インターネット上にある“口コミ”。店や商品を選ぶ時に便利ですが、6月、大手グルメサイトの評価方法を巡り、裁判所が厳しい判断を下しました。
東京都内を中心に焼き肉チェーンを運営する会社が「グルメサイト『食べログ』に不当に評価を下げられ客が激減した」として損害賠償などを求めた裁判。
3年前、食べログが評価点の算出方法を変更したことで、ほぼ全ての店で点数が下がりました。評価点3.51から3.06まで一気にダウンした店も…。
東京地方裁判所は評価点の引き下げについて、「不当に不利益を与えた」などと判断し、食べログ側に3840万円の賠償を命じました。
一方、食べログの運営会社・カカクコムは判決を不服として即日控訴しています。
今や店の経営を左右するといっても過言ではない口コミサイト。飲食店以外でも…。
美容室AMILI 桧垣昌志代表:
「このご時世『口コミ時代』だと思うので一番信頼度は高いのかなと。辛口の時は真摯(しんし)に受け止めて反省したりとか」
実際に口コミを投稿する街の人は…。
女性:
「ほんとにおいしかったら口コミ書いたりします、おいしくなかったりしたら書かない」
「私結構つけてます。『チャイム4回鳴らしても来なかった(笑)』とか。ボーダーラインが難しいなって思います。厳しい意見を書こうとした時も、書いたら怒られるんちゃうかなって」
見る人だけではなく店側にも大きな影響を与える口コミ。
評価の内容にはどんな法的責任があるのでしょうか。菊地幸夫弁護士に伺います。
菊地弁護士:
「ネットの口コミでどこまで書いてOKかのボーダーラインですが、ポイントとしては『何気ない口コミ』でも違法になるかもしれないということです」
――具体的に、例えば「まずい」とか「●●という店員の接客が悪い」あるいは「期待を裏切られた。最悪。ぼったくり」といった投稿ですと、違法となるのでしょうか?
菊地弁護士:
「色々と議論があるところだと思いますが、今回は“私の独断”で言わせていただきますと、『まずい』や『接客が悪い』は公然と名誉を傷つける名誉毀損(きそん)罪に、また『ぼったくり』などは公然と恥をかかせる侮辱罪にも問われかねないと思います。
飲食店にとって『まずい』という評価を社会一般に広められるというのは致命的だと思います。食べログなどの口コミサイトは一般的に広がっているのでもう慣れてしまっているのかもしれませんが、それが正しいのかどうなのか。
仮に自分がまずいと思っても、他の人はおいしいという方がいらっしゃるかもしれません。それを社会に広める必要があるんでしょうか。僕は『人の短は言うことなかれ、己の長は説くなかれ』という言葉が好きです。もし、まずいと思ったらご自身が行かなければいいだけであって、そのお店に『まずい』というような評価を書くことが公益なのかどうなのか。
店員の接客態度についても同じです。もしかしたら、忙しかったのかもしれません。期待を裏切られたとか、ぼったくりとかもですね。今の私のような考え方で言えば、『社会に自分の意見を知らしめることが公共の利益なのか』、それに対して『それを頼んでもいないお店の損益はどうなのか』。この2つを天秤(てんびん)にかけると店の評価を社会に知らせることはそんなに重要な利益ではないんじゃないかと思っています」
――そうしますと、口コミサイトが存在する意味みたいなことがなくなってしまうのではないでしょうか?
菊地弁護士:
「私は、あまり必要性は感じておりません」
――確かに「まずい」が書けないと口コミサイトが成立しないのでは…とちょっと思うのですが、ただよく考えますと、例えば食べログもお店側が「自分のページを作って下さい」と言っているわけでは必ずしもありません。勝手に書かれてしまっているお店もあるという点で言うと、ツイッターに悪口を書かれているのとほぼ同じ状況とも言えますかね?
菊地弁護士:
「そうですね。公衆の人に知らせているという意味では、お店の前で『このお店、まずいですよー!』と叫んでいることとあまり変わらないかもしれません。
ただ、先ほどの天秤の話も例外がありまして、例えば『食中毒が起きた事実』など、公衆衛生について知らせることは、公共の利益が高いと考えられます」
――「お店にとっていいこと」を書いても罪になるケースもあるんですね?
菊地弁護士:
「はい。微妙だとは思いますが、店側から『お礼をあげるからいいことだけを書いて』などと無理強いをすると、事実と違って見た人が誤認をしてしまうようですと、景品表示法違反にもなりかねません。それが、例えばちょっとしか具材が入ってないのに『たくさん入ってておいしかった!』など、やりすぎると詐欺罪とされることも考えられます。また、それを実際に書いた人も『ほう助罪』と言って手助けをしたという罪にもなりかねません。ご注意いただければと思います」
――カフェなどで、「このデザートをつけますから、口コミを書いて」と言う店もあるのですが、それは「いい評価を書いて」と言われてなければセーフなのでしょうか?
菊地弁護士:
「法的にはセーフだと思います」
(関西テレビ6月22日放送『報道ランナー』内「菊地弁護士のニュースジャッジ」より)