今まさに旬真っ盛り。
大きな実と甘い味わいが特徴の高級ブドウ「シャインマスカット」。
甘みや食べやすさを追求し、なんと33年もかけて日本で開発された品種。
国内では、栽培面積も急拡大しています。
しかし、日本の店頭では1キロあたり1万2000円ほどで売られているシャインマスカットが、中国のサイトではたったの約600円。
破格となっています。
中には日本語のパッケージのものもありますが、ヘンな文章に…。
さらにシャインマスカットの中でも特に大粒で糖度も高いことで人気の『晴王』の文字も。
本来、『晴王』と名乗れるのは、岡山県産で商標権を持つJA全農などから許可を受けたものだけ。
しかし、中国・北京の市場では…。
–Q:この晴王はどこのブランド?
市場の販売員:
「晴王は雲南省だよ。雲南省から来たものは晴王と呼ぶ」
–Q:日本の岡山産だけが晴王では?
市場の販売員:
「それはわからない。ここで商売して5、6年だけど、そんな話は聞いたことがない」
さらに中国の番組でも…。
<番組のインタビュー内容>
「このブドウは日本で1房1万円以上(580元)します。今では雲南省でも栽培できて、品質もとても良いです」
もはや中国のモノのような扱いに。
さらには日本に無断で作られたシャインマスカットが、中国から海外へと輸出される事態にも発展。
これにより、ことし5月、農林水産省は年間100億円以上の損失が出ているという試算を発表しています。
晴王を栽培している岡山県の農園。
26年間ブドウ栽培を行っている山下さんは、中国で晴王の名前が使われていることについて…。
秦果樹生産出荷組合 山下雅章組合長:
「晴王自体が日本の岡山で作るものっていうのを、きちっと伝えていく必要があると思います。当然、安心安全なものを岡山県では作って出していってますので、怒りというよりかは、逆にこっちの腕の見せ所なのかな。楽しみというか、やってやろうという感じではありますね」
無断で生産して、我が物顔で売るというこの許せない行為。
一体どう対処したらいいのでしょうか。
菊地幸夫弁護士に伺います。
菊地弁護士:
「1つ目のポイントとしましては、持ち出しは違法でも時すでに遅し…ということになります。
種苗法という法律で、日本の農産物などについて育成している人が品種登録、『これは私たちがこうやって作ったものです』という登録をすると、それを専有して利用できるような権利が、その人に与えられるということになっています。
そうするとその人の承諾なく勝手に持ち出したり、ほかで育てたりということが出来なくなります。
法改正で、外国に勝手に持ち出すことも去年の4月から規制されていますが、先ほどの中国の市場の方の発言などをみても、今回のシャインマスカットは改正前の2016年ごろには違法に流出していたとみられ、今回の改正の前にはもう既に持ち出されていたということになり、取り締まることができません」
――シャインマスカットの栽培面積ですが、日本では1840ヘクタールなのに対して、中国では5万3000ヘクタールと約30倍あり、日本よりたくさん作られてしまっているという現状があります。こうした悲劇を生まないためにやれることはないのでしょうか?
菊地弁護士:
「新品種は海外でも登録をされるとよいと思います。さきほど種苗法では日本で品種を登録できるとご説明しましたが、海外でも同じように登録できるんですね。
法律というのは、日本でダメだから海外でもダメだということにするのは、国境を越えると難しいんです。ですから、条約で『海外は海外で、その国のルールで登録をして下さい』ということになっています。それぞれの国で登録してしまえば、規制を加えられるということになります。
ただ、各国ごとの申請といっても、国によって手続きが違ったり言葉も違ったりします。日本の法的なものを海外に持っていこうとすると、まず海外で仕事ができるような日本の法律事務所などに頼み、その事務所は相手国の弁護士さんなりに頼むということになって、費用がどんどんかさんでいきます。それを国が面倒見てくれるのかどうなのかなど、色々なハードルがあるというのが現状なんですね」
――農水省は権利を管理・保護する機関の設立を来年度中に目指すということですが、そうした機関がないと厳しいですよね。
菊地弁護士:
「そうですね。いわゆる経済安全保障の一環なんだと思います。その分野も法律なり大臣なりが出来たばかりですからね。これからなんとか頑張っていただきたいと思います」
(関西テレビ8月10日放送『報道ランナー』内「菊地弁護士のニュースジャッジ」より)