広告業界の大手「電通」、さらに「博報堂」、「東急エージェンシー」などに次々と家宅捜索に入る黒いスーツの人たち。東京地検特捜部と公正取引委員会の捜査員です。
東京オリンピックの開催前に行われた「テスト大会」に関連する大会組織委員会が発注した入札で、事前に複数の企業の間で「談合」が行われた疑いがもたれているのです。
先週、広告大手の「ADK」が、課徴金が減免される制度を使い違反を自主申告したことなどから疑惑が判明しました。
ADKホールディングス 大山俊哉社長:
「(Q.談合があったというのは?)我々が言える状況ではございません。
(公正取引委員会に自主申告した?)ノーコメントです」
事業は電通など9社と1つの共同企業体が総額5億円余りで落札していますが、大会組織委員会の幹部も受注の調整に関わっていた疑いが持たれています。
今回、浮上した談合疑惑。スポーツイベントの運営などに詳しい専門家は、今後与える影響は大きいと話します。
立命館大学 産業社会学部 中西純司教授:
「選手は一生懸命公正なルールで競争している中で、裏舞台ではこういうイベントのマネジメントが行われていたとするならば、スポーツイベントの価値を下げる。今後、日本でメガスポーツイベントを誘致する場合、公正なロビー活動ができるのかどうかっていうのも極めて重要な焦点になってくるように思います」
スポーツ界のみに限らず、建設工事などの公共事業で度々起こる談合事件。ところで、この「談合」について説明できるかどうか、街で聞いてみると…。
女性:
「あ~わかんないわかんないわかんない」
別の女性:
「みんな集まってアレするやつ、今年はアンタしーや、来年はアンタしーやいう意味でしょ?」
また別の女性:
「独占してそこだけの企業が利益を出すから、他の会社は倒産する可能性もあったりして談合はダメなんですよね?」
Q.誰が調べていますか?
「公正取引委員会ですか? ドラマの『競争の番人』でやってて(笑)」
よく耳にする「談合」は何がダメなのか、また私たちに与える影響とは…。菊地幸夫弁護士に伺います。
菊地弁護士:
「ポイントとしてまとめると『話し合いで悪だくみ 目的は儲けと安定』ということになります。例えばうちが1500万円で落札するので、あなたの社は2000万円で入札してということになると、ライバルがいなくなって儲けを独り占めできます。
もう一つの安定は何かというと、例えば2000万円で入札した社が『次回は我が社で』と、みんなで仕事を回しあって、どこかで仕事にあずかれるということです。
こういうことをやると自治体などが本来なら安い価格で契約できたのが、できなくなるということで、独占禁止法とか刑法の談合罪などで禁止されています」
――一方、自治体などの発注者側も談合に関与することがあるそうですね?
菊地弁護士:
「国や自治体などの発注者側が関与する官製談合ですね。先ほどの談合というのは入札する業者側がみんなで相談し合うということでしたが、それが禁止ですとなると、どうしても落札したい企業は発注側に働きかけると。で、例えば予定価格が内緒の場合は『教えて下さい』とか『私のところだけにお願いします』とか言ってお礼つまり賄賂を持っていくなどということがあります。
また、発注者側も想定している契約金額と事業者側が考えている金額がマッチしなくて誰もその金額に届く入札がなく、不調になってしまうと、いつまで経っても契約者が決まらない。そうすると工期がどんどん後になってしまう、何とかスムーズに決めたい…という欲求がマッチングして、そっと裏でやる官製談合が起きる可能性が出てきます」
――最後に、談合があると私たちの生活にどんな影響があるのでしょうか?
菊地弁護士:
「談合で動くのは私たちのお金、税金なんですね。先ほどの例ですと、国や自治体などがやる入札のような場面です。そうすると『この建物、競技施設を作って下さい』という代金は我々の税金。それが高い金額で契約されてしまうと税金の無駄遣いになってしまいます。
それから、談合ということになると公正な競争が阻害されてしまうということで、他企業が新規参入できず日本経済や技術が衰退することにもつながりかねません。
課徴金減免制度(自主申告)などもあって、談合の数は減りつつありますが、まだ根絶されているというわけではなく、変わらず私たちは監視をしていかなければいけないと思います」
(関西テレビ11月30日放送『報道ランナー』内「菊地弁護士のニュースジャッジ」より)