CDやスマホとは違う、味のある音色が魅力の「レコード」。
今、実は人気ぶりがすごく、アナログレコードの生産実績を表すグラフ(出典:日本レコード協会 統計情報を基に作成)を見ると、廃れかかった時期もありましたが、次第に増加傾向。2022年度には中古でなく新たに作られているレコードの金額で40億円を超えています。
音楽がスマホで気軽に聞ける今の時代になぜレコードなのか、人気再燃のワケを取材しました。
■人気復活!なぜかレコードが売れている
『タワーレコード 梅田NU茶屋町店』では、アナログレコード売り場がここ数年でどんどん拡大中。そこには若者の姿が目立ちました。
男性客:
「宇多田ヒカルアツいっすね。昔の感じの音楽にハマっていて」
別の男性客:
「興味あるものを部屋に飾りたい」
レトロなアイテムへの興味と、好きな歌手のジャケットを所有したいというニーズがあるようです。
さらに…。
女性客:
「音楽だけに没頭する時間が好きで、携帯から離れてCDやレコードだけで聴くのも楽しい」
あえてスマホを使わない「音楽体験」を求めていました。
タワーレコード 梅田NU茶屋町店 伊藤博明チーフ:
「売上は伸びてますね。本当にタワーレコード全体で言えば、10年前から比べても25倍ぐらいになっています。前代未聞ですね」
人気歌手・あいみょんさんの新譜は、店に並ぶとすぐに売れてしまうほど。レコード熱の高まりを受け、東京・渋谷には新たなレコード専門店がオープンしたほどです。
一度は廃れかけたレコードが、なぜ今復活しているのでしょうか。
■ここにも若者が…中古レコード店も買取強化中
ブームの波は新品レコードだけでなく、中古レコードショップにも。
東海地方から大阪に進出した中古レコード店『バナナレコード 大阪梅田店』には、古くからのレコードファンだけでなく、若者の姿も目立ちます。
男性客:
「YMOのCDでもサブスクでも聴いたことがあったんですけど、レコードで聴くとより一層良くて。退廃的な中に都会感が垣間見えるような…」
もちろん50代より上はレコード世代ど真ん中で、今でもたくさん持っているという人も多いはず。関西テレビの53歳・神崎デスクの自宅にも多くのレコードが眠っていたので、買取査定をしてもらいました。
有名アーティストのほか、マイケル・ジャクソンのパロディで有名な歌手のレコードもあり個性的なコレクションです。
バナナレコード 大阪梅田店 西田幸司さん:
「一番がこれですね、ビースティ・ボーイズのデビューアルバム。うちの買取では1500円です。やはり人気ですね。(買取価格は)大体100円から300円とかのものが多いので」
流通しやすい数百円のモノから、数十万円のプレミアレコードまで、中古市場のすそ野は広いようです。
■レコード盤も針も…工場はフル稼働
新品・中古を問わず高まるレコード人気もあって、ソニーミュージックグループは29年ぶりにレコードの生産を再開。24時間態勢で工場がフル稼働しています。
さらに、音の決め手となるレコード針のメーカー・日本精機宝石工業の社長は今の人気について…。
日本精機宝石工業 仲川幸宏社長:
「全く予想してないですね。業界の誰一人としてこうなると思っていなかった。サブスク(の音楽)が世の中に広がったことが、レコード人気に拍車をかけたと感じます。アート・音楽・ファッションとして(レコードが)受け入れられてきている」
今、この会社はレコード針で世界100カ国以上と取引があり、年々売上を伸ばしています。
さらに、『ヨドバシカメラ マルチメディア梅田』のレコードプレイヤー売り場を取材すると…。
オーディオ専門チーム 依田直孝グループリーダー:
「こちらの商品はスピーカーも付いてます。レコードを乗せて、後は電源を入れていただければ、すぐレコードをお楽しみいただけます。またスピーカーと線でつながなくても、ブルートゥースで音を飛ばせる商品もございます」
シニアから若者まで様々なお客さんがプレイヤーを買っていて、2010年と比較すると約2.5倍にも売上が伸びています。
売り場の一角には超高級品、100万円を超えるものまで並んでいました。
■良い音で癒される…ファンは世代を超えて
高価なプレイヤーを持っていなくても、いい音でレコードを楽しめる店がありました。2015年から、なんばのカフェストリートで営業をしている『レコード喫茶 Graffiti』です。
店にあるレコードの中から聴きたい曲を選んで1曲200円でリクエストできるほか、会員になれば、個人のレコードを持ち込むこともできます。
こだわりの音響設備から流れる音に耳を傾ける客はシニアから若者まで幅広く、世代を超えて同じ空間で音楽を楽しんでいます。
60代の客:
「もう最高です。やはり音が太いですよね。重低音というんですかね、やっぱりいいものはいい」
20代の客:
「スマートフォンでよく(音楽を)聴いてるんですけど、段違いというか…レコードのほうが良い。生音に近い感じがしました」
一緒にいた父親:
「(レコードを)久々に聴いて『昔聴いていた音だなぁ』と再発見したような感じ。今は家にレコードプレイヤーはないですけれども、やはりこういうのっていいですよね」
デジタル全盛の時代だからこそ、人々が気づきはじめたアナログの心地よさ。レコード人気のウラには、音楽と真正面から向きあう「楽しさ」と「感動」がありました。
(関西テレビ1月31日放送『報道ランナー』内「ヒットにワケあり!オカネのヒミツ」より)