東京駐在のカンテレ記者が、キーパーソンに取材するWEB特別レポート。
今回は、公明党・政務調査会副会長で衆議院議員の浮島智子氏です。
文科副大臣などを経て、現在3期目。
掘り下げるのは、児童生徒への“わいせつ行為”で懲戒免職となった教員を教育現場に戻さないようにする新法です。
浮島議員は与党のワーキングチームの共同座長を務めています。
■今日“も”服を脱ぐように言われた こんな教員は絶対に許せない
――Q:新法について検討状況を教えてください。
今は、ようやく条文案が固まり、野党にお示ししたところなんです。今国会での成立を目指して奔走しています。
――Q:浮島議員の問題意識の出発点は。
現場の声を聞いて、質問をずっとしてきたんです。
被害にあった子供の話も聞いたんですけど、その時は分からないんです。
小学校の3年生、4年生、5年生ぐらいだったら分からないんですよね。先生に可愛がってもらった。良くしてもらったと思っていて、少し大人になって考えると、あれっておかしいよねと気づく。自分が信じた先生に、そういうことをされていたんだと後になってから分かる子もいました。
現場の声で、私がもう絶対にこんな教員は許せないと思ったのは、特別支援学校の女の子のケースです。4年生の女の子なんですけど、お家に帰ってお母さんと楽しく普通の会話をしていた時に何気なく、「お母さん今日もね」、今日“も“って言ったんです。
「今日もね、先生に呼ばれて、先生の所に行ったの。そうしたら、先生に今日もね、お洋服を脱ぎなさいって言われたから、今日も服を脱いだら、先生が今日もよーく見てくれたの」って言うのよ。それで親はびっくりしちゃって。
「今日もねって。先生の前でいつもお洋服を脱ぐの」って言ったら、「先生にそう言われるから」って。その子は先生が悪い所がないか、自分の体をよく見てくれていると思っている。分からないと思って、そういう子にそういう行為をするわけでしょ。そんなの絶対許せないじゃないですか。
だから絶対に駄目だっていうことで、国会で質問をし続けてきたんです。
文科省の方で、閣法(内閣が提出した法案)でやるって言って、ずっとやってきたんですけど、憲法に規定された「職業選択の自由」とか厚い壁があって出来なかった。去年の12月25日に大臣が断念したという会見を開かれて、そのときに私は、何でって、そんな今現在困ってる子供たちがいるのにって。
■教員免許失効から3年で再び教壇へ 教育委員会が拒める仕組みを導入
――Q:閣法で出来なかったことを議員立法で実現しようとしていますが、新法のポイントは。
現行の教育職員免許法では、懲戒免職で教員免許が失効した場合、3年で再び取得することが出来るんです。
教員免許でわいせつな行為をして、3年間経って、また教員になりたいですって言ったらなれちゃう。お墨付きの免許をあげるわけでしょ。なんで、わいせつ行為をした人に「はい、どうぞまた教壇に立ってください」って、私おかしいと思うんですよ。
だから、教員免許を与える側・都道府県の教育委員会に裁量的拒絶権を与える仕組みを考えました。3年後に、もう1回教壇に立ちたいですって言ったときに、授与権者が、この人は本当に二度としないなっていうのが、確実に分かるのであれば与えていい。医師免許もそうで、同じにしたんです。これで「職業選択の自由」の問題は解消されるわけです。
――Q:娘が小学校に通っているんですが、ほとんどの先生は、本当に一生懸命児童と向き合ってくれてる。これは間違いない一方で、今回の新法も我がことと捉えています。教員の性暴力の問題に取り組み始めたのはいつから。
1期目の途中ですから4、5年前からです。今回、刑法とは異なって、13歳以上であっても、生徒については、この同意の有無に関わらず、全部これは駄目だっていうことを入れたことが大きなポイントなんです。
どういうことかというと、刑法177条の「強制性交等罪」は条文に13歳以上のものに対し、「暴行又は脅迫」を用いて性交又は、と書いてあって、13歳未満については「暴行又は脅迫」が不要となっています。
ただ、新法では刑法とは違って13歳以上で本人の同意があったとしても、この「児童生徒性暴力」であると規定したことが大きなポイントなんですね。
――Q:児童生徒性暴力というのは
