スペース・パフォーマンスの略、「スペパ」。スペース活用効率の良さを表しています。費用対効果のコスト・パフォーマンスから派生した新しい言葉ですが、注目が集まる理由の一つが、住宅面積の縮小化。
ここ数年で、新たに建つ住宅の面積がどんどん狭くなっているのです。都市部の地価が上がったり、建築資材の値段が高騰したりというのが背景にあるようです。
限られた空間を上手に生かす「スペパ」。役に立つアイデアやアイテムの数々を取材しました。
■家具に技アリ!家は広々「スペパ」とは
訪ねたのは、大阪市内で一人暮らしをしている藤原さんのご自宅。7.2畳の1Kの部屋にはソファなどの大きな家具は見当たりません。代わりに使っているのが「キャンプ用品」。
椅子やテーブル、布団代わりのブランケットもキャンプ用品です。というのも…。
藤原さん:
「簡単に畳めてしまうんで、ここに置いておきます」
使わない時はコンパクトに収納できるため、限られた空間でも邪魔になりません。スペパを意識して、自宅使いも兼ねて購入したキャンプ用品は、総額で2万3000円ほど。コスパもスペパも高いと言います。
藤原さん:
「ソファ1つでも2~3万円するのを考えると4000~5000円でチェア1つ買って置いた方が安く済みます。モノが少ない方が落ち着くのと、心のゆとりが生まれるかなと思います」
■「スペパ」でキャンプ用品も自宅使い
こうしたスペパ志向のニーズにアウトドアブランドも注目。『コールマン』では今年から自宅で楽しめるキャンプ用品に力を入れています。
ニューウェル コールマン事業部 西村哲さん:
「今、特に好評なのが『エアカウチ』というシリーズです。普通の家に置いてあるリビングソファと変わらないようなインパクトですが、キャンプ場で使うのが前提なのでエアを入れて膨らますタイプです」
インテリアになじみやすいデザインも魅力的で、もちろん収納性も抜群。空気を抜いて折り畳むと、トートバッグサイズに納まります。
■家電も文具も…「スペパ」志向の新商品
空間を圧迫しない「スペパ」の良いアイテムはキャンプ用品だけではありません。
その一つが「ステルス家電」。例えば、一見おしゃれなテーブルですが、引き出しに冷蔵庫が隠れていて、さらにスマホの充電器やスピーカーまで搭載。
また、ただのバスマットのようで体重計の機能が隠れた商品など1台2役のステルス家電はスペースの節約にもなると注目されています。
そして、スペパの波は文房具にも…。
ハンズ梅田 ステーショナリー担当 竹山明子さん:
「最近スリムなものが流行っておりまして、ホッチキスもかさばらないような縦長のモノが流行しています」
ここ数年、携帯用文具の人気の高まりから、ペンケースに入るスティックタイプのホッチキスなど、スペパの高い商品が次々と登場しています。
ハンズ梅田 竹山さん:
「新型コロナの影響もあって、マイデスクを持たない人もいるので、持ち運べて開いて仕事ができて、コンパクトに片付けて持って帰るというスタイルです」
■「スペパ」の裏に…狭くなる日本の家
高まるスペパ志向。住宅金融支援機構の調査によると、マンションの住宅面積の全国平均は2021年までの5年間で3.8平方メートル小さくなっていて、戸建ても同じく年々縮小。日本の家はじわじわ狭くなってきているんです。
こうした影響からか、50平方メートル以下の狭い土地に建てられた狭小住宅を専門にする住宅メーカーでは、スペパ重視の注文がここ数年で倍増しているといいます。
モイコッティ 東本昌之代表:
「狭い土地になるけど、せっかくの家なので暮らしやすく過ごしやすい空間を作って欲しいと。スペパありきの発想でおうちづくりをしないと、もう間取りにならないので」
スペパありきの家づくりとはどんなものなのか。去年リノベーションを手掛けた家に案内してもらいました。
16坪の土地に建つ3階建ての狭小住宅を購入した野田さん夫婦。それから15年、子供が3人になり、長女と次女は中学生に。かなり手狭になっていました。
11.5畳のLDKは多くのモノであふれていましたが、今は同じ広さでもソファをなくし、ダイニングテーブルもカウンター席に変えたことで大きなスペースが生まれています。
野田由美香さん:
「家族の生活リズムを見直したというのもあって、朝食の時間も違うし夜に食事をとる時間もまちまちで。それだったらカウンター席で十分という話になりました。ソファも要るか?ということになりまして(笑)。スペパ悪いです」
モイコッティ 東本代表:
「この部屋で11畳くらいのLDKになりますけど、その中で食卓とソファを置くとやはりすごく狭い。より圧迫感が生まれている感じでした。いかにモノを少なくして余白を作るか、自由な空間を作っていけるかというのをテーマに考えさせてもらいました」
■工夫満載「スペパありき」の家づくり
そして、リノベーションで大きく見直したのが子供部屋。部屋の数に余裕がなく、これまで3人で1部屋を使っていましたが、3.5畳ずつに区切り、3人分の子供部屋を作りました。
モイコッティ 東本代表:
「ただ単純に広い部屋、例えば10畳がだだっ広くあるよりも、実は小分けに分割した方が使いやすい空間になるのは意外と盲点かなと」
そして、夫婦の寝室にも新しい価値が。空間を立体的に活用しご主人の念願だった、趣味の「マンガ」のスペースが生まれました。
モイコッティ 東本代表:
「色んなお話をさせてもらう中で、ご主人はマンガが好きで趣味のグッズもあると。ただ夫婦のベッドを並べてマンガも並べるのは平面的に言うと不可能なんですね。上下にいかに空間を使うかというのがポイントになってきます」
限られたスペースを有効活用し、生まれ変わった野田さんのご自宅。スペパを意識するようになって、気づきもあったそうです。
野田由美香さん:
「家族でゆっくりする時間が本当に増えている気がしますね。結局コスパってすごく意識するんですけど、スペパも意識することによって、お金を使う時も収納があるかどうか考えてからモノを新しく買うか決めるようになりましたし、結局スペパを考えたらコスパが良くなって、スペパを考えると時間の節約にもなって、結局万能なのはスペパなのかなと」
空間を見直すことで得られるオトク感。スペパ志向は幸せへの近道なのかもしれません。
(関西テレビ3月21日放送『報道ランナー』内「ヒットにワケあり!オカネのヒミツ」より)