今100円ショップで買える「プチプラおもちゃ」。110円とは思えないクオリティの高さから人気を集め、種類も増えています。
安くても満足できる商品開発の裏側を取材しました。
■リアルでかわいいプチプラおもちゃ
全国およそ1900店舗展開している100円ショップ『セリア』。季節商品が販売されている中、お客さんが手にしているのは「おもちゃ」。種類も年々増加し、今では600種類ものおもちゃを販売しています。
例えば炊飯器のおもちゃは、ご飯をセットし蓋をして上のボタンを押すと、ご飯が下に落ちて、炊けたような仕掛けに。
またナゲットは、子供が大好きなソースをつける事が出来るなど、ひと工夫が楽しめる商品ばかりです。
インスタグラムでもプチプラおもちゃに関する投稿が多くみられ、主婦層を中心に大人気。そんな100円ショップのおもちゃには、どんなヒミツがあるのでしょうか。
■メーカーに潜入…開発のこだわりに迫る
セリアを始め、全国にある100円ショップのおもちゃを製造する玩具メーカー『ポニー』。
社員はおよそ30人と少数精鋭の部隊。企画担当の明石幸子さんは、3人の子供を育てる主婦です。これまで300種類以上のおもちゃを世に生み出し、毎月2、3個新商品を開発しているそうで…。
薄田ジュリアキャスター:
「メルヘンな物から、男の子が好きそうなものまでありますね」
ポニー 企画部 明石幸子さん:
「ピンポイントになっちゃうと購買層が減っちゃうので、色んなジャンルを作るようにはしています。炊飯器は累計で15万個くらい売れてます。だいたい月間1万個以上売れたら売れてる方で、ナゲットとかだと月間2万個ぐらいです」
炊飯器やナゲット、ハンバーガーなど、おままごとに使うおもちゃは、それぞれ毎月2万個以上売り上げる大ヒット。カレーのルーは12月に発売したばかりで、売れ行きは好調だそうです。
明石さん:
「カレーのルーは割れるように作っていて、本物に近いかなと思っています。おもちゃがただの道具にならないようにギミック(仕掛け)を加えることを大事に、基本的には全てにおいてリアルを追求しています。『チープであろう』という気持ちを裏切りたい。細かい事で言うと成分表示を書いていて、たんぱく質じゃなくて“わんぱく質”にしてみたりとか。親御さんも本物と同じ質感だからこそ楽しめると思っているのでこだわっています」
他にも、例えばプリンのおもちゃは、ボタンを押すとプリンが容器から外れたり、ソースのおもちゃは、押すと実際に出てきたりするなど、全てにひと工夫を加えて驚きを与えるおもちゃ作りを目指しているのです。
■「100均だからチープ」と思われたくない
また、子供が何に興味を持つのか、試作品が出来るたび、子供に実際に遊んでもらうなど、市場調査も欠かしません。子供の視点に立って作る事も必要不可欠だといいます。
明石さん:
「卵焼きのおもちゃは実際に巻けるので、食育とか知育にもなってくると思うんです。子供にご飯に対する興味を持ってもらうために、まずおもちゃからっていう形が入りやすいかなっていうのがあります」
リアルなおもちゃで親のマネを楽しみ、それが食育に繋がるからこその人気なのです。とはいえ、こだわりを残しつつ110円でおもちゃを作るにはシビアな話も…。
薄田キャスター:
「こういうおもちゃって、どういうメンバーで作ってらっしゃるんですか?」
明石さん:
「現在私を含め3名でやってます」
企画からデザインまで、全ての工程を3人で行う事で人件費を抑えています。さらにはパッケージに使う写真なども、出来る限り自分たちで撮影。コストカットをしながらこだわりを追求する。その限界に挑戦しているからこそ、110円のおもちゃが実現できるのです。
明石さん:
「お客さんからすると100均だからチープって思われがちなんですけど、やっぱりそう思われたくないので。使ってすごく楽しいって思ってもらえるような商品を今後も作っていきたいなと思っています」
■あえてくすんだ色でインテリアに馴染む
また、同じプチプラおもちゃでも、違った戦略で安く良い物を生み出している会社も。
オシャレな雑貨などを扱う『3COINS』。ハンドルの形をしたおもちゃは550円。吸盤でくっつくので、子供も運転手気分が味わえます。
獅子舞のパペット人形は、売り切れ続出の大人気商品。現在およそ30種類のおもちゃを販売。売上も好調ということで、親たちに支持されている理由は、何なのでしょうか。
企画開発の松村薫さん。入社17年目、6歳の子供を育てている主婦です。
3COINS 商品部 松村薫さん:
「色にはこだわって、ちょっとでも高く見えるように。自分が実際子育てをしていて、あまりくすんだカラーのおもちゃとかが低価格では無いなって風に思っていたので。どうしてもおもちゃって散らかったりすると思うんですけど、カラフルなものよりはインテリアに馴染むものの方が見過ごすことができるというか(笑)」
インテリアに馴染む「くすみカラー」。散らかっていても気になりにくいデザインを目指していると言います。
3COINSでは、毎年およそ50種類の新作おもちゃを開発しています。実はその企画から開発まで、全て松村さん1人で担当しているのです。人件費のコストカットはもちろん、こういうものを形にしたいという目標を実現しやすいと言います。
松村さん:
「自分でやりたいって手を挙げてやらせてもらったので。元々は違うバイヤーだったんですけど、子供が生まれて子育てするようになって、欲しい物もたくさん増えたので。自分が欲しい物を作っています」
こだわりを残すためのコストカットも。年間50個もの新作を開発するたび、毎回入札。その都度、一番安く作れるメーカーに依頼しています。
■人気のプチプラおもちゃ「コスト減の極意」
そしてもう一つの戦略がSNSです。3COINSには約70人のスタッフインフルエンサーが勤務。彼女たちがSNSで商品を発信する事で話題となり、人気が広まっているというのです。
HITOMIさんはフォロワー数3万人、スタッフの中で全国3位の人気インフルエンサー。
HITOMIさん:
「こちらで779いいね。今までの最高は2万いいねほど頂けたことはあります」
広告費いらずで、コストを抑えることにより商品の安さも追求できるのです。
松村さん:
「やっぱりこの価格だからこれなんだっていう風には思われたくなくて、この価格でこんな商品あるんだっていう驚きを持ってもらいたいなと思っているので、そこは気をつけてやるようにしています」
(関西テレビ12月13日放送『報道ランナー』内「ヒットにワケあり!オカネのヒミツ」より)