築年数の古い中古マンションの間取りや内装を一新する“リノベーション”。
今、人気のリノベーションを調べてみると、見た目だけではない、住まいづくりの進化が見えてきました。
■新築に並ぶ選択肢に…「中古マンションリノベ」
訪れたのは、9月にリノベーションしたばかりのあるご自宅。中古マンションとは思えない見た目ですが、なんと築21年です。
自宅をリノベした家族:
「子供が成長してそれぞれの子供部屋が欲しいというところから始まって。水回りも築21年経っていて数年で変えなければいけなかったので、全体的に床も壁もすべて間取りも変更してフルリノベーションっていう形でさせてもらいました」
一般的に、リノベーションとは壁や床を全て取り払い、骨組みだけの状態にリセットしてから、間取りやデザインを一から作り上げていくこと。一部の設備を取り換えるだけのリフォームとは全く別物です。
このお宅では、キッチンの囲い壁をなくしてカウンターキッチンに。洗面所の横には、食品などを貯蔵しておけるパントリーを設置。台所には大きな食器棚を作ったことで収納量も大幅にアップしました。気になるリノベの総額は…。
自宅をリノベした家族:
「1000万円いかないくらいです」
リノベにはリフォームではできない、ある魅力があるといいます。
自宅をリノベした家族:
「間取りとか変えていくところで、一から本当に全部自分たちで、色も何もかも決められました。自分好みにできたので、そこはすごく楽しかったです」
マンションでも注文住宅のような家づくりができる「自由度の高さ」が人気のヒミツのようです。
リノベの人気の高まりには、最近の住宅市場の変化も大きく影響しています。実は年々、資材の値上がりなどで新築マンションの価格が高騰していて、例えば大阪市内の70平米の3LDKマンション(約70平方m)では、新築の平均価格が約6000万円。
一方、築20年の中古物件の相場は2000~3000万円で、リノベの相場、1000~1500万円加えても新築よりもかなりお得。そのため、「中古マンションリノベ」が新築に並ぶ選択肢になりつつあるのです(出典:不動産経済研究所など)。
■新規参入も…成長が期待されるリノベ市場
高まるリノベ人気に企業も注目しています。大阪市北区に10月オープンした、中古マンションリノベ専門のショールーム『マイリノ』。手掛けたのは大阪ガスです。リノベ市場の盛り上がりに目を付け、今年7月から新たに進出しました。
ショールームでは、狭い空間を有効に使った“マンションならではの間取りプラン”が紹介されています。専門のスタッフに相談できるのは、間取りだけではありません。
マイリノ 関西エリア長 木下雅喜さん:
「これからお家を探されるお客様の物件相談や、既に見つかっているお客様には設計打ち合わせを。これまで、リノベを検討されてるお客様はご自身で不動産業者に行っていただいて、銀行ローンの手続きをしていただき、そして自分で設計事務所を探して工事業者を見つけていた。マイリノでは一つの窓口で全て物件探しから工事までお手伝いしています」
これまで不動産仲介の経験がなかった大阪ガスが物件紹介まで。ノウハウのある企業を買収して事業に参入するほど本腰を入れています。
大阪ガス リビング営業本部 高木良次さん:
「首都圏では6年前くらいから、マンションの販売戸数で新築を中古が上回っていますが、関西でも2020年から新築を中古物件が上回り、トレンドが変わってきています。関西におけるリノベーション市場はこれから盛んになっていくと思います」
このように最近、物件探しから施工までワンストップでサポートする企業が増えていて、住まい探しをする人がリノベを検討しやすくなっているのです。
■“働く女性目線”のリノベでニーズ取り込む
大企業もその成長に注目しているリノベ市場。そんな中、小規模ながらも売り上げを伸ばしている大阪・森ノ宮の建築事務所を訪れました。
事務所も築60年以上の物件をリノベして作ったそうで、一級建築士やデザイナーなどスタッフは全員女性。その名も『女子建築設計』です。
ハウスメーカーでおよそ20年働いていた代表の大津さんは、男性が多い建築業界で見落とされがちな「女性目線の家づくり」を打ち出し、3年前にこの会社を立ち上げました。スタッフの中には、子育てしながら働く人もいます。
働く女性が感じる「暮らしの不満」こそが、アイデアの原点。ランチタイムでの些細な会話がリノベのプランに生かされることもあるそうです。
働く女性目線のアイデアとはどんなものなのでしょうか。大阪・北区、築39年の中古マンションにあるショールームを訪れました。
「2人の子供がいる共働き家庭」が想定されていて、生活感が出てしまうような掃除用具などを収納できる納戸を設置。玄関近くの壁にはカバン専用の収納も…。
共働き家庭の増加や、リモートワークの定着を背景に、リビングを見渡せるミニ書斎や日用品をストックしておける収納が人気だそうです。活用できていなかった空間を見つけて収納スペースに変えることで収納面積も2.4倍に増加しました。
こちらのショールーム、リノベの総額はおよそ1700万円、物件と合わせるとおよそ3800万円ですが、すでに買い手が決まっているそうです。
働く女性目線のリノベは、住まいに「デザイン性」だけではなく、仕事や家事・育児がしやすい「機能性」を求める最近のニーズを取り込んでいます。
■顧客と「一緒に作り上げていく」リノベを
この日、建築事務所を訪れていたのは築40年の物件を購入したお客さん。マンションという限られたスペースをどう有効活用するのか。新しい住まいで想定されるあらゆる生活動線を考えて間取りに落とし込んでいくのが、女子建築設計の得意分野です。
打ち合わせを重ねて、お客さんも気づいていない「本当の理想」を引き出すことで、住んでから後悔しない家づくりができるのだそうです。
女子建築設計 設計デザイナー 田邊沙彩さん:
「『なぜそういうことをしたいのか』というところに戻って、心の奥底の本音の部分を毎回聞くようにしているので。その時の問題だけじゃなくて、住まい方や暮らしの未来の姿もちょっと想像しながら、一緒に作り上げていくお手伝いをさせてもらっています」
自分好みの空間をオトクに実現できる、中古マンションリノベ。「暮らし方」を重視した住まいづくりの人気と、それを叶えるプロの技で進化は続きそうです。
(関西テレビ10月25日放送『報道ランナー』内「ヒットにワケあり!オカネのヒミツ」より)