代表が提唱する「ミッション型内閣」や、避けては通れない「旧民主党政権の総括」などを通じ、政権奪取に向けた戦略について聞いた。
■提唱する「ミッション型内閣」 2つの優先課題
–Q.他の野党に呼びかけていますが、「ミッション型内閣」とは何でしょうか?
【立憲民主党・泉健太代表】「分かりやすく言えば、これだけ腐敗した自民党政権を変えねばならない。これが一つのミッションです。それだけでも『政治改革内閣』として成り立ち得ると思います。それ以外に『国民生活を豊かにする』ことも、新政権のミッションにしたいと思っています。何をするか分からない政権を作るのではなく、成すべきこと・実行することを明確にする。これが『ミッション型内閣』です」
–Q.政権を運営すると、色んな分野の出来事が後から後から出てきます。元々決めたミッション以外のことが起こった時、また「決められない政治」になるのではないですか。
【泉代表】「ならないですね、全然。今の自民党・公明党にしたって、ウクライナのこともコロナのことも予想はできないけど、国民生活を守るために対処するのは共通のことであって、できるのではないですか。なぜ我々だとできないの?できるでしょう。予期せぬことに対応するのは政治の常識、当たり前の責務なので、十分対応できます」
■以前の民主党政権 当時は「有言不実行」みたいに感じましたが…
–Q.自民党中心から政権交代となると、これまで細川内閣、羽田内閣、それから民主党政権が3代あったけれども、あまり上手くいった試しがない。総括しないといけない。泉代表はあの民主党政権をどう捉えているのか教えてください。
【泉代表】「一つは当たり前ですが、自民党の腐敗した政治を退場させることができた。既得権を一度壊すことができるだけでも、ものすごく国家的には重要な改革になります。
もう一つは、新しい社会像を示すことができた。自民党はようやく今、児童手当の所得制限を撤廃するところに戻ってきましたが、本来それは10年前に当時の民主党が示した姿です。当時からそれを進めていれば、我が国の今の姿というのはもっと変わっていたと思います。
もう一つ、政策の優先順位を変えることができた。まさに『コンクリートから人へ』とか。当時の政権交代によって、少なくとも予算の使い方や優先順位が変わり、それはその後の自民党政権においても大きな影響を与えてはきていると思いますね」
–Q.そういう部分もありましたが、「いつも揉めていて決まらない」とか、マニフェストが「やってみたら上手くいかなかった」とか、“ガソリン値下げ隊”といっても結局「下がりませんでした」とか。「有言不実行」みたいに当時の国民は感じたと思います。
【泉代表】「僕から見ていても、あまりに掲げる政策を増やしすぎたと思っています。官僚の抵抗もすごいし、各業界団体だって事業仕分けの時にはすごい抵抗があった。『この4年間でやろうと思っていた政策をもう1回整理させてほしい。優先順位をつけて10年間でやらせてほしい』といえば、僕は理解されたんじゃないかと思うけど。当時はみんな肩に力が入って、全力で自分たちの抱えた政策を、純粋に同時進行で一斉に進めようとしたので、政治的体力は失われていった。ここは大きな反省・教訓ですね。
実はミッション型内閣で、何でもかんでも、政策やスタンスを合意して全部やろうとするのは間違いだと思っています。20~30の政策を約束してやらないよりも、5つの政策を約束して必ずやる政権の方が信頼もされるし、安定もするし、役に立つ。そう思っています」
■「憲法改正」の優先順位は低い
–Q.憲法の改正をめぐって維新がよく立憲を批判してくる。維新の人たちに必ず問われると思います。「憲法改正を進めるのか・止めるのか」みたいに。どうお考えですか?
【泉代表】「物事には優先順位がある。第一は『政治腐敗をなくす・政治改革を行う』。そして第二は『国民生活を豊かにすること』。まずそれだけでも任期いっぱい使うぐらい、非常に重要な改革があります。
その意味では、憲法改正は優先順位の上には来ないです。国民の皆さんが、新しい政権でやってほしいことの中に、どれだけ『憲法改正』が優先順位として入っているのかですよ。僕にはそう見えない。
自分たちの政治的目的で政権を担おうというのではなく、国民の望む改革を最優先にする政権を作ろうじゃないか。僕らはやっぱり国民目線の政権を作りたい。必ず教育の無償化を実現する、必ず(ガソリン税の)トリガー条項を発動させる。まさに国民の皆さんに利益のある政権を作りたい」
–Q.他の野党が「ミッション型内閣」を批判する中で、よく「基本政策は最初に一致しておかないと」と言います。新政権については折り合えると思っているのですか?
【泉代表】「意地を張らなければ、折り合うことはできるんじゃないですか。むしろ、『ここの政策が合わなければ新しい政権を作れない』と言ってしまったら、いつまでたっても自民党の延命を許すことになる。党を一緒にする必要はないので、ある種、最大公約数で国民の皆様に納得していただけるレベルの政策を共有していけばいいことだと思います」
–Q.今の日本の、外交的立ち位置とかは。
【泉代表】「変えなくていい。これまでの外交関係や安全保障政策を、どぎつくひっくり返すような政策まで、各野党が一致するんだったら盛り込むかもしれないけど、一致できないんだったら盛り込めないってことですよ。ということは基本的に現状を維持するということです」
■「与党惨敗」となれば…その時どう動く
–Q.次期衆院選で自公が「過半数割れ」になったら、代表はどういう動き方をされるのか?
