ホテルに、動物のエサやり体験、仏像の展示…。実は、これらは全て「道の駅」の中にあるもの。地域の特産品が集まっているだけでなく、最近は様々な特徴を持っています。
1993年には103カ所だった道の駅は、今や1198カ所にまで増加。地域の魅力を最大限に生かす道の駅ビジネス、大成功の秘密を取材しました。
■もはや博物館…進化する道の駅
今年3月、奈良県天理市にオープンした「なら歴史芸術文化村」。およそ100億円かけて作られました。オープンから7カ月で来客数50万人超えの人気スポットです。
この道の駅では、地元で採れた野菜や奈良名産「御所柿」のほか、伝統工芸品など、奈良の魅力がたっぷりと詰まった商品が販売されている…だけではありません。
古の都・奈良だけに、県内で出土した土器のほか、仏像などの展示や、技術者が修復する工房まであって、誰でも無料で中を見学することができます。これを目当てに道の駅を訪れる人も多いようです。
客:
「道の駅に併設されているから、こういう所に興味を持って見る方もたくさんいますね」
さらに道の駅のすぐ隣には、アメリカの大手ホテルチェーン『マリオット』が。マリオットは2018年から道の駅に注目し、現在は9都道府県20カ所の道の駅の隣に開業しています。
30年前、道の駅が登場した時には考えられない進化を遂げています。
■“滞在型 道の駅”にリニューアルで復活
さらに、関西トップクラスの人気を誇る「丹後王国 食のみやこ」には大きな変化が。
甲子園球場8個分の広大な敷地には、全長48mの斜面をソリで滑る「芝すべり」のほか、ヤギやヒツジへの餌やりが体験できる動物園があり、サツマイモ掘りやミカン狩りも体験できます。
客:
「道の駅って(モノの)販売ばかりされているところが多いんですけど、ここは色々な体験ができるので、また違った感じかなと」
別の客:
「こういう風に色々な体験ができると一つのレジャーとして楽しめるのでいいなと思いました」
その他にも、道の駅内の醸造所で作られたクラフトビールや、地元のブランド豚・京丹波高原豚を使用したソーセージ。また、ブランド牛「京たんくろ和牛」のステーキまであり、グルメも充実。もはや一大レジャー施設です。
散々遊んだ後には、ここにもホテルが併設。立ち寄る場所ではなく、目的地となっています。
丹後王国ブルワリー 中川正樹社長:
「(ここは)通過型の道の駅ではなくて滞在型の道の駅です。滞在時間が長くなることで1人あたりが落とす金額も変わってきますし、非常に多くのお客様にお越しいただける1つの観光拠点にはなったかなと思います」
元々は農業公園。地域の家族連れの憩いの場として細々と営業していましたが、運営会社の破綻をきっかけに、2015年に道の駅へリニューアル。芝すべりなどの遊び場やグルメを充実させたところ、来客数は5倍以上に。
京丹後市は、夏は海水浴、冬はカニ目当ての観光客が多く訪れていたものの、春と秋は観光客が減少。しかしリニューアル後は、ここを目当てに1年中多くの客に来てもらえるように。まさに地域活性化の切り札となっているんです。
■人気特産品グルメで百貨店進出
道の駅の進化はこれだけではありません。京都府の最南端に位置する、人口2500人ほどの南山城村。宇治茶の一大生産地としても知られています。
薄田ジュリアキャスター:
「道の駅『お茶の京都みなみやましろ村』にやってきました。駐車場を見てみると、車とバイクでいっぱいの状態です。大変賑わっています」
この道の駅では、宇治茶を使用した抹茶やほうじ茶の商品が所狭しと並べられています。人気No.1、抹茶のソフトクリームは名産地ならではの茶葉をふんだんに使った濃厚な味わいが自慢。多い時には1日1600本も売れるそうです。
この人気に目を付けたのが百貨店。今年5月に大阪・梅田の阪神百貨店で行われたイベントに出店すると、連日、閉店間際まで長蛇の列が…。12月に開かれるイベントにも声がかかっています。
イベントに向けて完成させたのが、新商品の“クリームブリュレ”。
株式会社南山城村 大久保利子さん:
「これを食べて、お抹茶とか飲む方のお茶に繋げていきたいですね。それのための加工品です」
株式会社南山城村 森本健次代表取締役:
「うちはお茶所として、こういう商品を通じて、お茶の産地として生産者さんたちがやる気を出せる、若い農家さんたちが『自分たちもお茶を継いでいこう』というような旗印になっていただきたい」
スタッフの思いも背負い、百貨店に向かった森本さん。無事に採用が決まりました。
阪神梅田本店 フード商品統括部 萬代俊哉バイヤー:
「道の駅というのはやっぱり、その地方の色が非常に出ると思うんです。関西圏の都心のお客様にそこの名産品を買って頂けるというのは、非常に百貨店としての意味合いもあると思います」
お茶の京都みなみやましろ村では、百貨店の催事や道の駅の販売などで、今年度は6億円以上の売り上げを目指すとのことです。
株式会社南山城村 森本代表取締役:
「これから道の駅は成熟期といいますか、次の展開に向けて新商品とか新しい展開も含めてどうやっていくのか。そういう目的意識を持って新しいことをやっていきたいです」
少子高齢化や人口減少など、厳しい現実に直面する地方で増え続けている道の駅。地方経済の活性に欠かせない存在となっています。
(関西テレビ11月15日放送『報道ランナー』内「ヒットにワケあり!オカネのヒミツ」より)