2021年3月23日、明石市は、児童相談所が誤って生後50日の男の子を1年以上「一時保護」を続けた問題の検証結果をまとめ、全国で初めてとなる子供の一時保護に第三者委員会がチェックする制度の詳細を決めました。
【次男を保護された母親】
「我が家が何故こんなことになってしまったのか。児童相談所でどういった話し合いがなされたのかという事が明らかにならない限り、検証はできていないでしょうと思う」
23日、明石市に住む生後50日の男の子が虐待を疑われ、誤って児童相談所に保護された事案について、両親や泉房穂市長が参加して検証報告が行われました。
2018年、母親は次男(当時生後50日)が右腕を骨折したことで児童相談所に虐待を疑われ、次男は一時保護されました。
両親は虐待を否定しましたが、児童相談所は「100%虐待である」との内科医の鑑定意見をもとに乳児院への長期入所を求める審判を家庭裁判所に申し立てました。
しかし、家庭裁判所は「虐待は認められない」と判断。市が抗告した結果、高等裁判所で審理されましたが、家庭裁判所と同じ判断でした。
その結果、親子が離れて暮らした期間は1年3カ月に及び、その間、親子の面会も月に1~2回しか認められませんでした。
【次男を保護された母親(去年9月)】
「生きた心地しなかった。息子を奪われて、平穏な日常を奪われて」
2020年9月、泉市長は児童相談所の対応に問題があったとして両親に謝罪。
2020年11月、一時保護中の親子の面会を「原則自由」にする運用をスタートしました。
そして、2021年3月23日、この事例の検証と一時保護のあり方を見直す第三者による検討会(第4回)が開かれ、検証結果が報告されました。
しかし、検証報告書の内容は、両親にとっては納得できないものでした。
【次男を保護された両親】
「私たちとしては半歩も進んでないのかな。明石市としてはすごく大きな一歩、二歩だと思うんですけど、検証が不十分な状態では前に進めない、私は」
報告書では、この事例の対応への批判や今後の体制強化の必要性がまとめられていましたが、児童相談所がなぜこのような判断をしてきたのかは、検証されていませんでした。
両親は、検討会の場でも「児童相談所の判断過程がまったく明らかにされていない。引き続き検証してほしい」と伝えました。
【明石市・泉房穂市長】
「私からすればきょう頂いたご両親の意見は、率直なところ厳しい意見だと受け止めていますが、今後行われるであろう兵庫県の検証も踏まえながらしっかりとご両親に向き合っていく、誠実に対応していく」
一方で、明石市は今後誤った保護を防ぐため、外部の専門家で構成される第三者委員会が一時保護をチェックする制度を4月から始めることを決めました。
【明石市・泉房穂市長】
「毅然と保護する、保護したのちにしっかり第三者の目でチェックしていく。そこが大事。今回の新たな制度は、まさに子どもの声を聞く、保護者の声も聞く、そしてそれを第三者委員会というものが児相とは別の目で見ていく。対応はスピード感をもって可能な限り早く。この3つを意識しながら4月の第三者委員会の立ち上げをしていきたい」
==解説==
一般的に児童相談所が虐待を疑って児童を一時保護して長期の施設入所が必要と判断した場合、親が入所に同意すれば家庭復帰へ向けた指導が行われることになります。
一方で、親が入所に同意せず、審判で争えば裁判が続き親子分離が長期化する傾向があります。
今回の明石市の事例では、児童相談所がかたくなに審判を取り下げず、家庭裁判所の判断が出た後も抗告までして争い続けた結果、親子分離が1年3カ月に及んでしまいました。
親が入所に同意した場合は面会の回数が増えたり、家庭復帰も早まるケースが多くなると、親が虐待を争いにくい運用になっていることは、今回の事案によって明らかになった問題です。刑事事件における「人質司法(=自白しないと保釈されにくい運用)」と同じ構造あるという点で「人質児相」とも呼ばれています。
明石市は今回の事例を反省し、2021年4月から全国で初めて、元裁判官や児童相談所長経験者などからなる「こどものための第三者委員会」を設置し、一時保護を審査する制度を始めます。
第三者委員会は速やかに児童と面会を行うほか、児童・保護者・児童相談所のいずれからか申し出があれば一時保護の妥当性などについて判断することになります。
この新たに設置された第三者委員会は、今回の事案の検証をさらに行うことも期待されていて、泉市長も「引き続き検証を行う」と話しています。
(関西テレビ報道センター記者 上田大輔)