1月26日、150人以上の患者が歯科クリニックの運営会社などを相手取り、総額およそ2億円の賠償を求め提訴しました。
トラブルのきっかけは、「実質無料」をうたった歯の矯正でした。
被害者弁護団 加藤博太郎弁護団長:
「こういったすきっ歯。歯が何本も抜かれている状態で放置されていると」
訴状などによると、東京・京都・福岡に展開する歯科クリニックは、治療費は患者がローンを組んで支払うものの、モニターになれば報酬が支払われ「実質無料」になるとして患者を集めていたということです。
しかし、報酬はほとんど支払われずローンだけが残る形に。さらに治療が途中でストップしたほか、ずさんな治療で健康被害を訴える患者も…。
30代の被害女性:
「イッと口を開けたときに、上顎が左、下顎が右にずれています。薄っぺらいものに関してはかみ切れない状況です。借金も残ったまま健康被害も残り…この先どうしていいか分からない状態です」
京都で治療を受けていた人は…。
被害を受けた女性:
「一括で最初に154万円必要ってことを言われて。でも、私はまだ学生だったのでローンも組めないですし、提案されたのが父親で銀行からお金を借りて支払う。その後モニターの広告費としての月4万7千円ほどは銀行に振り込まれると言われて、それが4カ月ほどでなくなってしまったので、ローンは130万円くらい残っています」
一方、歯科クリニックの運営会社は代理人弁護士を通じて「当社が関与しているモニター契約については、責任を持って支払いをしていく所存です」とコメントしていますが、銀座のクリニックでは解体工事が進められていました。
被害者弁護団 加藤博太郎弁護団長:
「本件は、美に興味がある女性をターゲットとした、いわゆるモニター商法。詐欺的なモニター商法だったと考えています」
こうしたモニター商法に街の人は…。
女性:
「え~!歯医者さんで!?歯医者さんがそんなんしてるって思わない」
別の女性:
「タダほどおいしい話はないっていうのを、結構親世代からすり込まれてるので」
悪質なモニター商法の被害からどう身を守るのか。もしもの時に知っておきたいポイントについて、菊地幸夫弁護士に伺います。
菊地弁護士:
「今回の事案で言えばモニター報酬が止まれば、治療契約も無効になります。普通は契約というのは、それぞれの効力はそれぞれで考えるというのがスタートラインなのですが、今回は運営会社と歯科クリニックがつながっているのではないかという事情があります。
被害者の方がおっしゃっていたように、モニター報酬があるから治療をお願いしたんだという、要するに契約の条件になっているわけですね。そうすると親亀、子亀というような感じで、片方が転べば両方転ぶという形。モニター契約のほうを解除とすれば、治療の方もなくなるという形で、もう残りの治療費は支払い義務なしになる可能性はあるのだろうなと思います」
――もし全額支払いを終えている場合はどうなるのでしょうか?
菊地弁護士:
「その場合はクリニック側に『返してください』という返還が請求できます。あと、治療が中途半端で被害が残ったままという場合は『損害賠償』というような形になるかと思いますが、今回は支払い能力があるかどうかが大きな問題ですね」
――被害者がローンを組んで、ローン会社からクリニックに治療費が支払われていた場合はどうでしょう?
菊地弁護士:
「個人で直接治療費を払っていた場合と比べると、ローンを利用していた場合は治療を受けた人と、クリニック側にお金を支払う人が違います。別々に考えれば、片方がダメになってもローンの支払いは続けなければいけません。もうローン会社はお金をクリニック側に払ってしまっていますので。
ところが、治療やモニター報酬の件で重大な契約違反があると、組んだローンの支払いを拒否できると法律で認められています。ただこの段階ではストップだけなので、最終的には治療やモニター報酬の契約が解除となり、ローン会社側の契約もなくなるということであれば、既に払った分があれば『それも返して』と言える可能性も出てきます。ローン会社としてはクリニックの運営などをちゃんとチェックする義務もあります」
――こうしたモニター商法の被害に遭わないためにはどうしたらよいのでしょうか?
菊地弁護士:
「知っておくべき消費者を守る“解約”のルールとして、『クーリング・オフ制度』があります。『欠陥商品だから』などといった理由はいりません。『やめたい』でOKです。ただ一定期間しか使えないという、特効薬みたいなものです。例えば今回のモニター商法という場合には契約から20日間という短い間でしかできないので、もしやめたいと思ったらできるだけ早くやってみましょう。
クーリング・オフの期間はあるのですが、例えば不実告知=ウソがあった場合や、クーリング・オフ制度の説明がちゃんとされなかった場合などは、この期間を過ぎても契約をなしにするということもできますので、覚えておいてください」
(関西テレビ2月1日放送『報道ランナー』内「菊地弁護士のニュースジャッジ」より)