日本では年々亡くなる人が増えていて、厚生労働省の予測ではピークとなる2040年には50年前と比べてなんと2倍以上になるということです。
高齢化社会と、近づく多死社会。いま異業種も参入するなど『エンディングビジネス』の新たなサービスが次々登場しています。
■ガソリンスタンドやコンビニだった建物が“葬儀場”に
大阪・吹田市にある『吹公社 吹田斎場ホール』。家族葬向けですが、実はガソリンスタンドを再利用した小規模会館です。30人は参列できる式場があり、家族葬には十分な広さ。
また、回転寿司店だった建物を再利用した葬儀会館など、最近異業種の建物を“居抜き”で再利用する葬儀場が増えています。
吹公社 高畑雄史さん:
「小規模な家族葬で葬儀を行う方がすごく増えております。(吹田のホールは)元々ガソリンスタンドでしたので駐車場もそのまま使えますし、霊柩車も入れます。入口もフラットになっておりますけども、車椅子でご参列される方もいらっしゃいますので、葬儀会館としてはバリアフリーが必須になってきているかと思います」
1日1家族貸切で使える控室は、他の利用者と会う心配もありません。ガソリンスタンドやコンビニは建物の柱が少なくレイアウトがしやすいそうです。さらに…。
吹公社 高畑さん:
「一から建設するとなりますと約2億円かかると言われているところを、居抜きにすることによりまして約4分の1のコストで建設が可能になっております」
■“火葬待ち”の増加で新たなビジネス「ご安置ホテル」
葬儀の場所だけでなく、最近は火葬までに時間がかかる問題も。そこに目を付けた施設が大阪にありました。
大阪市・中津にある『リレーション』。ホテルを再利用した施設で、10年前に大阪初の“ご安置ホテル”としてオープンしました。ご安置ホテルとは、火葬までの間、遺体を安置する場所。でもそれがホテルというのはどういうことなのでしょうか。
リレーション 栗栖喜寛社長:
「こちらの方で葬儀を行っていただきまして、だいたい10名ほどですかね。前日にごゆっくりお過ごしいただけるようなお部屋もあります。24時間いつでもご遺体と対面できます」
故人と同じ空間で最後の時間をゆっくり…というのがご安置ホテル一番の特徴。葬儀込みで13万円からの料金設定で、メゾネットタイプの部屋もあり、広々とした洋間や浴槽付きのお風呂まで完備。口コミで利用者数が毎年増加し、稼働率は常に8割以上だそうです。
栗栖社長:
「お亡くなりになって火葬場に行かれるまでが関東では3日ないし5日。火葬場の過密状態があり、今後関西の方でもご安置をどうするのかと。死亡人口が増えていきますので、そういう課題を日本社会の中でも考えていかなければならない時期に来たのかなと思います」
“火葬待ち”の人が増えることで、ご安置ホテルが新しいビジネスモデルとして注目を浴びているのです。
リレーション 菅原理咲さん:
「こちらはアメニティセットと言いまして、お泊まりの時に必要な物が全て入っているものでございます。どうしてもここまで準備が回らないと思うんですね。故人様とごゆっくりお過ごしいただける、そういう風につながってくるのかなと思います」
清掃は畳を全てめくって掃除機をかけるなど、埃や髪の毛1本逃さない徹底ぶり。
リレーション 菅原さん:
「入って気持ちがいいお部屋、ホテルのようにと。お辞儀にしても前髪が垂れてしまっては見栄えも悪いですし、髪の毛が落ちる原因にもなりますので、必ず清掃時には結ぶなどの気配りもしています」
痒い所まで手が届くケアをすることで、利用者が気持ちよく過ごせると考えているのです。
リレーション 栗栖社長:
「お葬式の小規模化というものは進むとは思います。その上ではやはり既存の施設を利用した葬儀会館というものが、今後需要としては増えてくると思います」
■生前整理等…メルカリで年々増えるシニア利用者
葬儀の後、遺族を悩ませるのが「遺品の整理」。それを、前もって自分で進めておきたい人も増えているようで、大阪・中央区の『なんばマルイ』では…。
メルカリステーション 中山由紀子さん:
「こちらはメルカリの使い方を一から学べるメルカリステーションになっております。実はシニアの利用者が非常に多く、終活っていう所で家にある不要な物が誰か必要な方に届けばという思いでされる方が多くいらっしゃいます」
60代以上のメルカリ利用者数は年々増加し、去年は前年比で約1.4倍。1人当たりの平均年間出品数も、20代と比べ2倍近く出品しているというのです。
全国1200ヵ所で毎日開催しているメルカリ教室は、週末になると常に満席状態。出品の仕方から写真の上手な撮り方まで、細かく教えてくれます(なんばマルイでの開催は9月末で終了)。
メルカリステーション 中山さん:
「やはりご自身の生前整理という意味でメルカリを始める方が多くいらっしゃいます。例えば家に眠っている引き出物や、着られなくなったお洋服などをメインで出品されている方が多いです」
終活と言っても様々ですが、メルカリで生前整理をするのには、ある理由が…。
日本エンディングサポート協会 佐々木悦子さん:
「フリーマーケットを活用するといっても、エネルギーが非常にいると。お子さん・お孫さんに手伝ってもらって、売ったお金を『お小遣い』にされるなど、お互いにウィン=ウィンの関係というか、そういったことで利用される方も多いようです」
実際に、メルカリを利用しているシニアの方に聞くと…。
シニア客:
「終活に向かって。いらないでしょ、私が死んだとき残った人は邪魔になるでしょ」
別のシニア客:
「私の父や母が亡くなった時もすごくいっぱいあったので整理が大変だったから、それやったらもう今からね、ちょっとずつした方がいいのかなと思って」
また、生前整理だけでなく、意外な理由でメルカリを使っている人も…。
シニア客:
「ちゃんと返事で『ありがとうございました』とかね、なんか良い方やなとか思ってね、ちょっと交流みたいなのはありますね。ほのぼのとするものがありますよ」
メルカリステーション 中山さん:
「コミュニケーションの場所としても、楽しんで使ってらっしゃる方が多くいらっしゃいます」
本人も納得した最期を迎えたい。そして遺族も納得した見送り方をしたい…。その思いを尊重するようになったことが、エンディングビジネスに変化をもたらしています。
(関西テレビ10月4日放送『報道ランナー』内「ヒットにワケあり!オカネのヒミツ」より)