成人年齢引き下げで“解禁”の18歳AV出演 2年以内なら契約解除を可能に 与野党が1カ月でまとめた素案 立憲民主党・山井議員に訊く! 2022年05月17日
東京駐在のカンテレ記者が、キーパーソンに取材するWEB特別レポート。
今回は、立憲民主党・衆議院議員の山井和則氏です。
先週、与野党6党は「AV(アダルトビデオ)出演被害防止・救済法案」の素案をまとめました。素案には「出演者に性行為を強制することができない」と明記しているほか、性別・年齢を問わず、無条件で契約解除できる期間を「公表後1年間」と定め、当面は経過措置として2年間解除可能としました。一方で、当事者からは素案の中身について課題があるという声も聞かれます。
成人年齢の引き下げから約1カ月。異例のスピードでまとまった、この法案の“ポイント“について訊きました。
■2年以内なら無条件での出演契約解除が可能に 泣き寝入りしないで!
―――Q:この問題は、AVなど性産業に関わったことで悩みを抱えた人を支援する団体などが、成人年齢引き下げによって18歳高校生のAVの出演が実質的に“解禁”され、性の搾取の被害が拡大するとして警鐘を鳴らしたことで広がった。およそ1カ月で法案がまとまりましたが、ポイントやこだわった点は
契約や出演後でも、契約を解除し、販売を停止し、AVを回収する権利が被害者に保証されたことは画期的です。いわゆる任意解除権を被害者に保証することが最大の救済のポイントです。なぜなら、現時点では一度契約し、出演してしまうと、そのAVの販売を停止することは非常に困難だからです。しかし実際には出演した後で家族や友達にばれたりして学校を辞めたり、会社を辞めたり、自殺をされたり、人生が破壊されかねない被害を受けて、販売停止やAVの回収をしてほしいけれどそれができずに泣き寝入りするなど被害が急増しています。背景にはコロナがあります。被害者の支援団体などによると、長引くコロナ禍でアルバイトがなくなった学生さんや仕事が減ったシングルマザーの方が高収入のアルバイトを求めるあまり半ば巧妙にだまされるような形でAVの出演に追い込まれる被害も急増しているということです。
―――Q:この法律が成立すれば被害の防止は一定担保されますか
今回の法案は画期的です。被害者を守る強力な武器になります。最大のポイントは出演を契約し販売された後でも、当面は2年以内なら無条件で契約を解除し販売を停止しAVを回収できる任意解除権を創設したことです。これにより、契約やAVの販売後「やっぱり販売してほしくない、回収してほしい」と思ったときには無条件で販売停止、AV回収が可能になります。実際には巧妙な勧誘などにより、あたかも自由意思で契約し撮影したかのような場合でも後になって後悔するケースが続出しています。この問題の深刻さは一回の契約でAVに出演したら一生そのビデオが世の中に残り拡散しかねないことです。そしてそれはその被害者の人生を時には破壊する被害を与えかねず、進学、就職、結婚などの大きな障害になっているケースの相談が多く寄せられています。今までは一回契約、出演をしてしまったら販売停止、回収をすることは極めて困難でしたが、今回の法律が成立したら、当面、今後2年間は無条件に任意解除ができることを多くの国民に知ってほしいと思います。だから一度契約して出演してしまっても泣き寝入りする必要はなくなります。
■進学・就職・結婚で大きな障害に 深刻な問題だと捉えている
―――Q:意義は理解する一方で、ある意味でAV業界への差別のようにも感じますが、その点はいかがですか
なぜ任意解除期間が2年間もあるのかというと、一つは、AV出演が被害者の人生にあたえる影響があまりにも大きすぎる。契約時には自由意志と思えても、半年、1年と年月がたつと、巧妙にだまされていた、断れないように追い込まれていたということに気づく被害が多数報告されています。AV出演契約は一般の商品を買うというような契約とは事の重大性が全然違うということで、AV出演契約に限ってこのような被害者の強力な救済措置が必要だと判断しました。残念ながら一回の契約、撮影を苦にして自殺された方もいると聞いています。それくらい深刻な問題だと捉えています。
―――Q:この問題に取り組んでイメージと実態の違いなどはありましたか
AVに関しては数年前から社会問題になり、「AV出演強要問題」と言われていました。つまり、だまされたり脅されたりして出演を強いられたケースが問題だと言われていました。しかし、今回、私たちも政府も「AV出演強要問題」ではなく、「AV出演被害問題」だと呼び方を変えました。その理由は、強要でなくても言葉巧みに洗脳をしたり、断りづらい雰囲気にすることよって、その時は自由意志であるかのような契約であっても後で振り返ると意に反した結果になり、自分のAVが出回ることで取り返しのつかない被害を受けるケースが多いということです。それが今回一番ショックを受けたことです。
―――Q:このスピードで法案がまとまったのは異例
刑罰を伴い、被害者を救済する議員立法が1カ月余りでまとまったことは前代未聞です。その理由は、被害者の支援団体が訴えた、「未成年者取消権がなくなり4月以降被害者が急増する」という危機感を超党派の国会議員が共有し、かつ、救済する法律を作らないと、多くの方の人生が破壊されかねないと危機感を持ったからです。これは、これまで政府でさえ逃げてきた問題で、担当官庁もあいまいで、本来、救済法は政府が法律を作るべきものです。しかし今回、被害者支援団体が声を上げたことで、多くの被害の実例の酷さを聞き、「議員立法でやるしかない、一刻の猶予もない」と、超党派の議員が危機感を共有しました。
■法案に対しては反対論も・・・ スピードを重視して被害者救済に限定した議員立法
―――Q:一部素案に対して不十分だと反対する声も上がっていますが、その点は
反対論は2つあって、1つは「そもそもアダルトビデオは人間の尊厳を汚すから禁止するべきだ」という批判、もう1つは「少なくとも性行為を伴う契約は禁止するべき」という批判です。私は個人的には両方とも賛同します。しかし、それらを禁止する法律を作るとなると賛否両論や様々な論点があり、今すぐに法制化をしようとすると法案の成立が遅れてしまうから、今回は緊急の第一歩として被害者の救済に限った議員立法にならざるを得ませんでした。今後、人間の尊厳を汚すようなAVの規制については政府も議員も議論をしていく必要があると思います。
―――Q:今後の流れは
補正予算の審議もあり、不確定な部分もありますが、6月上旬には何としても超党派で成立させたいと思っています。
(関西テレビ東京駐在記者・原佑輔)