年々減少傾向となっているゲームセンターの店舗数。ここ10年でほぼ半減していますが、「UFOキャッチャー」に代表されるクレーンゲームは絶好調。
売上は約2230億円とアミューズメント施設の売上の半分以上を占めるそうで、“ゲームセンターの救世主”ともいえる存在です(出典:一般社団法人 日本アミューズメント産業協会)。
景品は定番のぬいぐるみだけにとどまらず、カークリーナーやラジコンヘリ、コーヒーメーカーなど実に様々なバリエーションがあります。
客を満足させ、利益も生むクレーンゲーム。成長の極意はどこにあるのでしょうか。
■大規模フロアで売上アップ
『ラウンドワン』が全国50カ所以上の店舗で大々的に展開し、今勝負をかけている「ギガクレーンスタジアム」。
堺駅前店では2021年7月に、クレーンゲームばかり370台を集めたフロアに一新しました。
広い店内を巡っていると、「激取れ台」という貼り紙が…。
客:
「取れた取れた。すごいと思いました」
さらには取り方のアドバイスまで…。
ラウンドワン堺駅前店 堀川栞さん:
「フロアに何名かスタッフがいるので、そのスタッフ間で今のお客様のプレイ回数とかを共有しあって、1つでも景品を持って帰ってもらおうという気持ちでやってます。(Q.取られ過ぎてもダメじゃないですか?)そうなんですよね(笑)」
この店ではクレーンゲーム機がごく一部だった3年前と比べ、6割を占めるようになった今、売り上げは1.8倍に伸びたとのこと。
ラウンドワン堺駅前店 山下將幸支配人:
「この1年間、毎週のように伸びていったという実績はおかげさまで頂戴しております」
■景品価格の上昇で“取らせ方”にも変化
そんなクレーンゲーム、歴史は意外に古く、1920年代にヨーロッパでキャンディをすくう機械が誕生しました。
その後アメリカにも渡り改良を重ねつつ、世界中へと広まりました。日本では1980年代から一大ブームに。
“クレーンゲームの達人”として、これまで数々のスゴ技動画を披露している男性は…。
クレーンゲームの達人 五十嵐直也さん:
「やるようになったのはホント5歳くらいの頃です。100円をもらって1回で取れたというのが事の始まりですね。こんなモノが100円玉1枚で取れるのかと」
五十嵐さんは好きが高じて、今ではクレーンゲーム店の店長に。運営側に回ることでシビアな現実にも向き合っています。
五十嵐さん:
「景品の価格が年々上昇してきていますので、1回で取られては(店が)赤字になって経営ができなくなってしまいます」
実はクレーンゲームの景品の小売り価格の上限は、警察庁が通達を出しています。これまで何度も改定され、今では1000円に。それだけに一発で取るのは難しく、少しずつずらして取る台が増えています。
五十嵐さんに試してもらうと、「達人」でさえ、取るために要した回数は13回でした。
■たどり着いた“人気の景品を作る秘訣”
それでも取りたいと思わせる、クレーンゲームの景品…。
長年景品の企画や販売を手掛けている会社『ピーナッツクラブ』。定番のぬいぐるみも扱っていましたが、得意としているのはラジコンカーをはじめとした雑貨や、ホットサンドメーカーなど「これ1000円?」と疑うほどのユニークな電化製品です。
何千種類もの景品を扱う中で、クレーンゲームで人気が出るための“ある秘訣”にたどりつきました。
ピーナッツクラブ 国際部 中村晋介部長:
「言い方が悪いかもしれないですけど、無くてもいいんだけどあったらすごく楽しそうとか使ってみたいなとか。わざわざ買わないけど景品で取れたらぜひ使ってみたい、みたいな。パッと外から見た時に『これ、すごいな』と、クレーンゲームを試してみたいと思ってもらえるような商品づくりというのは、こだわっています」
■リサーチ目的だった「オンクレ」が核となる事業に
更なる商品開発のため、直にお客の反応が知りたいと手を伸ばした事業が「オンラインクレーンゲーム」、通称・オンクレです。スマホやパソコンなどで操作すると、その通りにクレーンゲームが動いて景品が狙えます。
最初は主に自社の景品を置いてお客さんの反応を探っていましたが、反響が大きく、今では他社のモノも取り入れて、会社の核となる事業にまで成長させました。
獲得した景品は指定した住所に送られますが、さらにオンラインならではの仕組みもありました。
ピーナッツクラブ 田中翔太さん:
「今何回遊んでいますということが管理されているので、景品ごとに定められた一定の基準を越えた時に、画面で確認してスタッフがその場所まで行って、景品獲得の手助けをしております」
何度やっても取れない客が一目瞭然。取れるようにサポートも…。
田中さん:
「思っていた以上に取れづらい場合は(アームの)幅を広げたりパワーを強くしたりで取れやすくしますし、逆に全然もうかっていないな、取られ過ぎてしまっているなという場合だと、少し難易度を上げるという調整も行っています」
多くの業者が参入し急成長しているオンクレですが、課題も…。
お客さんが直接店に来るのではないため風営法の適用外。景品の上限額がなく24時間営業も可能など、規制が及ばず競争が激化しているのです。
田中さん:
「この業界も始まって10年ぐらいでして、まだまだリアルな店舗と違って不透明な部分があるっていうのも私達も考えております。やはりルールがないとやりすぎてしまうこともあるかと思いますので、そこで自主規制という形でルールを定めています」
お客さんが不安なく楽しめて、ほどよく景品が取れる。そんな「いい塩梅」こそが、長く愛されていく秘訣ではないでしょうか。
(関西テレビ11月1日放送『報道ランナー』内「ヒットにワケあり!オカネのヒミツ」より)