新法では、本人の同意の有無にかかわらず、教員による児童生徒への性交やわいせつ行為を「児童生徒性暴力」と呼ぶことにして、「教職員等は児童生徒性暴力をしてはならない」という禁止規定を入れました。その上で、教育委員会は、懲戒処分の適正かつ厳格な実施の徹底を図るとともに防止のために必要な措置を講ずる責務があると明記しています。
■わいせつ教員の情報 データベース化し閲覧できるシステムを整備
――Q:データベースの整備についても教えてください。
文科省に官報の検索ツールがあるんです。
懲戒免職によって、教員免許が失効したら、その理由や失効年月日の情報を検索することが出来るんですね。ただ、タイムラグがあって、官報に載せるまでに2,3カ月かかるんですよ。だから、そのタイムラグがあると、他の県に行って、そこで子供に関わる仕事に採用されるというケースがあるんです。
今回盛り込んだデータベースの整備っていうのは、それに対抗する仕組みで、ある先生が懲戒免職になったら、氏名や処分を受けた事実や理由に関する情報を即日アップできるようにしていこうと。そしたら他の県に行こうと何しようと、この人が辞めてきた理由はこれなんだと分かるようになりますよね。
――Q:事実が発覚しました、調査をしました、懲戒免職になりました。今だと、官報に載るまでに、2,3ヶ月タイムラグがあると、別の県で教員をやりたいと手を挙げたらなってしまう。
なれちゃう。今はだめ。だからそれを止めるのには、そのタイムラグをなくして新しいデータベースの整備をして、即刻ちゃんと載せるようにしていくということを今回ちゃんとやっていくということが大きなポイントですね。
――Q:教育委員会がアクセスできるデータベースを一元化して作る。
そうです。
――Q:都道府県の教育委員会ごとの連携はどう進めるんですか。
文科大臣が、基本指針を策定するとなっていて、ここが大きいと思うんです。
各都道府県がバラバラじゃ困るんで、ルール作りをこれからしっかりやってかなきゃいけない。
■子どもに関わらない仕事を選べばいい 新法が抑止力になれば
――Q:結構タイトなスケジュール。
皆さん驚かれてるのが、私がこの問題意識を持って大臣が去年の夏くらいに閣法でやるって言われて、それでも12月に断念されて、それからいやこれは議法でやろうって決めてから、自民党の先生方にもご相談させていただいた。じゃあやろうということで3月1日から始めて、2か月でここまで来たのは前代未聞の早さだと思いますよ。だからすごいみんなが驚いてて、議員立法ってこんなに早くできるもんなのって言うんです。
この新法ができたら、わいせつな事をしてる先生がいるとしたら、これやばいよ、法律出来ちゃったよって抑止力にもなると思うんです。
国会の質問の中で、言ったのは、これ病気ですから。アルコール依存症と一緒で、アルコール依存症の方がバーでバイトをしてて、大好きなお酒が目の前に並んでて、みんな飲んで楽しそうに話してる。我慢できますか。それと同じなんですよ。
――Q:性善説に対抗した形ですね。
多分昔は、教員がそんなことするわけないって、なってたんでしょうね。
だって、こんなことすると思いたくないじゃないですか。でもそこにグレーゾーンがあって、みんなが壊せなかった。私としては、個人としてはそういう行為をした教員が、また、3年ではいやりますって言った時に、どうぞって。国からのお墨付きをあげることは絶対できない。
その人の、職業選択の自由って言うけど、他の職業につけばいいじゃないですか。
別に子供に関わる仕事じゃなくて、他の仕事をやればいいわけで、そこを拒否してるわけじゃないし、それこそ職業選択の自由なんだから。
ただ子供に関わるものは駄目ですよ。
――Q:今回すごく知恵を絞ったんですか。
絞りました。だって1回閣法でできないって言われたことをどうやって穴を開けようかっていうんで、もういろんな過去の法律を調べて、どこかに穴を開けられる場所がないかって。
それで色々な免許法を調べていく中で、人と関わるものは何十とありますけど、調べた中で、手を挙げたらもらえちゃうのは教員免許しかないじゃない。
あとはシンプルです。
――Q:だから裁量的拒絶権という考え方を教員免許に入れることで、解決策を見つけた。
そうです。