【泉代表】「自公過半数割れになれば、それが国民の意思、今回の選択であったということ。過半数割れした自公政権をアシストするような行動になってはいけない」
–Q.自公政権の中でも、政治とカネについては、公明党から自民党に対して、色々注文するシーンがあります。公明党に来てもらうこともあり得るのか、あり得ないのか?
【泉代表】「自民党が政権与党でなくなった時に、じゃあ公明党が次どう動くのか、自民党と同じ穴のムジナになってしまうのか、それとも改革勢力側として行動をするのか、決起をするのか。そこは公明党さんにも問われているんでしょうね」
–Q.ミッション型内閣について維新の藤田幹事長が「立憲にとって都合のいい話だ」と言った。維新のウケはあまり良くない気がします。
【泉代表】「維新さんは、次の選挙で政権を担うことを怖がってはいけない。覚悟を持たなきゃいけない。それは国民の声であるということを、多分より認識する必要があるんだと思います。『都合のいい話』だとは全然思っていません。立憲民主党の政策だけを実現しようと思ってはいないからですね。とにかく本気で自民党の腐敗政治を変えるつもりがあるのか。国民生活に資する政策を同時に実行する覚悟があるのかどうか。問われているのはそこだけであって、各政党の損得ではありません。それは多分、実は維新さんも分かってきているんじゃないかと思います」
■「政治とカネ」の問題 決別できますか
–Q.今、問題になっている「政治とカネ」。どうして起きるのでしょう?
【泉代表】「『権力は腐敗する』という格言がありますが、必ずその権力に預かろうとする様々な業界団体や人物が接触を試み、その過程で政治家に便宜を図ろうとする人たちも大勢出てくるわけです。政治献金を受け取り、既得権を守ってきたことが、むしろこの国を遅らせ、現場で働いている方々を後回しにし、成長力を削いできたと思います」
–Q.国会で「お金を届けてくれない分野の政策が遅れている」と指摘していましたが、分かりやすく説明してください。
【泉代表】「例えば、シングルマザーの皆さんが業界団体を作って多額の献金ができるか?できるわけがない。障害者団体は全国団体がありますが、多額の献金をしているか?しているわけがない。お金をもたらしてくれる方に向いて、実際の生活者の困っている声に寄り添ってこなかった。それが国民全体の活力を奪っていった」
–Q.立憲の政治改革案では、企業団体が献金、パーティー券を買うことを全部禁止すると踏み込んだ。なぜですか?
【泉代表】「本来の政治の姿は、無駄に異常に金をかけなくても活動ができるはずで、しかも政党助成金をいただいている。我々はパーティーを禁止しても大丈夫。企業団体献金を廃止しても大丈夫。当然、連座制も導入していいし、政党の不透明な資金である『政策活動費』も廃止して大丈夫。岸田さんは『政治活動の自由が侵される』とか言っているけれど、むしろその方が政治の透明性が高まります」
■「総理大臣」になる その決意も覚悟もある
–Q.最後に伺おうと思うのですが、泉代表ご本人が「内閣総理大臣」になるという決意・覚悟、そういうものがあるのかどうか?
【泉代表】「当然です。当然です。岸田総理を見れば、なおのこと」
–Q.どんな政権を将来的に目指すのか。一筆書いていただこうと思います。
【泉代表】「ミッション型内閣とは、『政治改革&国民生活向上内閣』です。政治家目線ではなく、国民目線。国民の望むことを必ず行う政権。これを作るということです」
–Q.特にポイントとなる政策は?
【泉代表】「大きくは『人への投資』。まだまだ弱いということですね。岸田さんの『異次元』は、異次元ではなかったということです。だから教育の無償化を進める。児童手当も第一子から額を引き上げていく。こうした子育て・教育への投資が、今後の日本の成長を支えていくと考えています」
–Q.代表の思いは熱いけれども、党内で「ミッション型内閣」という言葉を使って語る人ってあまりいない。もしかしたら代表だけではないか。党内みんな一致した意見ではないのでは、という気がする。いかがでしょう?
【泉代表】「やはり所属議員みんなが、まだ『政権を担う』って想像をしていないところはあるかもしれません。けれども、トップが示すことで広がっていくものだと思っていて、より強く訴え続けていきたいですね」
~取材を終えて~
政権交代を目指す立憲民主党にとって、結党以来最大のチャンスが到来している。泉代表は「夢物語」を語らず、「現実路線」を模索しているように見えた。「都合のいい話」や「絵に描いた餅」と他党から批判を浴びるミッション型内閣構想は、党内外との様々な議論を経て、さらに磨かれていくのだろうか。今後も取材を続けたい。
(関西テレビ報道局 東京駐在記者 鈴木祐輔)