調査会社インテージが、去年からの販売額の伸び率を元にまとめた「2022年上半期 売れたものランキング」。
抗原検査キットを含む「検査薬」などを抑え、1位となったのが『オートミール』です。
売れ方がとにかくスゴく、売上は前年比で約2.5倍、コロナ前の2019年と比べると13.5倍と、とてつもなく急増しています。そのヒットの裏側を調べてみると、意外な「伸びしろ」も見えてきました。
■スーパーでも売上急増『オートミール』
オートミールとは、「オーツ麦」を脱穀して食べやすく加工したもの。食物繊維やたんぱく質がたっぷりで、さらに糖質も低いという栄養バランスに優れた食品です。
海外では、牛乳などで甘く煮込んでお粥のようにして食べるのが定番の朝食。日本では、2021年11月に「シリアル」の販売額を抜いたというデータ(出典:インテージ)もあるほど、最近人気を集めています。
買い物客:
「ハンバーグとかホットケーキに混ぜたりとか」
別の買い物客:
「アーモンドミルクを入れてバナナ入れて、甘くして食べるんですけど、同じように息子にもあげたりしてます」
取材した大阪府豊中市のスーパー『コープ こうべ蛍池店』でも売り上げが急増。
コープ こうべ蛍池店 郡山公一副店長:
「(コープこうべ全体で)2020年~2021年の売り上げが前年の約195%となっています」
これまで日本人にはあまり馴染みのなかったオートミール。なぜこんなにも急に人気が出たのでしょうか。
■手軽に“米化”できるのにヘルシー
向かったのは、オートミール人気の鍵を握る料理研究家「たっきーママ」こと奥田和美さんのご自宅。
薄田ジュリアキャスター:
「いつも家族で食べているというオートミール料理を作っていただけるということで、お願いします」
すると、奥田さんは耐熱容器に入ったオートミールに水を入れて、電子レンジで加熱。
奥田さん:
「ふやかして、いわゆる“米化”をします。まるでお米を食べているかのような食感になるようにしているところです」
さらに豚バラ肉やコーンなど残りの材料と調味料を加え、再度加熱すると…。
薄田キャスター:
「この料理は…香りからするとチャーハン?」
なんとオートミールがチャーハンに大変身しました。
薄田キャスター:
「(食べて…)オートミールって分かってるけど、これはご飯ですね。もっちりパラっとしてて。味付けもしっかりしみ込んでます」
ヘルシーなのにこってり味で息子さんにも大人気だそうで、ダイエット中の旦那さんのお弁当にもこっそり“米化オートミール”を入れたところ、すっかりお気に入りに。
奥田さん:
「(夫は)ご飯が大好きなので、我慢しなくていいのがうれしいっていう感じでしたね」
オートミールを食べ始めてから1カ月で5キロの減量に成功したとのこと。奥田さんにオートミールの人気の理由について聞いてみると…。
奥田さん:
「やっぱりお米の代わりになることですね。1食分の糖質とカロリーが抑えられる上に栄養価が非常に高いっていう安心感もあるのではないかと思います」
低カロリー・低糖質でお米風のものが食べられる「米化」。コロナ禍の中、健康意識の高まりも後押しし、注目を集めたようです。
さらに、オートミールは“ご飯”としての役割だけに留まりません。奥田さんがこれまでに考案したレシピは麻婆豆腐、ピザなどの総菜系から、おはぎやティラミスなどのスイーツ系まで200種類以上。
幅広く活用できるため、性別を問わず、飽きずに続けられるのも魅力だといいます。
インスタグラムにも多くの人が様々なレシピを投稿していて、その数およそ16万件。今も増え続けています。
■おいしさと手軽さ重視の新商品増加中
実際に、どれくらいの人が日常生活にオートミールを取り入れているのか…。街の人100人に聞いてみたところ、食べたことがあるのは35人という結果に。
人気が広がる一方、まだ手を出せていない人も多いようで、その理由として「オートミールの味や調理方法が分からない」といった声があがりました。
こうしたオートミール特有のハードルを解消するべく「簡単でおいしい」を打ち出した新商品を発売し、売れ行きを伸ばしている会社が大阪・淀川区にあります。高野豆腐でお馴染みの『旭松食品』です。
旭松食品 営業統括部 山口信典課長:
「こちらが、弊社が扱っているオートミールになります。全部で12種類です」
お湯を注いで1分待つだけで食べられるカップタイプのオートミールです。
山口課長:
「(オートミールの)食べ方が分からないとか、もっとおいしく食べたいみたいなお声もありましたので、よりおいしくより簡便に、話題のオートミールをもっと広く知っていただけるんじゃないかということで発売しました」
売れ行きは好調で、味のバリエーションを次々と増やしているそうです。
しかし、そもそもなぜ、高野豆腐など和の食材を扱っていた企業がオートミールに挑戦したのでしょうか。社長を直撃すると…。
旭松食品 木下博隆社長:
「コストコでオートミールを買ってきて、『これ作ってくれ』と(笑)。健康に一番いい成分、高野豆腐を作る過程で生まれる“レジスタントプロテイン”に似たような成分がオートミールにはあります。加工食品の包装の技術もありますし、調味料の調合技術も持っていますから、既存設備でオートミールの商品を作ることができます」
若い人を中心に人気の健康食品・オートミールは、既存のノウハウを最大限に生かしながら新たな層を取り込める、期待の食材だったのです。
今後は、新たな分野での展開を考えているそうで…。
木下社長:
「オートミールについては食物繊維も結構入っているので、『介護食』にも使えるかなと思って、今商品化を目指して研究しています」
固形物をやわらかく加工した介護食も扱っている旭松食品。高齢者向けのオートミール商品の発売も目指しているとのこと。
活用の幅が増えることで、まだまだ注目は続きそうです。
(関西テレビ9月13日放送『報道ランナー』内「ヒットにワケあり!オカネのヒミツ」より)