寒さが気になる季節になってきましたが、ここ数年話題となっているのが「温活」。体を温める活動全般を指す言葉ですが、冬だけに限らず、美容や健康のために体温を上げるという温活をしている人もいるようです。
今や市場規模が2000億円以上となった成長を支えているのは、単に体を温めるだけではない付加価値を追求する開発者の熱意でした。
■温活グッズ商戦が本格化
ここ数年で定着した「温活」。需要が高まるシーズンに入った今、グッズ商戦も本格化しています。
売上は年々伸びているそうで、梅田ロフトでは170種類以上を取りそろえるほど商品も多様に。中には“ぬいぐるみ”も…。
梅田ロフト 森山さおりさん:
「レンジに入れて温めていただく商品です。中にセラミックビーズが入っていて、500Wのレンジで1分弱温めていただいて、手を温めたりお腹の上に乗せたりして使います」
また最近は、冷えやすい場所を部分的に温める商品も多く、暖房を使わなくても温活できるアイテムが人気なんだそうです。そんな中、今売れに売れまくっているというのが…。
梅田ロフト 森山さん:
「こちらの『まるでこたつソックス』という靴下になります。ダントツで売れております」
さらに、ちょっと変わった商品も…。
梅田ロフト 森山さん:
「温かくなる耳栓です。去年発売してすぐ入荷欠品という形になりました」
数ある温活グッズの中で、どうやって人気を勝ち取ったのか…。2つのヒット商品から開発競争のヒミツを探ります。
■温活で冷え性改善…ツボを刺激する靴下
あったか系靴下の中で、ダントツ人気の「まるでこたつソックス」(1980円・税込み)。
1足およそ2000円と靴下にしては高額ですが、シリーズ累計で70万足以上を売り上げた大ヒット商品です。
手掛けるのは、国内トップの靴下専業メーカー『岡本』。
薄田ジュリアキャスター:
「壁に並んでいるのが人気の『まるでこたつソックス』ですね。ほかの靴下と何が違うのか、その実力は…。(履いて)じんわり温かく包み込まれているような感じ。パーツによって編み方が違うんですね」
岡本 ブランドマネージャー 青柳一輝さん:
「足首の部分が他とは違うポイントになってます。くるぶしの内側から指4本分くらい上のところに『三陰交』というツボがありまして、東洋医学の中でも冷えに効くと言われていて、その部分を温熱刺激する設計です」
サーモグラフィーを使って見てみると一目瞭然。足首の部分だけ温度が高くなっているのが分かります。ここには発熱素材が使われていて、あえて周りとの温度差を作ることで「三陰交」を刺激。足全体を温めてくれるそうです。
岡本 青柳さん:
「冷えに悩む方が非常に多いというのは調査からも分かっていて、今までの靴下ですと解決できていないことも分かっていたので、『だったら冷え性を改善するんだ』ぐらいの気持ちでこの開発をしていきました」
「靴下で冷え性を改善する!」その心意気で目を付けたのが、冷えに効くツボ・三陰交を刺激するというもの。どんな方法がベストか、2年の歳月をかけてじっくり研究。たどり着いたのが、部分的に素材を編み分けて、三陰交を温めて刺激するという設計でした。
開発スタートから4年後の2013年にようやく発売。しかしここで大きな落とし穴が…。
岡本 青柳さん:
「実は発売当初は全くと言っていいほど売れませんでした。今とパッケージやネーミングが違う形で発売しまして。『三陰交をあたためるソックス』というネーミングでした。会社としても三陰交に縛られてしまったという…。4年間かけてきたという思いがそういう狭い視野になってしまったのかなと」
発売から2年後、試行錯誤の末に今のパッケージにリニューアルにしたところ、売上はなんと17倍に。ツボを刺激して得られる温かさが評判を呼び、その後シリーズ商品もどんどん開発され、順調に売り上げを伸ばしていきました。
靴下のトップメーカーの渾身(こんしん)の一足。利用者の悩みに真摯(しんし)に向き合ったからこそ支持されているようです。
■新ジャンル「耳温活」パイオニアの野望
そしてもう一つのヒット商品が、ユニークな商品開発で世の中の「あったらいいな」に応えてきた『小林製薬』の「耳ほぐタイム」(参考価格767円・税込)。日経トレンディの2022年ヒット商品にもランクインした注目商品です。
小林製薬 ブランドマネージャー 北口淳さん:
「寝る時に使う、温める耳栓です」
イヤホンのような本体に、付属の発熱体を内側にセットして耳につけると…。
薄田キャスター:
「あ、じわじわ来ました。今まで耳を温める感覚がなかったんですけど、耳がほぐれていく感じがありますね」
小林製薬 北口さん:
「約40度の温度で約20分間発熱し続けます」
耳を温めることでリラックス効果が得られるそうで、耳栓で雑音をなくし安眠を促すというもの。去年10月の発売以来、人気はうなぎ上りだそうです。
小林製薬 北口さん:
「発売3カ月で62万個販売していまして、1年後の今で130万個以上。当社の中でも異例のヒットです」
もともと安眠需要に向けた商品なのですが、耳を温めるという発想が『耳温活』という新しいジャンルを作るきっかけにも。ただ、なぜ耳を温めようと思ったのでしょうか。
小林製薬 北口さん:
「開発の段階でお医者さんや有識者にヒアリングすることがあり、耳に自律神経があると。社内でアイデア会議をよくするんですけど、『赤ちゃんって寝る時に(手足だけではなく)耳まで温かくなるよ』というところから『耳温めたら面白いんじゃないか』というアイデア着想に至ってます」
会議中の何気ない会話からのアイデアはよくあるそうですが、いざ作るとなると、自慢のスピード開発とはいかず…。
小林製薬 開発研究グループ 水元陽星さん:
「耳の形に合う耳栓の形状や、温度ですね。40度で20分持続する発熱のパフォーマンスを達成することが非常に難しくて、そこに時間を要してしまいました」
さまざまな耳の形にフィットするよう100人以上の耳を計測したり、発熱体の小型化には20回以上試作を繰り返したりと、4年がかりで完成に至りました。
耳を温めるという新しいジャンルのこの商品で狙っているのは…。
小林製薬 北口さん:
「耳を温める製品なので秋冬にかなり売れる商品にはなっていますが、今回耳を温めて睡眠に対してアプローチする商品なので通年使っていただけるとうれしいです」
目の前のニーズに応えるか、潜在的なニーズを掘り起こすか…。どちらの商品開発も温活市場の盛り上がりには欠かせないようです。
(関西テレビ11月8日放送『報道ランナー』内「ヒットにワケあり!オカネのヒミツ」より)