恋愛や結婚などを目的とした会員同士を結ぶ「マッチングアプリ」。
出会いの場として定番になっているようで…。
20代女性:
「結構やってる、みんな。意外と楽しい」
30代会社員の女性:
「彼氏はそれでできました。マッチしましたね(笑)」
30代会社員の男性:
「合コン→街コン→マッチングアプリ的な感じ、流れ的に」
20代男子学生:
「コロナとかで(人と)関わる機会が少なくなったんで、女子と話すことのトレーニングにもなった」
利用者が増える一方、マッチングアプリを使った悪質な犯罪も起きています。
被害者と犯行グループとの間であったやりとりの再現(大阪府警提供)を見ると…。
<被害者>
「ジョンの仕事は何?」
<犯行グループ>
「僕は国際弁護士です」
“国際弁護士のジョン”と名乗っていたのは、5月中旬に大阪府警が国際手配した森川光容疑者(58)など、いわゆる「国際ロマンス詐欺」の犯行グループです。
<犯行グループ>
「ニューヨークから来日したんだ。僕の夢はアメリカや日本をはじめ、世界旅行をすること。最愛の人と一緒にね」
言葉巧みに女性との交際を匂わせ、「プレゼントの宝石を日本に送ろうとしたら関税と送料が必要になった」などと相談し、金を送らせたということです。
大阪府警は詐欺の疑いでこのグループの男女15人を検挙。被害者は65人、被害額は4億円にも上るとみられます。
国民生活センターには、マッチングアプリなどでのトラブルの相談が、ここ数年で急増。
「投資するよう勧誘された」「既婚者なのに独身と偽っていた」などの相談が寄せられています。
街でも…。
30代会社員の女性:
「いい写真選んでるじゃないですか。だから“身長”があれ?っていうのとか」
30代会社員の男性:
「(写真が)全然見た目と違うから、申し訳ないけど走って逃げたこともありますよ」
18歳女子学生:
「メッセージの内容が下心丸出しみたいな。同じ年と言われたのに会ったら29歳やったとか」
こうした状況を受け、国内最大級のマッチングアプリ「Pairs」では、対策に力を入れています。
エウレカ 広報・小野澤翔さん:
「24時間365日、人の目と機械の両方で、悪質なユーザーがいないか、サービス全体をパトロールしています。例えばプロフィールやサービス内での行動の特徴をAIが分析し、悪質なアカウントを検知するようなシステムを取り入れています」
しかし、アプリ以外でのやり取りまでは監視できないため、注意も呼びかけています。
もし、マッチングアプリをきっかけにだまされたらどうすればいいのでしょうか。菊地幸夫弁護士に伺います。
菊地弁護士:
「1つ目のポイントとしては『“マッチング”が恋心を加速させる』ということがあると思います。恋心があると周りが見えにくくなる、冷静さがちょっと失われる、ここがまさにだまそうとする人の狙い目なんですね」
――マッチングアプリはプロフィールを見てお互いにいいと思う人を選ぶということだけでなく、AIが色々考えて引き合わせてくれるサービスが増えていて、そんなところも含めて運命を感じる方も多いようです。一方で、そのアプリから出て他のSNS等でやりとりを始めたらお金に関わる話が出てきて、渡したら音信不通に…というようなケースもあるということです。
菊地弁護士:
「優良なマッチングアプリやサイトの中であれば、パトロールして怪しいアカウントをチェックしてくれるなどのサポートがある程度期待できると思うのですが、一歩外へ出てしまうと、そうしたコントロールは効きません。『投資をしよう』とか、何かを勧めてくること自体が直ちに法律に違反するわけではないですが、その先まで行って、お金が動いて、そうしたら相手がサヨナラしてしまった…というトラブルまでいってしまうと、深刻になって来てしまいますね」
――会っていなくても恋はあり得るわけで、国際ロマンス詐欺などの被害者もそうですね。
菊地弁護士:
「冷静に考えれば、活躍している国際弁護士が送料を払えないわけはないですから…」
――マッチングアプリの規制などは今十分なのでしょうか?
菊地弁護士:
「ルールは一応あるものの“抜け穴”もあります。どんな事かというと、2003年に『出会い系サイト規制法』という法律ができまして、そこでは利用者に身分証明書の提出を求める等のルールがあります。しかし、この法律は主に18歳未満の利用を防ぎ、保護するための手段なんですね。ですから大人の間での例えばロマンス詐欺などに関しては、あまり効果がないということです。例えばマッチングアプリなどでも、自分のプロフィールはある程度自由にレイアウトできるという形で、『国際弁護士だ、ジョンだ』などという人も出てきてしまうのだと思います」
――プロフィールまで1つ1つアプリの運営側がチェックする義務は現状ないんですね?
菊地弁護士:
「そうですね。恋愛というのは個人の自由の範囲なので、法律で『ああしなさい、こうしなさい』というのは、あまりふさわしくない分野ではあります」
――まだまだリスクがあるということで、ケーススタディについて考えたいと思います。交際後に発覚した時に“慰謝料”を取れるのは次のうちどのような場合でしょうか。『プロフィール画像と本物の顔が違う』『仕事がウソだった』『独身だと偽った既婚者だった』いかがでしょう?
菊地弁護士:
「まず既婚者はアウト。交際後に発覚した場合、慰謝料は取れると思います。既婚でマッチングアプリを利用する時点で、最初からだますような意図があると考えられます。あとの2つは場合や程度によると思います。画像と顔が違うというのは、あまりにもかけ離れていたら、それは相手に精神的苦痛をもたらすかもしれません。職業も似たような仕事なら別ですが、医師だと言っていたのに実は無職だったとか、あまりにも違う場合は“だまし”と判断される可能性があります」
菊地弁護士:
「ただ、あまり高額な慰謝料は期待しないで下さい。そんなに高いものではないと思います。しかし、例えば交際が非常に深まっていってから既婚者だと分かったという場合などは、100万円の大台に乗るような慰謝料だってないとは限りません。ちゃんとマナーは守っていただきたいと思います」
(関西テレビ5月25日放送『報道ランナー』内「菊地弁護士のニュースジャッジ」より)