利用客:
「私は怒ってるよ!ほんまにええかげんにしろ!って、弱い者いじめよ!」
激怒の矛先は、京都と大阪で4店舗を展開するスーパー『ツジトミ』。10月1日、事前の予告なく突如一斉に閉店してしまったのです。
11日、店内を覗いてみると商品はまだ置かれたままの状態。なぜ閉店したのか、シャッターにあった張り紙には…。
<張り紙の内容>
「事業の継続が不可能な状況となり、本日をもって事業を廃止することになりました」
利用客:
「突然やし、びっくりですね」
別の利用客:
「店長さんも知らなかったみたいで『来たら閉まってた』と」
スーパーの従業員も閉店は寝耳に水だったようです。
スーパー従業員:
「『もう今日から仕事しませんので』と弁護士さんから説明を受けたりしました。納得も何もできないけど、もう潰れてしまったらどうすることもできないじゃないですか」
そして「ツジトミ」の2階にある学習塾では困った事態も…。
サポーツ京田辺 岡本康志代表:
「建物自体のオーナーがツジトミだったので、家賃はもちろん、電気代もツジトミに払ってるんですよ。急に電気が止まるという可能性がゼロとは誰も言ってくれない…。ほんとになんかマンガで見たような出来事に直面している感じですね」
突然の閉店に利用客は大混乱。中でも一番の怒りは「電子マネーの返金」です。
このスーパーでは、現金をチャージすることで商品を購入できる独自の電子マネーを導入していましたが…。
(リポート)
「張り紙には『チャージ金の返金を行うことは法律上できません』と書かれています」
なんと入金していたお金が返ってこない事態に。中には4万円以上入れていたという人も…。
約4万円入金していた利用客:
「殴りたいよ!ホンマに年寄り騙して!弁護士がこっちに来て返却したらいいやん。『突然のことで申し訳ありません、当店でお金返却します』と出すのが筋やん。順序が違うやん!」
ツジトミ側は「破産手続きの中で対応する」としています。
電子マネーを使う人も増える中で起きた驚きの事態に、街では…。
女性:
「法律的には返ってこないんじゃ…」
連れの女性:
「なんで?銀行とかでも(破綻で)いくらまでなら補償とかあるやん」
男性:
「5000円くらいやったら諦めようかなとなるかもしらんけど…。1万円超えたら戦うんちゃう?」
店が潰れたらチャージした電子マネーの残高は、泣き寝入りするしかないのでしょうか。それとも取り戻す手段があるのでしょうか。菊地幸夫弁護士に伺います。
菊地弁護士:
「1つ目のポイントとしては、破産すると指一本触れられないということです。会社が破産の申し立てをして、それを受けて審理した裁判所が『破産宣告』という宣言をすると、基本的に財産には指一本触れられない状況になります。
どういうことかというと、その財産の管理は全て、普通弁護士がやるんですけど『破産管財人』に移ります。ですから社長さんでも触れられず、管財人がどう処分するかを決めます。ゆくゆくは管財人が、お金を返してくださいという債権者の方たちに分配をすることになると思います」
――今すぐには返金できないということなんですね。では利用者が今できることはあるのでしょうか?
菊地弁護士:
「債権者として手を挙げるということだと思います。債権届け出と言うのですが、『私はこれだけ請求できる権利を持っています』ということをちゃんと破産管財人に認識してもらうこと。管財人が知っている債権者には通知が来ますが、まずそれが大事です」
――今回、ツジトミでは店頭の張り紙にQRコードがあり、スキャンしてここから債権者として登録しておいてくださいという形になっているそうです。では手を挙げて待っていたらお金が返ってくるのかどうかということですが…。
菊地弁護士:
「お客さんがチャージしたお金を取り戻すには高いハードルがあります。まず会社の全財産を管理している破産管財人は、建物や備品などを全部売ってお金に換えます。それでたまったお金を債権者に分配するんですが、そこには順番がありまして、優先度の高いものから分配されていきます。
例えば税金とか、従業員の方の未払い給料とかですね。そういう優先順位の高い方々に払った残りを、チャージ金の残高があるというような方々を含めて一般の債権者たちに分配するということになります」
――お客さんの優先順位は低いんですか?
菊地弁護士:
「そうなってしまうんです」
――電子マネーにチャージしたお金は返ってくるのでしょうか?
菊地弁護士:
「管財人が物を売ってためたお金を優先順位の高い方に返すと、残りはあまり無いケースが多いんですね。それを金額の割合に応じて皆さんに分けると、『返してください』といった金額の大体“数%”程度。ゼロということもあり得ます。また会社と一緒に、社長さん個人も自己破産するというケースも多いです」
――となると、事前にお金を入れておく電子マネーという仕組み自体に不安を感じる方も多いかもしれませんが、救済制度が全くないかというと、そうではないそうですね?
菊地弁護士:
「資金決済法という法律がありまして、発行する会社の電子マネーの残高が合計で1000万円を超えると、その半額にあたる金額を法務局などの供託所に供託、つまり自分が手をつけられない所に預けておくという決まりになっています。万が一の時はそこから返すということになり預けてある半分から皆さんに分配するということですね」
1000万円を超える規模で電子マネーを運営している会社が義務として課されるというこの制度ですが、今回のスーパーは対象になっているかはわかっていません。
(関西テレビ10月12日放送『報道ランナー』内「菊地弁護士のニュースジャッジ」より)